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『HARE NOVA Vol.02』ライブレポート 「音楽の新しい時代を作るのはやっぱり人間」

リアルサウンド

14/6/11(水) 23:03

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 会社設立40周年を迎えるソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)が、4月から7月にかけて展開するライブオーディションシリーズ『HARE NOVA』(ハレノヴァ)。その第2回目『HARE NOVA Vol.02』が5月21日、渋谷clubasiaで開催された。SMAは奥田民生や氣志團、YUKI、木村カエラ西野カナ等、100組以上のミュージシャン、俳優、タレント、芸人、文化人などが在籍するマネジメントオフィス。この『HARE NOVA』は、合計4回の各回から選ばれたアーティストが8月に行われる渋谷TSUTAYA O-EASTのファイナルステージに出演し、そこで選出された2組が9月に行われるSMA主催の日比谷野外音楽堂2daysにオープニングアクトとして出演できるというもの。

 「HARE NOVA」のオフィシャルHPでも記されているように、このイベントは勝ち抜きオーディションではなく、「出会いの場」であることをコンセプトに掲げている。将来的にはメジャーデビューへのきっかけになるかもしれないが、このイベントで、より多くの音楽ファンにこれからの音楽シーンを担うアーティストと繋がったり、バンド同士が仲良くなったりできる機会を作れればと開催されている。また、様々なレコード会社、レーベルのスペシャリストが「ゲストウォッチャー」として参加し、ライブを終えたそれぞれのアーティストにアドバイスするなど、若いアーティストがプロの評価を得る貴重な機会があることもこのイベントの特徴だ。今回リアルサウンドでは、イベントにゲストウォッチャーとしても参加した音楽ジャーナリストの宇野維正氏によるライブレポートを掲載する。(編集部)

・出演アーティスト
FREE SQUARE
絶景クジラ
Omoinotake
vivid undress
さしすせそズ
黒猫チェルシー(ゲストアクト)

・ゲストウォッチャー
原田公一(ソニー・ミュージックアーティスツ)
伊藤裕美(ソニー・ミュージックアーティスツ)
横田 衛(ソニー・ミュージックアーティスツ)
石川 大(ソニー・ミュージックレーベルズ)
宇野維正(音楽ジャーナリスト)

FREE SQUARE

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 最初に登場したのは、高校卒業と同時に福岡から上京、現在は下北沢や渋谷のライブハウスを中心に活動している4ピース歌ものギターロックバンド、FREE SQUARE。本日の最年少バンド(平均年齢19歳)である。下北沢あたりで活動している若いギターロックバンドというと、数年前まで演奏がまだ心もとなくステージ上でも俯きがちなバンドが多かったが、FREE SQUAREはドラム以外のフロント3人がサウンドも立ち位置も前へ前へとグイグイ押し出してくる、その「熱さ」と(いい意味での)「暑苦しさ」が特徴。そんな剥き出しのライブパフォーマンスだけでなく、ボーカルの藤森が恋人への感傷をストレートに綴った「お姫様のワガママ」を筆頭に、詞作面においても若さと青さがほとばしっていた。

■ゲストウォッチャーコメント
原田公一「僕は初めてのバンドを見る時、目を瞑って、ボーカリストの声がどれだけ心に迫ってくるかに耳を澄ますんですね。藤森さんは、とてもいい声をしてる」
伊藤裕美「まだ未整理の部分があるので、演奏力やアレンジ力を磨いて、もっと歌が前面に出てくるようになるとよくなると思います」

絶景クジラ

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 2番目のバンドは、大阪を拠点に活動中の平均年齢21歳のガールズバンド、絶景クジラ。なんと昨年末2013年に始動、今年の1月7日が初ライヴだったという生まれたてのバンド。にもかかわらず、早くもYouTubeなどで話題を集めている(と自称)。確かに、そのパフォーマンスは一度観たら絶対に忘れられないインパクト。スカートがめくれるのも気にせずステージ上で暴れるボーカルのナツコ・ポラリスは、終盤になるとオーディエンスのいるフロアにまで下りてきて会場全体を強引に巻き込んでいった。四つ打ちのパーティーロック、ダブ的なリズム処理が施されたミディアムチューン、そして緩急に満ちたメロディアスなポップスまで、楽曲のバラエティも多彩。その大器ぶりの片鱗を見せつけてくれた。

