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ELISAが語る、これまでの道のりと新たな野望「私の10年はどこを振り返っても輝いていたと思う」

リアルサウンド

18/8/30(木) 18:00

 デビュー10周年を迎えたELISAが『10th Anniversary Best Album「DIAMOND MEMORIES ~All Time Best of ELISA~」』を8月29日にリリース。今回のインタビューでは、デビューから今に至るまでの道のりを、その時その時の自分にとってきっかけとなった楽曲を織り交ぜて振り返ってもらい、さらに11年目を迎えた次なるELISAの野望についても語ってもらった。(編集部)

「あっ、モデルにはなりたくないです!」から始まる10年間

ーーデビュー10周年おめでとうございます!

ELISA:ありがとうございます! ただ端的に言って長い10年でしたね(笑)。2011年に一度体調不良でお休みをいただいたり、2014〜15年あたりから海外に行かせていただくことも多くなったり、それからいろいろなアニメやゲームの作品とその楽曲に出合ったりしていますから。最初「euphoric field」という英語詞の曲でデビューして、その後9分ある「God only knows」を歌って、ここ数年は「ex:tella」のようなプログレッシブな展開のある楽曲をいただいていて。「アニメソングにはジャンルってないんだな」っていうことに気付けて、そのいろいろなジャンルを歌わせてもらうことでいろいろなことを学び続けてきた10年だったなあ、と思っています。

ーー「アニメソングにはジャンルがないという気付きがあった」ということは、もともとアニメソングを歌いたいからボーカリストになったわけではなかった?

ELISA:ないですね。父親がアマチュアでチェロを弾いていたこともあって、その伴奏をするために小さい頃からピアノを習っていたのと同時に、絶対音感トレーニングのスクールや声楽の学校に通わされていて。で、中学生のときに合唱音楽コンクールの全国大会で銅賞を獲った頃から「ソプラノでのボーカル経験やオペラの経験もあるんだし、ずっと歌い続けたいな」っていう気持ちが芽生えたんです。

ーーただ、過去のインタビューや資料を拝見すると、高校時代、ナオミ・キャンベルなんかも所属していたエリート・モデル・マネジメントのオーディション「エリート・モデル・ルック」を受けていますよね。

ELISA:神奈川にあった公立学校の出身なんですけど、田舎なんですね。だから歌手になるための方法がわからなくて(笑)。音楽大学っていう選択肢もあるにはあったんですけど、受験するにはすごく勉強が必要じゃないですか。もしその勉強をした上で落ちたらなあっていう気持ちもあって、ポップス系のオーディションならその場で歌って「はい、受かりました、落ちました」って結果が出るからいいか、と思っていたんですけど、どこでオーディションが開かれているのか、まったく情報が入ってこなかったんです。

ーーでは「エリート・モデル・ルック」の情報はどこから?

ELISA:近所のTSUTAYAに行ったらポスターが貼ってありました(笑)。しかもケータイで簡単にエントリーできたので「モデルの世界も女優の世界も歌手の世界も同じ芸能界なんだからどこかで繋がっているはず」と思って応募してたら、次の審査、次の審査と進んでいくうちにファイナリスト……3000人の中の10人に選んでいただいて、その最終審査会場で「いつからモデルになろうと思ったの?」って聞かれたので「あっ、なりたくないです!」って答えたんです。

ーーあはははは(笑)。

ELISA:審査員の方も意表を突かれたみたいで、前のめりになって「じゃあなんでこのオーディションに来たの?」って私の話を聞いてくれて。そこで声楽を習っていることや、これまでにも小さな映画ではあるんですけど「主題歌を歌いませんか?」みたいなオーディションを受けてきていたことをお話させていただいたら、「デモテープ送ってよ」とも言われたんですけど、「今ここで歌っていいですか?」って、当時オーディションでウケのよかったポップス系の曲とオペラっぽい曲を歌ったら、3カ月後にはメジャーデビューしてました(笑)。

ーーその経歴だけでも十分驚きなんですけど、デビュー当時の所属レーベルはジェネオンエンタテインメント(現:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)。アニメソングに強いレーベルでしたよね。

ELISA:だから「なんで私なんだろう?」って思ってましたし、実際に当時の担当の方にも聞いてみたら「唯一無二の声だと思った」って言ってくださったのと同時に、「インパクトが強すぎて面白かった」と(笑)。

ーーモデルオーディションで「歌手志望です」って言い出したから(笑)。

ElISA:しかも所属契約をしたのはジェネオンさんよりエリートさんのほうが先で。そのときに全身とバストアップの水着写真が必要だったんですけど、スタジオで撮ってもらうお金もなかったから、当時の親友に「水着着るから写真撮って」って、学校のトイレで水着に上履き姿の写真を撮ってもらっていて、ジェネオンの担当の方もそれを見たらしいんです。

「一度夢を掴んだのに、このあとどうすればいいんだろう?」

ーーそして“上履き水着写真”も功を奏して(笑)、めでたく歌手デビューと相成ったわけですけど、アニメソングに明るくなかったELISAさんにとって、毎週テレビから自分の声が流れて、CDショップやアニメショップに自分のCDが並んでいる状況っていかがでした?

