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大泉洋、冴えないダメ男なのになぜモテる? 『恋雨』『焼肉ドラゴン』で見せた“愛され力”

リアルサウンド

18/7/3(火) 6:00

 大泉洋が、現在公開中の『恋は雨上がりのように』『焼肉ドラゴン』ほか、ドラマ、映画と立て続けに話題作に出演している。俳優・大泉洋が今、こんなにも引っ張りだこで、老若男女みんなに愛されるのはなぜか。冴えないダメ男なのになぜかモテる役柄で心をつかむ不思議な大泉洋の魅力に迫りたい。

参考:映画『恋は雨上がりのように』のトーンを決定づけた、大泉洋の絶妙なバランス

 映画『恋は雨上がりのように』で大泉洋が演じるファミレスの店長は、バツイチで冴えない45歳。陸上部のエースだったが、アキレス腱のケガによって夢を絶たれた17歳の女子高生・橘あきら(小松菜奈)が雨宿りで立ち寄り放心しているところに優しく声をかけたのが店長だった。雨の日のその出来事をきっかけに、あきらはファミレスでバイトを始める。

 自他ともに認めるパッとしない普通のおじさんである店長に、密かに強い恋心を抱くあきら。眩しいくらい真っ直ぐな17歳の女の子にデートに誘われるわ、告白されるわで戸惑う店長のリアクションがいちいち心をくすぐる。

 「俺なんかとデートでもしてごらんよ」と店長が逃げ腰になっているのに、「デートしてくれるんですか!?」とあきらが迫り、いざデートとなると周囲の目ばかり気にしてしまう店長。しかし、困惑しつつも、つねに誰に対しても相手を尊重する姿勢を貫く店長だからこそ、あきらは彼に惹かれたのだ。

 ただ優しいだけの大人はそのへんにいるが、相手を不快にさせることなく、相手に居心地のいい空間を用意してくれる大人は希有な存在だ。普通のおじさんだけど、キラリとした素敵な魅力を持っている。そんなあきらに真っ直ぐに惚れられる素敵な店長を嫌味なく演じられるのが大泉洋の真骨頂。

 小説家を目指していた彼は、自分が休日に過ごすお気に入りの場所、図書館に彼女を連れて行ったときに普段本をあまり読まないというあきらに対して自分の趣味の本を押し付けるようなことはしなかった。もちろん、うんちくを傾けることもせず、彼女と本との出会いの場を静かに見守っているだけ。17歳と45歳の2人が並んで嫌らしい感じが出るどころか、清々しくさえある。

 そして、ケガをしたあきらを病院に連れて行くために乗せた店長の車の後部座席には息子のためのオモチャのスペースがあり、あきらに一緒に夏祭りに行きたいと誘われても、息子と約束していると断る父性の見せ方も絶妙なのだ。実際、バラエティ番組で愛娘とのエピソードを披露することもあるが、この父性の見せ方も嫌味なくて素敵なのだ。

 おじさんと女子高生のラブストーリーだと勘違いされやすいテーマではあるが、人生の雨宿り中に出会った2人が再スタートを切る青春物語。幅広い年代から支持される大泉洋だからこそ演じられる“普通の男”の切なさが心を揺さぶる。

 一方、現在公開中の『焼肉ドラゴン』は数々の演劇賞を受賞した同名舞台の映画化。原作・戯曲・演出の鄭義信がメガホンを取り、三姉妹を真木ようこ、井上真央、桜庭ななみが演じる。大泉洋演じる哲男は、幼なじみの静花(真木ようこ)への想いを秘めたまま、梨花(井上真央)と結婚する。大学卒業の肩書きがあるのに、いや高学歴の肩書きがあるゆえに満足のいく仕事に就けず、憂さ晴らしで仲間と飲んでは騒ぎ、梨花と喧嘩する。短気でプライドの高いダメ男だ。

 タイトルの『焼肉ドラゴン』は、キム・サンホ演じる三姉妹のアボジ(父)の名前である龍吉に由来する。小さな焼肉店を営む龍吉には、先妻との間に2人の娘、後妻の連れ子の娘、そして夫婦の間に一人息子がいるのだが、子供たち4人はそれぞれに問題を抱えている。その問題の一つ、喧嘩の火種となるのが哲男の存在である。そして、哲男もまた差別を受け、ままならない人生にどうしようもない憤りを感じ、静花への想いだけを自分の救いとしていた。

 ハン・ドンギュ演じる尹大樹が静花に熱烈アプローチを仕掛けるようになると、哲男は猛烈に対抗心を燃やすようになるのだが、そのせいで焼肉ドラゴンはいつも大騒ぎになる。すぐに感情を爆発させて喧嘩する哲男と梨花は似た者夫婦なのかもしれない。だが、互いに深く傷つけ合い、救いをほかの誰かに求めている時点で夫婦は破綻している。過酷な環境の中、過去の悲しい出来事に縛られていたとしても、哲男は完全なるダメ男である。

 空しい想いを抱え、仲間といつも大酒飲んで騒ぐダメ男ではあるのだが、静花と梨花それぞれに愛されるダメ男であるための魅力もきちんと表現しなければならない役柄だ。

 このダメ男なのに愛されるという役柄を演じることができるのが大泉洋の凄いところではないだろうか。イケメンと呼ばれる俳優はあまたいるが、笑わせて泣かせてダメ男だと思わせておいて、愛される存在というのは大泉洋を置いて誰がいるだろう。

 室生犀星の小説が原作のスペシャルドラマ『あにいもうと』(TBS系)では宮崎あおいと共演。妹のもんちこと桃子(宮崎あおい)を溺愛するあまり大喧嘩してしまう不器用でちょっと迷惑な兄・大工の伊之助を演じた。いかにも昭和的な作品で『男はつらいよ』の原型とも言われるが、人情に厚く妹への過剰な愛情あふれる兄を熱演。笑わせたかと思うと泣かせ、演技の振り幅の広さ、引き出しの多さを見せつけた。

 映画の出演作は『パパはわるものチャンピオン』(9月21日公開)、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(冬公開)、『そらのレストラン』(2019年初春公開)と続き、主人公に大泉洋を当て書きして執筆された小説『騙し絵の牙』(塩田武士著)の映画化も決定している。また新たな一面が垣間見えそうだ。(池沢奈々見)

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