■ゲストウォッチャーコメント
横田 衛「結成してまだ半年とはとても思えないほど演奏が巧いし、かわいい(笑)。すごく可能性のあるバンドだと思います」
石川 大「かっこよかった。大好きです。こういうバンドが元気に活動できる日本の音楽シーンを作りたい。3曲目の『春紫苑』みたいな曲をもっと聴いてみたい」

Omoinotake

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 3番目にステージに上がったのは、島根県出身、70年代風の長髪が印象的なピアノ&ボーカル藤井怜央を中心とするスリーピースバンド、Omoinotake。そのルックスからフォークっぽいサウンドを聞かせるのかと思いきや、和ものっぽい叙情的なメロディ、軽くオートチューンが入ったボーカル、骨太なリズムと、音の組み合わせの意外性とその完成度は相当なもの。楽曲を引っぱっていくのはピアノの旋律だが、メロディのリフレインのさせ方がダンスミュージック的で、不思議な高揚感に満ちている。ステージの最後を締めたのはオフコース往年の名曲「Yes-No」の大胆な解釈によるカバー。こういう場でカバーソングを披露するというのは、歌唱力と演奏力とアレンジ力によほどの自信がある証拠だろう。

■ゲストウォッチャーコメント
宇野維正「はっぴいえんど周辺のバンドに影響を受けた若いバンドというのは珍しくないですが、同じ70年代リスペクトでもOmoinotakeの『踊れるオフコース』というコンセプトは斬新。サカナクションやtofubeatsあたりを聴いてるリスナーが気に入りそう」

vivid undress

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 4番目に登場した男女混合5人組バンドのvivid undressは、ステージに立ったそのたたずまいの自体で、他の出演バンドとは異質のプロフェッショナルな洗練をまとっていた。フロアの前方には、早くも固定ファンの姿もチラホラ。演奏が始まった瞬間、まずその出音の分厚さとアレンジの巧みさに驚愕。そして、何よりも衝撃的だったのはボーカルkiilaの歌声。天空まで突き抜けるような高音から、ちょっと椎名林檎を思わせるような低音まで、そのあまりにも吸引力の強い声の力にゲストコメンテーターたちの間にもどよめきが。バンドメンバーも個性派揃いで、オネエキャラ(?)の鍵盤担当rioによるMCと演奏中のダンスに会場全体が沸いていた。あらゆる意味で、破格のスケールのバンドだった。

■ゲストウォッチャーコメント
石川 大「最近はバンドがメジャーのレーベルと契約する理由が見つからない気がしていたんですが、このバンドを見て、その理由が見つかりました」
宇野維正「上手いとか下手とか好きとか嫌いとかの価値基準を超えて、kiilaさんの歌声がとにかく気持ちがいい。すっかり気持ち良くなってしまいました」

さしすせそズ

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 最後に登場したのは関西出身、今回のイベントのために初めて東京に来たという「キャッチー&センチメンタル」が売りの4人組バンド、さしすせそズ。ブー・ラドリーズの「ウェイク・アップ・ブー」にのってメンバーが一人ずつステージ上に元気に現れた瞬間から、「このバンドはライブを主戦場とするバンドなんだな」ということがビンビンに伝わってくる。音楽性の基本はメロウなフォークロック。そこに、ボーカルさしすせそ松下の人間味溢れた歌声と、彼らが生活している京阪沿線の生活臭のある歌詞が加わって、これまでありそうでなかったバンドの個性となっている。MCではちょっと空回りしている感もあったが、それも含めて「愛すべきバンド」としての魅力を早くも放っていた。

