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【ネタバレあり】古沢良太が語る『コンフィデンスマンJP』の裏側 「都合の良い嘘の方を人は信じる」

リアルサウンド

19/6/12(水) 8:00

 『コンフィデンスマンJP』の勢いが止まらない! 2018年にフジテレビ系でテレビドラマ化された本作は、「ロマンス編」と銘打たれた劇場版が5月17日から公開され、現在大ヒット中。6月6日におこなわれた大ヒット御礼舞台挨拶では映画第二弾が制作されることも発表された。

 本作はダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)たちコンフィデンスマン(信用詐欺師)が毎回、各界の権力者を騙して大金を奪い取る姿を描いた物語。今回の「ロマンス編」では、香港を舞台に“氷姫”と呼ばれる香港マフィアの女帝・ラン・リウ(竹内結子)を罠にハメる。そこに、かつてダー子と恋仲だった天才詐欺師のジェシー(三浦春馬)と、ダー子に騙された日本のゴッドファーザー・赤星栄介(江口洋介)が参戦。騙し騙されのコンゲームが展開される。

【写真】『コンフィデンスマンJP』メイキング写真

 今回、リアルサウンドでは『コンフィデンスマンJP』シリーズの脚本を担当した古沢良太に話を伺った。インタビューは映画の内容を踏まえたネタバレありのものとなっている。虚実入り乱れた詐欺師たちの世界に何故、我々は惹かれるのだろうか?

■「騙す演技としてではなくて本気の演技」

ーー『コンフィデンスマンJP』は毎回、脚本が多層的で複雑ですが、今回の「ロマンス編」は、どういう順番で話を組み立てたのでしょうか?

古沢良太(以下、古沢):韓国で起きた水かけ姫やナッツ姫のニュースを見て、こういう女帝を出したいなぁと思って最初にラン・リウを設定しました。次にテレビシリーズで恋愛詐欺を描いてなかったので、今回はやろうと思って。ラン・リウを騙す話から着想し、だとしたら恋愛詐欺のプロフェッショナルを絡めようということでジェシーが生まれました。後は赤星さんが何かしら出て来るだろうと思って。そういう順番で話を組み立てました。

ーー赤星との対決になるということは事前の情報で知っていたのですが、ラン・リウのドラマがあまりにも面白くて、途中で彼の存在を忘れていました(笑)

古沢:忘れますよね(笑)。

ーー冒頭に登場して、終盤まで出てこないです。

古沢:あんまり出てこないので、どうなのかとは思ったのですが、大丈夫でしたね(笑)。

ーーそれだけ物語の力が強かったんだと思いました。書いている立場としては不安でしたか?

古沢:あまり美しくはないですよねぇ。本当は中盤くらいにもう一度出てきた方がよかったのかもしれないですけど。

ーー騙しているパートの演技と本当のシーンの演技の濃さが変わらないので、騙していることを忘れてしまうんですよね。

古沢:むしろ騙してるパートがメインだと思ってもらえるようにがんばって書いてますね。俳優さんたちも騙す演技としてではなくて本気の演技をしてますので、そのおかげということもありますけど。

ーー詐欺であることを忘れて見入ってしまうんですよね。でも途中で崩されるので、複雑な気持ちになるのですが……。

古沢:わかります(笑)。

ーー書いている側が、どういう気持ちなのかとても気になります。本人も入り込んで感動しながら書いているのか、嘘のシーンだからと冷めているのか。 

古沢:入り込んでいるかと言えば、入り込んで書いてますね。まぁ、「感動を返せ」とはよく言われましたけど。

■「ボクちゃんは一般人の代弁者」

ーー2012年の『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)以降に書かれたオリジナル作品は、コメディテイストのものが中心ですが、元々、コメディを書きたかったのですか? 

古沢:そうですね。でも、『相棒』(テレビ朝日系)の時から、僕だけコメディテイストの話を書いてましたね。『相棒』は「コメディです」という演出をしないので、あまりそう思われてないですけど……。

ーー個人的に古沢さんが書かれた「聖戦」(「Season9」第10話、元旦スペシャル)が大好きで『相棒』の最高傑作だと思っています。あの話も、南果歩さんが演じる息子を殺された母親が爆弾を作って犯人に復讐するというすごく哀しい話ですが、爆弾を作っているうちにだんだん楽しくなっていく姿も同時に描かれていて、気まずい笑いがありました。

古沢:あれは殺人をしようと決めたことで彼女がどんどん輝いていくという話なので(笑)。南果歩さんも、すごく楽しんで演じてくれて、書いていて楽しかったですね。

ーー「聖戦」もそうでしたが、何かに没頭しているうちに本人が楽しくなっていくという姿が、古沢さんの作品ではよく描かれますね。『コンフィデンスマンJP』も、騙しているうちに本気になっていくことが何度もあって。特に「スポーツ編」がその筆頭でしたけど。

古沢:毎回毎回、その回のテーマを掘り下げる形で書いたのですが、スポーツは掘り下げていけばいくほど、嘘のつけないものだという気がしました。打ち込んでるうちに本気で熱くなってしまう気持ちには嘘がないから、それで行くしかないと思って書きました。

ーー最終的に「自分の信じたい物語」にみんなが飲み込まれていく話なのかなぁと思いました。

古沢:騙される側の人間を描く時は、その人が何を求めているのか? 何を欲しがっているのか? 何を与えると食いつくのか? それがテーマでした。世の中、いろんな意見の人がいますけど、やっぱりみんな、自分の都合のいい情報を信じるじゃないですか。

