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多部未華子×青山真治「もっと女性たちは自分の好きに生きていい」

ぴあ

20/10/21(水) 7:00

多部未華子×青山真治 撮影:奥田耕平

ごく普通に生きているように見える人も、みんな何かしら悩みや痛みを抱えている。そんな息苦しい時代へ送る静かなエールのような映画が誕生した。それが、10月23日(金)公開の映画『空に住む』だ。

両親の急逝。その悲しみを受け止めきれないまま、叔父夫婦の計らいによって高層タワーマンションで新たな生活を始めた直実。仕事、人生、そして恋愛のはざまで揺れる現代女性の孤独や喪失感が、直実の姿を通じて繊細に描かれていく。

主人公・直実を演じたのは、女優の多部未華子。メガホンをとったのは、実に7年ぶりの長編映画となる青山真治監督。日本映画界の至宝というべきビッグネームが、本作で初めて顔を合わせた。

「直実は、亡くなった両親からも『雲みたい』と言われるような、どんな人なのか一言では言い表せない、掴みどころのない女性。私も彼女のことを100%共感しながら演じたとは正直言えなくて。どちらかと言えば、よくわからないまま『これでいいのかな?』と思いながら演じていました」(多部)

大ヒットを記録した『私の家政夫ナギサさん』をはじめ、多部の演じる女性像は常に多くの女性から共感を集めてきた。だが、決して役に共感したり、その行動理由や感情の流れを完璧に理解することに重きを置いているわけではないという。

「これは言わないんじゃないかなというような、よっぽどな台詞があったり、行き過ぎなんじゃないかなということがあれば監督に相談したりはしますが、基本的に疑問は疑問のままとりあえずやってみよう、というタイプです。だから、監督と役についてお話しすることもあまりなくて。それはこの作品に限らず、どの現場でもそうでした」(多部)

「そこが多部さんの面白いところ。実際、人間の行動や気持ちって理屈じゃないところがありますよね。それを多部さんはちゃんと受け入れてくださる。頭で理解することが、演じる上で決して大事ではないということを多部さんは理解されているんです」(青山)

「今回も監督と直実について話すことはほとんどなかったですよね?だから、正直監督もどう思っているんだろうって思いながら、でもオッケーって言ってくださってるからオッケーなんだろうなって(笑)。そんなふわふわした感じで現場にいました」(多部)

「それでいいんです。僕も普段からなるべく自分の中でイメージを持たないようにしていて。だって、僕の中にある登場人物のイメージを俳優さんにゴリ押ししたってしょうがないでしょう? そうじゃなくて、演じられる俳優さんが体現するものにすべてを懸ける。すると、『それが見たかったんだ』というお芝居が見られるんですよ。それが映画づくりの面白いところなんです」(青山)

そんなセッションのような現場だから生まれたシーンが、本作にもあった。直実が、永瀬正敏演じるペット葬儀屋と共に夜の海を訪れる場面だ。

「実はあそこは脚本では『涙を流す』というようなことが書かれていたんです。なので、私もここは泣くんだという気持ちで撮影に臨んで。最初にテストをしたんですが、そのときは涙を流さなかったんです。ところが、監督がそのテストを見て、『オッケー! じゃあ撤収しよう』って片づけはじめて。『え? まだテストなのに? 私、泣いてないのに?』ってなりました(笑)」(多部)

「『どういうこと?』みたいな顔をされてましたよね」(青山)

「はい。でもそのときもそのときで『監督がオッケーって言うならいいのか』と、そのまま何も聞かずに帰りましたね(笑)」(多部)

「真意を説明すると、モニターを見ながらね、目のまわりに涙をいっぱいためて、でもそれがこぼれないという多部さんの表情を見たときに、もうこれ以上やらなくていいやって気持ちになったんです。その涙がこぼれないところに、直実の心情が込められている気がした。僕はここぞというシーンのときはよくそういうことをするんです。この映画で言えば、岸井ゆきのさん演じる愛子が破水をしたシーンも一発撮りで決めました。そういうこの場面は二度はないぞという場面が映画にはあるものなんです」(青山)

他人の胸の内なんて誰にも100%理解することはできない。だけど、理解はできなくても心を動かされる瞬間があるから、映画は美しい。きっと様々な困難に直面しながらも自分なりの生き方を模索していく直実の姿は、今の時代を生きる多くの女性たちにとって胸打つものとなるだろう。

「こう言ってしまうと大きなお世話と言われるかもしれないですけど、今を生きる女性たちにこういうふうに生きてほしいなという願いをこの映画に込めました。生きづらいと言われる今の世の中だけど、女性たちには周りのことなんて気にせず堂々と生きてほしい。誰かの顔色を伺ったり、自分を抑えこんでばかりいると、どうしても生きることが辛くなってしまうじゃないですか」(青山)

「もっと思うように生きた方がいいのかな、とは私も思います。私はこれが欲しいと思ったら必ず口にしますし、こうしたいと思ったら何でもやってみるようにしていて。しつこいんです、性格が(笑)。だから、周りの目はあまり気になりません。ストレスとかプレッシャーについて考えることもほとんどなくて。ちっちゃい悩みはいっぱいあると思うんですけど、深刻にとらえすぎないというか、知らないうちに解決しちゃってることが多いんです」(多部)

「それがいいと思う。もっとね、好きに生きましょうよと伝えたいです。生きづらい世の中と言いますが、その解決方法は、生きづらさというものを生きづらさとして考えないようにすること。自分が生きていく上で大事と思われるようなことは、悩むところにはないんです。今悩んでいることなんて、実はぽいっとほっぽり出しても十分生きていけることだったりする。そう気づけたら、気持ちが楽になれると思います」(青山)

閉塞感で胸がつまりそうになるこの時代にこそ、響くメッセージがある。映画『空に住む』は、悩める現代人への優しい処方箋だ。

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撮影/奥田耕平、取材・文/横川良明

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