ELISA:まったく実感が湧かなかったですね。おかげさまで『euphoric field』って初動で3万枚くらい売れたらしいんですけど、アニメイトさんに行って私のCDを見ても、これホントのことかな? っていう感覚がずっとありました。最初に「あっ、歌手になったんだ」って思えたのは、当時全然しゃべったことのない同じクラスだった男の子がCDを持ってきて「サインください」って言ってきたときでした。

ーーところが今回のベスト盤に収録されている曲のほとんどがアニメやゲームのタイアップ曲になっている。つまり、その後きちんとアニソンアーティストとしての個を確立なさっている。いつ頃、ご自身の実感と周囲の状況に折り合いを付けられるように?

ELISA:徐々にって感じです。イベントに呼ばれるとそこには大先輩がたくさんいらっしゃるじゃないですか。皆さんのステージを観ていたら「ここで止まってちゃダメだ」って思えるようになったし、とはいえ2ndシングルの『HIKARI』をリリースした頃は、曲の途中でスッと手を前に伸ばそうって決めてたのに、いざ本番になったら恥ずかしくて中途半端にしか伸ばせなかったなんてこともあって。それもまた「いつまでも駆け出し気分じゃダメだ」って感じさせてくれたし、あとファンの皆さんの「ELISAには活動を続けてほしい」っていう思いをひしひしと感じることもあって、それに背中を押されたこともありますし。ライブを通じていろんなことを肌で感じるということを積み重ねてきた結果、今のELISAになれたのかな、って思ってます。

ーーご自身にとってエポックメイキングだった楽曲があったりはしない?

ELISA:「God only knows」は事件でした。

ーー先ほどおっしゃっていたとおり9分超え、しかも5幕構成の楽曲ですもんね。

ELISA:しかもこの曲ってベスト盤だと次に収録されている「集積回路の夢旅人」との連作だから実際はさらに長いんですよ(笑)。「クラシックの経験もあるし、歌えるだろう」っていう自信はどこかにあったんですけど、それでも大変でした。15時間くらいかけて、意識もうろうとなりながら30トラックぶんの声を重ねてました。あと、このベスト盤ってディスク1がジェネオン時代にリリースした曲で、ディスク2が今所属しているソニーでリリースした曲っていう構成になってるんですけど、ディスク1で言うなら「Wonder Wind」も印象に残ってます。

ーーアニメ『ハヤテのごとく!!』のオープニングテーマで、初期のヒット曲です。

ELISA:この曲が『ハヤテのごとく!!』のオープニングに決まったって連絡が来たとき、ちょうど学校で居残り勉強をさせられてたんです。だからその連絡には「あっ、そうですか。おつかれさまです」くらいの簡単な返事をしていたんですけど、あとから事の重大さに気付くという。「えっ、さっき言ってた『ハヤテのごとく!!』ってこのあいだまでKOTOKOさんがオープニングを歌ってたアニメじゃん!」って(笑)。でもさっきもお話ししたことなんですけど「HIKARI」みたいなバラードから、爽やかな「Wonder Wind」や9分超えの「God only knows」まで、当時からいろんな曲を歌わせてもらえたのは本当に私の財産になってますね。

ーー「SCARLET WINGS」みたいな高速ロックチューンもあるし。

ELISA:BPM200ですからね。この曲をリリースした直後に、デビュー当時からお世話になっているディレクターさんが私の当時の様子を見て「ELISA、もう限界でしょ? 1回休もう」って言ってくださったのをきっかけに活動を休止するんですけど、たぶんファンの皆さんはビックリしたと思いますよ。活動休止前の最後の曲がBPM200だから「いや、さっきまで元気に歌ってたじゃん」って(笑)。

ーー今でこそそうやって笑い話にできているけど、当時は周囲の人が見てわかるくらい心身ともに疲れていたわけですよね。

ELISA:そうですね。だから「休もう」って言われたときは「休んでいいんだ!」って思ったんですけど、いざ休んでみたら、今度はまあ罪悪感と後悔が襲ってきて。「みんなが背中を押してくれたからステージに立てていたのに、なにも自分の口から発表することなく歌うことを終えちゃっていんだろうか?」とか「一度夢を掴んだのに、このあとどうすればいいんだろう?」とか「生きる意味なんかないんじゃないか?」って考えながら1日中空ばっかり見てました。

ーー歌いたいという気持ちが戻ってくるまでにも時間がかかった?