■ゲストウォッチャーコメント
横田 衛「音楽的には大好きなタイプのバンドなんですけど、アレンジ面でまだまだ詰められるところがあると思った。4人で最大限のことをやってるようには聴こえない」
原田公一「ブルースっぽいところもあるんだけど、それが表面的で、あまりブルースが感じられなかった。衝動で突っ走るのもいいけど、バンドを長くやることを考えたら、昔の音楽をたくさん聴いて勉強していくことも大切だと思うのでがんばって下さい」

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 5バンドの演奏を終えて、すっかり温まった会場をさらにヒートアップさせたのはゲストアクトの黒猫チェルシー。持ち前のガレージロックの荒々しさに、ヘヴィロック的な凄味を増した最新型の黒猫チェルシーの本領を存分に叩き付けてくれた。「このHARE NOVAってイベントのいいところは、誰がグランプリを獲るとかじゃなくて、これを機会にして、すべてのバンドがここからいろんな繋がりを持てるってところだと思う」とMCで若いバンドたちにエールを送る渡辺大知。しかし、彼らのステージを食い入るように見つめていた出演バンドたちは、そのパフォーマンスの迫力に圧倒されたに違いない。

こうして2回目の開催を終えたHARE NOVA。もしかしたら数年後に日本の音楽シーンを塗り替えてくれるかもしれない有望なバンドの数々の登場に、ゲストウォッチャーの面々は終演後も興奮さめやらない様子だった。「今日は関西の勢いを感じましたね(vivid undressのボーカルkiilaも関西出身)。僕が好きだったのは絶景クジラ。SMAはレーベルではないので、やっぱりパフォーマンスを一番重要視するんだけど、一番パフォーマンス力を感じました」(原田公一)。「音楽は人間がやるもので、音楽の新しい時代を作るのはやっぱり人間なんだなって、とても希望を感じることができました」(石川 大)。「今日はみんな本当にクオリティが高かった。やっぱりバンドを見つけるのは、出会いと運がすべてだから、こういうイベントや、ライブハウスに通い続けることの重要さが身に沁みました」(横田 衛)。次回は6月18日。ゲストアクトはオワリカラ。はたして、大豊作だった今回を超える新鋭バンドは現れるか?

(取材・文=宇野維正)

■HARENOVA Vol.02 ライヴムーヴィーが公開中
https://sma40th.com/harenova/livemovie/livemovie02.html#container

■原田公一:1977年より南佳孝のマネジメントを担当。その後、UNICORN、PUFFYほか多くのアーティストに携わる。現・ソニー・ミュージックアーティスツ代表取締役会長。
UNICORN オフィシャルHP:http://www.unicorn.jp/
PUFFY オフィシャルHP:http://www.puffy.jp/

■伊藤裕美:国生さゆり、渡辺満里奈ほか、多くのアイドル、女優をマネジメント。音楽系アーティストでは、現在、土岐麻子を手がける。
土岐麻子 オフィシャルHP:http://www.tokiasako.com/index.php

■横田 衛:UNICORNのローディーとしてキャリアをスタート。マネージャー、ディレクターとして多くの新人を世に送り出す。現在は、ART-SCHOOL、黒猫チェルシーのマネジメントチーフ。
ART-SCHOOL オフィシャルHP:http://www.art-school.net/index2.html
黒猫チェルシー オフィシャルHP:http://www.kuronekochelsea.jp/

■石川 大:ディレクターとして、JUDY AND MARYを皮切りに、YUKI、スネオヘアーなど多くのアーティストを手がける。現在は、tacica、ClariSを担当。
tacica オフィシャルHP:http://www.tacica.jp/
ClariS オフィシャルHP:http://www.clarismusic.jp/

■宇野維正:音楽・映画ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌などの編集を経て独立。現在、「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「BRUTUS」「ワールドサッカーダイジェスト」「ナタリー」など、各種メディアで執筆中。Twitter

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