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Mr.Children、King Gnu……バンドの表現方法を拡大させた作品 新譜からピックアップ

リアルサウンド

20/12/1(火) 12:00

 ロンドン、LAのスタジオでアナログ録音されたMr.Childrenの新作『SOUNDTRACKS』、傑作アルバム『CEREMONY』以降の方向性を示すKing Gnuのニューシングル『三文小説 / 千両役者』などを紹介。バンドの表現方法を拡大させた新作ばかりです!

 前作『重力と呼吸』以来、約2年2カ月ぶり、通算20作目となるニューアルバム『SOUNDTRACKS』は、U2やサム・スミスとの仕事で知られる名エンジニア スティーヴ・フィッツモーリスを迎え、ロンドン、LAのスタジオで録音された。徹底的にアンサンブルを研ぎ澄ませ、ギター、ベース、ドラムによる生々しいサウンドからは、“この4人が揃って音を鳴らせば、Mr.Childrenになる”という確信が伝わってくる。作品を重ねるごとにロックバンドとしての存在感を強め続けている事実こそが、このバンドの凄さであり、四半世紀以上も支持され続けている理由だろう。リスナーの日々に寄り添い、少しでも彩りを与えたいという思いに溢れた歌詞も本作の魅力。特に「Documentary film」における“すべての命には終わりがあり、だからこそ愛おしい”というメッセージ、そして、〈心の火をそっと震わせて 何度だって 僕を繰り返すよ〉と歌う「Birthday」はこのアルバムの核につながっていると思う。

Mr.Children「Documentary film」MUSIC VIDEO

 今年1月にリリースされたアルバム『CEREMONY』で2020年代のポップミュージックのあり方を決定付けたKing Gnuのニューシングル『三文小説 / 千両役者』。美しくも悲しいメロディを軸にした「三文小説」では、たとえ三文小説みたいな人生であっても、〈愚かだと分かっていても尚/足掻き続けなきゃいけない物語があるよ〉と歌い、鋭利なギターカッティングからはじまる「千両役者」ではブラックミュージックとロックがぶつかるバンドグルーヴとともに、〈好き勝手放題の商売/後悔なんて面倒臭いや〉と言い放つ。King Gnuの爆発的なブレイクの後に訪れた虚無と開き直りを想起させる2曲は、現在の彼らの心情をリアルに映すと同時に、リスナーに対し、“おまえはどう生きる?”と突きつけているようにも感じる。高度な音楽性と刃のような感情表現を併せ持った、きわめてスリリングなシングルだ。

King Gnu – 三文小説

 2006年の結成以来、ほぼ1年に1枚のペースでアルバムを発表し続けてきたザ・クロマニヨンズ、コロナ禍の2020年も“当たり前だろ、それしかやることないんだから”と言わんばかりにニューアルバム『MUD SHAKES』を生み出した。いつものように真島昌利と甲本ヒロトの曲が半分ずつ、ロックンロール、ブルースを中心とした濃密なルーツミュージックを血肉化して放ちまくるバンドサウンドもいつも通りだが、世界のすべてが一変したからこそ、この普遍ぶりがより一層愛おしく、貴重に思える。〈自由は最高〉と連呼する「VIVA! 自由!!」(作詞・作曲:真島昌利)、〈ロックンロールにさらわれる〉というラインが突き刺さる「暴動チャイル(BO CHILE)」(作詞・作曲:甲本ヒロト)の冒頭2曲で完全にノックアウト。人生をかけて夢中になれるものがあれば、人は必ず自由になれる。そのことをザ・クロマニヨンズは全身で体現している。

ザ・クロマニヨンズ 『暴動チャイル(BO CHILE)』

 音楽的なトライアルと確固たるオリジナリティを共存させたストレイテナーの11thアルバム『Applause』。 心地よい浮遊感と壮大なスケールを併せ持ったサウンドが印象的な 「Graffiti」、 シャープに研ぎ澄まされたバンドグルーヴ、 軽やかな解放感をたえたメロディを軸にした「叫ぶ星」、 繊細なストリングスと重厚なリズムセクションが絡み合う「さよならだけがおしえてくれた」など、楽曲ごとに表情を変え、 新たな意匠を取り入れながら、 ストレイテナーらしさを決して失うことがない楽曲が並んでいる。 2020年の現実をリアルに反映すると同時に、すべての鬱屈を吹き飛ばすようなパワーを描き出すホリエアツシのソングライティングも絶品。同時代性と普遍的な魅力が一つになった、新たな名作の誕生だ。

ストレイテナー/New Album「Applause」/全曲ダイジェスト映像

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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