ELISA:いや、歌いたい気持ちはあるんだけど、身体がついてこない感じでした。だからお休みしていた頃は「このまま、ここに住みたい!」っていうくらいカラオケに通ってましたし(笑)。

ーー具体的に気持ちと身体のバランスがとれるきっかけになった出来事ってありました?

ELISA:「もう1回歌いたい」「今度はこういう曲を皆さんの前で歌ってみたい」って思えるきっかけになったのは、映画の『フィフス・エレメント』ですね。あの映画の中に青い宇宙人が出てくるじゃないですか。

ーー「ディーバ」でしたっけ? オペラ風の曲を歌う宇宙人。

ELISA:あの歌を聴いて、そういう曲にチャレンジしてみたいっていう気持ちが湧いてきた面はありますね。それでソニーさんに移ることが本決まりになったときに「今、私はこういう曲を歌いたいんです」っていうお話をさせていただいて、とにかく高音を活かした「Shout my heart」を復帰作としてレコーディングしたんです。

11年目のELISA、その新たなる野望とは?

ーー今お話になっていたとおり「ソニー盤」とも呼ぶべきディスク2は、「ジェネオン盤」であるディスク1とは明らかにELISAさんのボーカルスタイルも楽曲のテイストも違いますもんね。

ELISA:『フィフス・エレメント』がきっかけになったこともあって壮大でプログレッシブな楽曲をやりたいっていうお話はさせていただきました。「REALISM」も「Shout my heart」と同じく高音のボーカルにチャレンジした曲ですし、「ex:tella」もクラシックの経験がないとなかなか歌えない曲だと思いますし。

ーーちなみに今回のトラックリストってどなたが決めたんですか?

ELISA:デビュー当時からお世話になっているディレクターさんです。

ーーであれば、ちょっと面白いな、と思ったのが「コントレイル」が収録されていることなんですけど……。

ELISA:そうですか?

ーー基本的にシングル曲やタイアップ曲が総花的に入っているアルバムなんだけど、この曲だけアルバム収録曲でタイアップも付いてないですよね?

ELISA:あっ、この曲は声優の緒方恵美さんが作詞してくださってるんです。そういう意味でも思い出深い曲ですし、自分への応援歌だとも思っているというか。緒方さんから詞をいただくときに「この曲でELISAちゃんの殻をさらに破ってほしい」って言われて、それにもすごく励まされましたし、歌詞自体、緒方さんが演じられた『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジ的というか、自分自身の内面に問いかけるような内容なので、歌っているとすごく励まされるから、アルバムに入れておいてくれてよかったですね。

ーー長年ELISAさんを見てきた方だからこそセレクトできた1曲でもある、と。

ELISA:そうですね。「DIAMOND MEMORIES」っていうタイトルどおりというか、ダイヤモンドって大きさが一緒でもカットのしかたによって全然輝き方が違うじゃないですか。まさに私の10年はどこを振り返っても輝いていたと思うし、でもそれぞれ曲によって別の輝き方をしているし、この曲たちに後押しされてより輝ける11年目を迎えなきゃいけないし。そういう思いの込められた、すごくいいタイトルだなと思ってます。

ーー歩みを止めなきゃいけない瞬間もあったけど、この10年は輝いていたし、楽しかった?

ELISA:最っ高ですね! ベスト盤を聴いていてもいろんな思い出が蘇ってきますから。ディスク1の「Real Force」であればファンと私が掛け合いをして一体感を出したいっていうオーダーを作曲家の菊田大介さんに出して、実際ライブで一番盛り上がる曲に成長してくれたことが思い出せますし、ディスク2の「EONIAN -イオニアン-」は『楽園追放 -Expelled from Paradise-』っていうアニメ映画の主題歌だったんですけど、監督の水島精二さんが映画の中にALISEっていう、名前がELISAのアナグラムになっているバンドを登場させて、この曲を歌っているという設定を作ってくれる、みたいな仕掛けを用意してくれていたりしましたし。なんかそういうダイヤモンドみたいにキラキラ輝いている過去を鮮明に映しだしてくれるアルバムになっている気がしています。

