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ファナティック ハリウッドの狂愛者

20/9/9(水)

『ファナティック ハリウッドの狂愛者』 (C)BILL KENWRIGHT LTD, 2019

最近は公開前の試写はオンラインのみという映画が増えたが、そういう中にも、これはスクリーンで観たいと思わせる映画がある。『ファナティック ハリウッドの狂愛者』もそんな1本だ。 ポスターには、プリントシャツにバックパックを背負ったマレット・ヘアのゴツイ男が無表情で正面を見ている。これが一見するだけではジョン・トラボルタとは分からないほどだが、彼が演じるのは過激な映画オタクというのだから、それだけで観たくなる。 というのも、トラボルタはゴールデングローブ賞の主演男優賞を得た『ゲット・ショーティ』でも映画マニアの取り立て屋を楽しそうに演じていたからで、今度はハリウッド在住の映画オタクをどう演じるのか気になる。 もっとも、本作と『ワイルド・レース』で今年のゴールデンラズベリー賞の最低主演男優賞をトラボルタは受賞しており、監督のフレッド・ダーストも最低監督賞にノミネートされるという惨憺たる状況である。それでも、やっぱりトラボルタが見たいというファナティックな個人的感情が燃え上がり、公開初日のアップリンク吉祥寺へ駆けつけた。一席間隔でしか販売されないとはいえ、観客はまばらである。 トラボルタが演じるムースは、憧れの俳優ハンター・ダンバー(デヴォン・サワ)のグッズに有り金をはたくマニアだが、サイン会でつれなくされたことから自宅を突き止め、遂には邸宅に侵入を繰り返す。 ダンバーの塩対応がムースの過激な愛を招き寄せることになるが、これはストーカー映画ではおなじみの展開で、『恐怖のメロディ』『ミザリー』『ザ・ファン』では、それぞれラジオDJ、作家、野球選手がターゲットだったが、今回はスター俳優ということになる。 ムースは、ダンパーの出演を検討している脚本を勝手に読んで、「これは断った方が良い」などと言うかと思えば、彼の歯ブラシを舐め回すように使ったり、寝ている彼の横でツーショット写メを撮ったりと、志村けんが演じる変質者みたいな行動を取る。 そうしたトボケた味わいが楽しめるのだが、役に凝るトラボルタの熱演と、プロットのルーズさを、どう捉えるかで評価が別れるのではないかと思う。 劇中では明言されていないが、ムースの言動や仕草は自閉症のそれである。トラボルタの息子もそうだった(10年前に亡くなっている)というから、役作りも思い入れが強いものになったのかもしれないが、リアリティが増すほどに、本作の描き方に反発が出るのは容易に想像がつく。 この作品と前後して『ジョーカー』が公開されたことを思えば、どう演じたかよりも、どう描いたかで演技が称賛されるのも最低と言われるのも紙一重であることが理解されよう。 セキュリティの甘すぎるダンバーの邸宅や、警察が存在していないかのような世界観、庭で×××いるメイドの問題など、気になる点が多すぎるが、トラボルタの快演で上映時間88分を一気に見せてくれる。

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