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現場にはカメラとVRゴーグル!? 超実写版『ライオン・キング』は“どこ”で撮影されたのか?

ぴあ

19/7/5(金) 7:00

『ライオン・キング』 (c)2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

傑作ディズニー・アニメーションを基にした超大作『ライオン・キング』が8月に公開になる。本作は最新技術を駆使してリアルな映像と感情豊かなキャラクターを大スクリーンに描きだす“超実写”映画で、撮影にはVR技術が活用されたという。フィルムメイカーたちはどこでどのようにして本作を撮影したのだろうか?

本作の監督を務めるジョン・ファヴローは、公開中の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』で主人公の友人ハッピー・ホーガンを演じるなど俳優としても活躍しているが、『アイアンマン』や『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』など数々の名作を監督してきた才人だ。2016年にはディズニーの傑作アニメーションを実写化した『ジャングル・ブック』を発表。カメラで撮影した人間の少年と3DCGで描かれた動物たちを見事に融合させ、ダイナミックなドラマを描き出した。

彼が『ジャングル・ブック』を制作する際に参考にしたのは、CGアニメーションの制作プロセスだった。ファヴロー監督は事前にストーリーボードを何度も作成して徹底的にカメラのアングルやシーンの構成を検証。実際にカメラがまわる前に試行錯誤や選択が繰り返された。

しかし、『ライオン・キング』でファヴロー監督はカメラを持ち込み、ファインダーを覗きこみながら、どのアングルで、どのぐらいの長さを撮影するのか決めていったようだ。どこで? ライオンが暮らすジャングルで? いや、VR技術を使った“デジタルの世界”の中でだ。撮影現場にはVRのヘッドセットが用意され、ファヴロー監督と撮影監督はゴーグルをかけて、アニメーターたちが作成した“ジャングルブックの世界”に入り込んで撮影プランを練った。ファヴロー監督は「これをやっている理由は、アニメーション映画に実写の感覚をもたらせるためです。本物のクルーが入り込み、アニメーション映画と接し合いながら、撮影現場でやるようなカメラに関するすべての決定を下します。机に座りキーボードを叩いてカメラの動きをプログラミングするのではなくてね」と説明する。

「ここで使っているのはマルチプレイヤー用のVRゲームで、それで僕らは映画を作っているんだ。VRでリアルタイムに起きていることをすべて見ることができる。ビデオゲームのようにすべてが最適化され、簡易化されるけど、照明と十分なディテールがあるから、(自分たちがそこでやりたい)ショットをセットアップできるんだ。そして、一旦それで編集して、それを(VFXのチームに)渡すと、他の映画と同じようにビジュアル・エフェクトのパイプラインに進むことになる」

つまり、本作は実際にはジャングルに行っていないのに、映画の世界に“入り込み”、多くの実写映画と同じようにキャラクターの演技や立ち位置を目で見てから、カメラをかついで撮影アングルを探したり、ショットの計画を立てて撮影が進められたようだ。そのため、ファヴロー監督は本作に『ライトスタッフ』やトム・クルーズ主演の『アウトロー』などを手がけた重鎮カレブ・デシャネルを撮影監督に招いた。フィルムを駆使して重厚なヴィジュアルを描いてきたデシャネルが能力を存分に発揮できるだけの“撮影現場”がそこにあったからだ。

ファヴロー監督は「アニメーション映画とかCGやエフェクトをたくさん使うシークエンスではすべてのフレームが決められ、すべてがプリビズ(簡易のコンテ動画)化されるから、あまりに完璧すぎる雰囲気になってくる。アニメーションとしては良く見える。でも、実写映画では本物の動物たちを見ているかのように感じられるマジックトリックが欲しい」と語る。だから彼らはVR技術を使って、ライオンが疾走するジャングルの中に入り込んで撮影する。そこには思わぬ発見があり、予期せぬ事態があり、偶然の出来事や、その場にいることで生まれるヒラメキがある。「僕らがここでとらえようとしていることは、実写映画を作っている時に偶然起きることなんだよ」

『ライオン・キング』は膨大なデジタルショットで構成されている。多くのCGアーティストが参加している。しかし、この映画は監督や撮影監督が歩きまわって、カメラをかついで撮影が行われた。彼らはジャングルに行っていない。しかし、撮影隊は確かにジャングルにいた。本作は単なるCGアニメーションでも実写でもない“超実写版”だ。それはおそらく私たちがまだ誰も観たことがない、まだ誰も体験したことのないものになりそうだ。

『ライオン・キング』
8月9日(金)全国公開

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