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ケラリーノ・サンドロヴィッチ「いわゆるエンタメとは異なる舞台を目指しました」 ケムリ研究室no.2『砂の女』上演中

ぴあ

ケムリ研究室 no.2『砂の女』より  撮影:引地信彦

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劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)と、女優・緒川たまきが結成した演劇ユニット「ケムリ研究室」の第二回公演となる『砂の女』が、8月22日に開幕、9月5日まで東京・三軒茶屋のシアタートラムにて上演中だ。

1962年安部公房により書き下ろされた傑作小説を原作とし、KERAが上演台本と演出を担当、キャストは緒川たまき、仲村トオル、オクイシュージ、武谷公雄、吉増裕士、廣川三憲。
『砂の女』は、「ケムリ研究室」主宰のKERAと緒川たまきが、長年、舞台化を模索してきた作品で、満を持してようやく実現した。

昆虫採集に来た男が、たどり着いた砂丘の果ての村。男が宿を借りた砂丘の底の家には、女が一人住んでいた。外界との唯一の往来手段であった縄ばしごを外され、今にも砂に埋もれそうな家に女と二人、男は閉じ込められる。

緒川たまきと仲村トオルの、刻一刻と変わってゆく、ヒリヒリするような関係性。廣川三憲、オクイシュージ、武谷公雄、吉増裕士が、村人や、砂の象徴“砂子”など様々な役を演じ、作品世界を豊かに広げる。上野洋子のインプロビゼーションの演奏が、砂の流動性と、女と男の心の揺れを体感させる。

不条理な閉塞状況の中で、スリリングで焦燥感に溢れた、そしてエロティックな男女の関係。
それを覗き見しているような濃密な世界観が広がる。

芝居、ステージング、音楽、映像、照明、全てが綿密に編み上げられた劇空間が、目の前に力強く立ち上がった。

開幕に際し「ケムリ研究室」主宰のケラリーノ・サンドロヴィッチと緒川たまきがコメントを寄せた。

【ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメント】
初日が開けてとりあえずホッとしてます。開幕できるか、稽古中はずっと不安でした。

観客がいる劇場の有り難さ。ご覧になったお客様がどんな風に感じたか知りたいですね。

同じコロナ禍での上演でも、昨年の『ベイジルタウンの女神』は多幸感溢れるエンタメ作品でしたけれども、今年は安部公房ですからね。180度違う。今回は辛辣な芝居です。照明もずっと暗めだし、明るいことはあまり起こらない。娯楽要素はありつつも、いわゆるエンタメとは異なる舞台を目指しました。けれども、砂の谷底の小屋で繰り広げられる男女のドラマは、きっと様々なことを感じさせてくれるでしょう。

安部公房は明らかに理数系の作家ですが、今回僕は、それを無理矢理文系の作品にねじ曲げたのかもしれません。自分のモードでやるしかないし。

岸田國士さんの時は一作やって大ファンになったけれど、安部公房さんはまだまだ近づくには怖い所がある。やっぱり理数系だからかな。これから時間をかけて徐々に仲良くなれるといいなと思っています。

劇場入りしてからはバタバタで、ともかく幕を開けることで精一杯でした。明日からは少し客観的になれるのではないかと。スタッフ、キャストが皆同じ方向を向いている素晴らしい座組なので、なんとかこのまま完走できるよう、祈るばかりであります。

【緒川たまき コメント】
このようなご時世ですから、本当に幕を開けることが叶うのかどうか、カンパニー全体、かなりドキドキしながら、覚悟をして稽古をしておりましたが、おかげさまで無事初日を開けることが出来ました。

カーテンコールでお客様の姿が照らされたとき、これはつい数時間前まで行っていた舞台稽古の続きではなく、お客様に見て頂けたのだと改めて信じられないような思いでした。

同時に、何か重い責任を負っているような気持ちで、その場に立っていました。

このような状況の中、演劇を、ケムリ研究室の『砂の女』を、観ようと思って下さり、実際に劇場に足を運んで下さった事に、まずは深い感謝を申し上げると共に、ご期待に添えたかどうかは分かりませんが、皆様の思いを無駄にしないよう、明日以降もブラッシュアップして、少しでも良いものをお届けしたいと、祈るような誓うような気持ちでおります。

公演は9月5日までシアタートラムにて上演。その後9月9日から兵庫公演を予定している。

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