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退廃的なロンドンの街を舞台に浮かび上がる人間社会の闇! ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』待望の日本演出版が開幕

ぴあ

ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』より、真ん中左:田代万里生  撮影:田中亜紀

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19世紀末のロンドンで実際に起こった猟奇殺人事件をモチーフに、チェコ共和国で創作されて韓国で大ヒット、韓国人キャストによる来日公演も話題を呼んだミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』。その初めてとなる日本版が、白井晃の演出により日生劇場で上演されている。娼婦ばかりを狙う連続殺人犯を追う刑事アンダーソンと、スクープ目当てに彼に近づいた記者モンロー(田代万里生)の前に、アメリカ出身の外科医ダニエルが現れて「犯人を知っている。そいつの名前はジャックだ!」と告発、アンダーソンはその情報を元におとり捜査を計画するのだが……というストーリー。Wキャストのうち、木村達成(ダニエル)、加藤和樹(アンダーソン)、堂珍嘉邦(ジャック)が登板したゲネプロ初日を取材した。

ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』より、真ん中 ジャック役:堂珍嘉邦

来日公演で観た韓国版はとにかくキャスト陣の歌唱力が凄まじく、エンタテインメント性が強い印象だったが、そこはやはり白井演出、日本版は人間ドラマが際立つ作り。ほかの誰かを犠牲にしてでも愛する人を救いたい想いから生まれる罪、時に好奇心が配慮を上回ってしまうために加熱するマスコミ報道、弱者が真っ当な人生を歩むことを阻む貧困……。現代にも通じる人間社会の闇が、騒々しいばかりにエネルギッシュな音楽の中から次々と浮かび上がり、身につまされる。当時のロンドンの退廃的な街並みをセット・照明・映像によってダイナミックに表現した美術の中に、普段は溶け込んでいながら照明によって時おり出現する、能舞台の橋がかりを思わせる“道”も実に示唆的で引き付けられた。

ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』より、左 アンダーソン役:加藤和樹 右 ダニエル役:木村達成
ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』より、左 ダニエル役:木村達成 右 ジャック役:堂珍嘉邦

とはいえもちろん、キャスト陣の――とりわけ男性キャストのパフォーマンスが大きな見どころとなる作品である点は健在だ。純真さがあまって闇にとらわれてしまう青年医師ダニエル、刑事でありながらコカイン中毒という影を背負うアンダーソン、冷酷無比でミステリアスなジャック、金の亡者だがクラウン的な役割も持つモンローと、どの役も身近にいたら困りものだが、フィクションの中にいる分にはそもそも魅力的なキャラクターばかり。そんな役を、ミュージカル界のきらめくスターたちが演じるのだからなおさらだ。小野賢章のダニエル、松下優也のアンダーソン、加藤和樹のジャック(アンダーソンとの二役)で観たら、ダニエルの恋人グロリア(May’n)、アンダーソンのかつての恋人ポリー(エリアンナ)との化学反応もあいまって、それぞれの苦悩はまた違った形で立ち現れてくることだろう。



取材・文:町田麻子 撮影:田中亜紀

キャスト・演出家コメント全文

【白井晃(演出)】
韓国で大ヒットしたミュージカルということもあり、それなりの重圧はありましたが、余りその事に囚われない様に、台本と楽曲から想起されるイメージを丁寧に積み重ねてきました。19世紀末のロンドン・ホワイトチャペルに想いを馳せながら、作品の中にある人間ドラマに重きを置いて創作を続けてきました。そして、ようやく日本版としてのオリジナルな世界が浮かび上がってきた様に思います。この様な状況下でのリハーサルは、決して容易いものではありませんでしたが、キャスト・スタッフの献身的な努力によって、より濃密な世界を作り上げる事ができたと思います。控えめに言っても、かなり手応えのある作品になっていると思います。どうぞ楽しみにしていただければと思います。

【木村達成(ダニエル役)】
初日が開幕します。この状況下、無事に幕が上がる事、本当に嬉しく思います。やはり舞台はお客様がいて成立する物です!このカンパニーに関わってくださっている全ての方に感謝し、舞台に立てている喜びをこの作品にぶつけていきたいと思います。皆様千穐楽まで応援よろしくお願いします!