ーーまさに「DIAMOND MEMORIES」だ、と。そしてこのアルバムのラストトラックは新録曲にして、香港の歌手、フェイ・ウォンさんの楽曲の中国語カバー「紅豆 -アカシアの実-」が収録されています。これもこれで面白いセレクトですよね。

ELISA:ビリビリ動画っていう中国のサイトの生配信番組に出させていただいて、その後上海でのイベントにも出させていただいた時に、この曲のサビだけアカペラで歌わせていただいたんですけど、そのとき現地の方の反応がすごくよかったんです。それ以前から海外でライブをやることが増えていて、そのとき現地のファンの方がちゃんと日本語を理解してくださっているのを見て「音楽は共有できてこそ楽しいんじゃないか?」「逆に私が現地の言葉でコミュニケーションできなくてどうするんだ?」って思っていたので「紅豆」を歌わせてただいたら、会場は盛り上がったし、100万人くらいの方がサイトで視聴してくださったらしくて。

ーーということは、これは11年目以降のELISAさんの未来予想図と捉えてもいい? 今後は海外を視野に入れていく、と。

ELISA:はい!

ーーただ、なぜ中国なんですか? アニメソングって欧米でも広く受け入れられてますよね?

ELISA:中国のヒットチャートベスト10のほとんどがバラードなんですよ。それで「ミレナリオ」とか、最新シングル曲の「WISH」みたいな曲がすごくハマるみたいで。実際、私の曲の中で向こうで一番知られているのがその「ミレナリオ」と「ebullient future」と「Dear My Friend -まだ見ぬ未来へ-」だったりしますし。だから以前はスタッフの方に「ELISA、中国語覚えたほうがいいよ」とは言われても「イヤだよー、難しそうだし」って答えていたんですけど(笑)、去年10年目という転機を迎えたあたりから、ちょっと真剣に取り組んでみようかな、というモードになっている感じですね。

ーー実際、直近で中国圏での活動の予定ってあるんですか?

ELISA:10月20日に活動10周年記念で初台湾ライブをします。

ーーおーっ! 2カ月後にはまさに新たなる第一歩を踏み出す、と。

ELISA:まあそのおかげで、今、中国語のMCを覚えるのに死にそうになってるんですけどね(笑)。

(取材・文=成松哲)

■商品情報
ELISA
10th Anniversary Best Album
『DIAMOND MEMORIES 〜All Time Best of ELISA〜』
¥3,900(税込)

・Disc-1
1.euphoric field (English)
テレビアニメ『ef – a tale of memories.』オープニングテーマ
2.HIKARI
テレビアニメ『隠の王』エンディングテーマ
3.ebullient future (English)
テレビアニメ『ef – a tale of melodies.』オープニングテーマ
4.Wonder Wind
テレビアニメ『ハヤテのごとく!!』オープニングテーマ
5.Dear My Friend -まだ見ぬ未来へ-
テレビアニメ『とある科学の超電磁砲』エンディングテーマ
6.Real Force
テレビアニメ『とある科学の超電磁砲』エンディングテーマ
7.God only knows
テレビアニメ『神のみぞ知るセカイ』オープニングテーマ
8.集積回路の夢旅人
9.Invisible Message
アニメ映画『劇場版 ハヤテのごとく! HEAVEN IS A PLACE ON EARTH』挿入歌
10.SCARLET WINGS
Xbox360用ソフト『迷宮クロスブラッド リローデッド』オープニングテーマ
11.真実の証
12.光の雨

・Disc-2
1.そばにいるよ
テレビアニメ『革命機ヴァルヴレイヴ』2ndエンディングテーマ
2.REALISM
テレビアニメ『革命機ヴァルヴレイヴ』3rdエンディングテーマ
3.ミレナリオ
テレビアニメ『魔法科高校の劣等生』エンディングテーマ
4.Shout my heart
アニメ音楽誌「リスアニ!」添付楽曲
5.LIFE
テレビ東京『アニメマシテ』6月度エンディングテーマ
6.EONIAN -イオニアン-
アニメ映画『楽園追放 -Expelled from Paradise-』主題歌
7.君をのせて
井上あずみカバー曲
8.Rain or Shine
テレビアニメ『91Days』エンディングテーマ
9.ex:tella
PlayStation(C)/PlayStation Vita用ソフト『Fate/EXTELLA』主題歌
10.コントレイル
11.WISH
テレビアニメ『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』エンディングテーマ
12.紅豆 -アカシアの実-
王菲(Faye Wong)カバー曲

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