ーーむしろ、騙されたがっているのかもしれないですよね。

古沢:自分に都合の悪い本当のことよりも、都合の良い嘘の方を人は信じるんですよね。世の中はそういうふうに成り立っているので、そういうものをダー子が壊してくれたら痛快かなぁと思って書きました。

ーー今、振り返ると『リーガルハイ』シリーズは、すごく先駆的な作品で、フェイクニュースやポストトゥルースと言った言葉が普及する以前に、みんなが見たい物語を求める状況を描いていたと思います。逆に『コンフィデンスマンJP』はまさに現在の話で、毎回「コンフィデンスマンJPの世界にようこそ」と言いますけど、実は僕たちはすでにあの世界にいるのではないかと思いました。

古沢:そうなんですよね。それが表現できていればいいんですけど。

ーー古沢さんのドラマはエンドロールで物語を引っくり返すことが多いですよね。特に『コンフィデンスマンJP』は、ボクちゃんが守ろうとしていた被害者が実は思っていたような人たちじゃなかったという話が何度かあったのがショックで。ボクちゃんもまた、守るべき弱者、純粋な被害者に対して都合のいい幻想を見ていたということなんでしょうか?

古沢:それは一般の人がそうだからなんじゃないですかね。ボクちゃんは一般人の代弁者でしたので。

ーーただ、嫌な気持ちにはならないんですよね。『リーガルハイ』もそうでしたけど、視聴者が信じていた美しい物語がコテンパンに破壊されるんですけど、破壊された後に何か残る感じがします。

古沢:例えば「家族編」は、家族ってこういうものだというイメージを「打ち砕く」というよりは「解放する」というイメージで書きました。幸せって世の中が勝手に決めている価値観で、当てはまっていると幸福で外れていると不幸だって勝手に決めているけど、大きなお世話で。自分たちで勝手に決めてがんじがらめになっている価値観から解放された方が、人は自由だし、幸せなんじゃないか、という気持ちが多分あって。『コンフィデンスマンJP』では、それを意図的に書いています。

ーーセラピーみたいな話ですよね。

古沢:恋愛も幻想みたいなものですし、自由じゃないですか。どういう気持ちでどういう関係性でいようと。愛し合っているならいっしょにいなければいけない、裏切られたらかわいそうだ、みたいなものも全部取っ払った清々しさと解放感が残ればと思っていました。

■「ダー子は何者にもとらわれてない人」

ーー実は『ロマンス編』を見て一番感動したのが、裏切っていたモナコ(織田梨沙)をダー子があっさり許して仲間に入れちゃうところなんですよ。テレビシリーズでも、逃げ遅れた敵の一人を仲間に引き込んでいましたが、裏切った人間を許容しちゃうところが凄いですね。

古沢:ダー子は何者にもとらわれてない人にしたかったんです。ターゲットの赤星さんたちのこともダー子は大好きですからね。恨みとか憎しみよりも、好きだからいっしょに楽しみたくて騙しているところがありますから。

ーー映画の最後に、本物の氷姫が出てきますね。

古沢:氷姫という存在まで嘘だと思われるとおかしなことになるので、実物はちゃんと示した方がいいんじゃないかということで書きました。香港に行った時に掃除している、おばちゃんがいっぱいいたので、そこから着想しました。

ーー劇中で眼帯しているおばちゃんが何度か写りますね。

古沢:眼帯は監督のアイデアで、目に宝石が入っているのも監督が考えました。

ーー彼女はこの世界では、圧倒的な権力を持った存在という感じですか?

古沢:どうなんでしょうねぇ。どういう人かわからないですけど……。印象に残る出し方をしてくれたと思います。

ーージェシーはとても魅力的でしたね。最後の情けない姿も含めてよかったです。

古沢:すばらしかったですよねぇ、三浦春馬さん。最後はひたすら情けないので、あまり良い役じゃないから申し訳ないと思ってたんですけど、観たらすごく魅力的でした。最後のシーンは三浦さんが「ボコボコに蹴られたい」と提案されて。

ーーあそこまでいくと、見ていて気持ちいいですよね。ジェシー、どこかでまた出てきてほしいですね。彼単体のスピンオフも見てみたいです。

古沢:いいですね。「恋愛詐欺師ジェシー」みたいな感じで(笑)。

ーーダー子とジェシーの過去が出てきますが、本当に恋愛関係だったんですか?

古沢:二人とも詐欺師なので普通の恋愛は超越していて、僕らが考えている恋愛とは違う関係の愛情をお互い持っていると思います。でも、ジェシーはダー子にコケにされたと思ってるところはあるでしょうね。ジェシーは本気で愛してたのではないでしょうか。

ーー映画でダー子が悩んでいる表情が印象的だったので、本当の気持ちはどうだったのかなぁと思いました。

古沢:ダー子は憑依型です。騙してるという自覚なしでやっていると思います。恋人だと思ったら本当に愛するのではないでしょうか。

ーー自覚がないんですね。一番厄介だ(笑)。他の場面でもそうなんですか?

古沢:『ブラックジャック』を読んだら外科手術できると思いこむ人ですから。偽物と本物という概念がない人ですね。

(成馬零一)

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