【小野賢章(ダニエル役)】
皆さんに安心して観ていただけるよう感染予防対策も徹底しつつ、稽古してきたことを舞台上でしっかりお見せできるよう頑張りたいと思います。物語が進んでいくにつれてダニエルが変わっていく様というか、ひとつの出会いをきっかけに物語がどんどんエスカレートしていって気が付いたらとんでもないところに来ている、そんな様子を見ていただけたらなと思います。

【加藤和樹(アンダーソン役/ジャック役)】
予想通りアンダーソンとジャックの切り替えがなかなか難しいなと思いつつも、全く違った魅力のある二役ですし、この「ジャック・ザ・リッパー」という作品においてはものすごく重要な役どころなので、改めてこの役のやりがいを感じております。もちろん僕の役だけじゃなくてこの世界の中に生きる人間たちの姿、模様というものを感じていただけるよう、とにかく全力で、最後まで演じ切りたいと思います。

【松下優也(アンダーソン役)】
日本のキャストでは初演ということで、キャスト・スタッフ一同気合いが入っています。感染防止対策もしっかりやってきたので、無事に初日を迎えることができとても嬉しいです。コロナ禍ではありますが、少しでも皆さんに元気になってもらえるように、僕らも一生懸命精一杯、この「ジャック・ザ・リッパー」の世界を演じたいと思いますので、ぜひ楽しみにしていてください。とにかくジャックがめちゃくちゃかっこいい!ライブ感のあるナンバーもあるので、ぜひそちらも楽しみにしていてください!

【堂珍嘉邦(ジャック役)】
日本版「ジャック・ザ・リッパー」の初演でタイトルロールを演じさせていただき、このダークファンタジーの世界に参加することができて、非常に光栄です。フィクションとノンフィクションが交錯し、謎解きを含んだ事件簿のような要素もあるので、ぜひそこを楽しんでいただきたいです。キャストも皆さん個性的で、ダブルキャストの組み合わせでまた違った「ジャック・ザ・リッパー」をお楽しみいただけると思います。ぜひご覧いただき、この作品を大好きになっていただけたら嬉しいです!

【May’n(グロリア役)】
無事に初日を迎えることができ、嬉しく思います。グロリアは強さや可愛らしさ、苦しさや葛藤もありとても難しい役ですが、ダニエルとの大きな愛と共に生きたいと思います。
積極的に「来てください!」と大きな声で言えない世の中ですが、実際に足を運んでくださったお客様に「来てよかった!」と思っていただかないと!と出演者の1人として強く思っています。私自身、劇場の空気が震える瞬間がとても好きです。ぜひ一緒に1888年のロンドンを生きましょう!

【エリアンナ(ポリー役)】
何よりもこの日を迎えられたことが本当に良かったなと思っています。本番のセットや衣裳で稽古してみて、やっと白井さんの思い描くロンドンの空気が作れたかな、パズルの1ピースがまたはまったかな、と。ここにお客さんが入って、やっとそのパズルが完成するんだなと思うとワクワクが止まりません。マスクを外して舞台稽古をした時、自分自身も含め、みんなこんな表情でやっていたんだ!という新たな発見もあって、楽しみでしかありません!お客様にも安心して安全に、そして楽しくご覧いただけるよう、まだまだこれからもブラッシュアップしていきたいと思います。

【田代万里生(モンロー役)】
ついに日本初演の幕が上がります!パワフルでパンチがありながらも大人で繊細さも併せ持つ本作のロックサウンドは、抑圧された今の世の中を吹き飛ばしてくれるかのよう。非日常的なドラマでありながら、観る人誰もがどこか心当たりのある想いを抱くシーンの数々。切り裂きジャックの特ダネを狙うロンドンタイムズの記者モンローとして、この作品を大きく、そして時に強引に揺れ動かしていきます。日生劇場でお待ちしております!

ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』
【東京公演】
2021年9月9日(木)~2021年9月29日(水)
会場:日生劇場

【大阪公演】
2021年10月8日(金)~2021年10月10日(日)
会場:フェニーチェ堺 大ホール

チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2171079

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