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『まんぷく』安藤サクラの母としての愛が胸を打つ 物語で初めて描かれた“失恋”

リアルサウンド

19/3/17(日) 6:00

 “恋は影法師。いくら追っても逃げていく。こちらが逃げれば追ってきて、こちらが追えば逃げていく”

参考:『まんぷく』第140話では、神部(瀬戸康史)がエビのフリーズ加工を提案する

 女性と交際したことがない忠彦(要潤)の弟子・名木(上川周作)は、まず偉人たちの恋にまつわる名言を学ぶことから始めた。その1つが冒頭のウィリアム・シェイクスピアの言葉である。忠彦は、名木が頭でっかちになってしまうのではないかと、その様子を少し心配しているようだ。ただ、名木には名木なりの考えがあるはずだから、そこはどうか長い目で見守ってあげてほしいところである。

 さて、今週の『まんぷく』(NHK総合)では1つの恋物語が佳境を迎えたわけであるが、それは他でもなく幸(小川紗良)の話である。万博が開催されたこともあり、日本を訪れていたアメリカ人の青年・レオナルド(ハリー杉山)。そんな彼と出会った幸は、何度も彼と一緒に時間を過ごすうちに自然と好意を抱いていく。喫茶店で語らいあうとき、あるいは家に帰ってきてからも彼のことを思ってドキドキする彼女の姿は、まさしく青春を謳歌している様子。ところが後にレオナルドには婚約者がいたことが分かり、幸は悲しみにくれてしまうのだった。

 源(西村元貴)には気持ちをぶつけられる父親がいるが、自分にはいないと幸は思っているのではないか。福子はそんなことを思いながら、幸のことを心配していたのだった。もちろん、幸の周りには彼女のことを気にかけてくれる人はちゃんといる。ただ、幸はすべてを1人で抱え込もうとしていた。失恋をすると、ひどく孤独であるかのように錯覚することがある。まるで自分だけがどこかに取り残されたような気持ちになるのだ。

 幸に好きなだけ泣かせようとするシーンで、福子は「私はあなたのお母さんなんやから」と言っていた。そんなことわざわざ言わなくても当たり前の事実ではないかと思うかもしれない。だが、そんなことすらも忘れかけてしまうくらいに、人は自分が1人なのではないかと思いこむことがある。好きなだけ泣いて、愚痴をこぼして、甘えることが許され、なおかつ最も近くにいる存在。それが自分であることを思い出させた福子の役割は非常に重要である。三度の逮捕や失業があっても、萬平(長谷川博己)が前を向き続けることができたのも、福子の包み込みような愛があったからだろう。

 これまでの『まんぷく』では、福子自身が幸のような失恋を味わうというシーンは描かれなかった。ただ、福子の周りにはいつだって味方になってくれる存在がいた。萬平というかけがえのないパートナーと結婚するにあたり、当初は鈴(松坂慶子)から反対を受けた福子。「この人のことが好きだ」と思っていても、誰かから反対されるというのはよくあることである。ただ、同時に応援してくれる人もちゃんといて、例えば、咲(内田有紀)もその1人だった。相談したり、悩みを打ち明けたりすることができる人間がいるだけで、気持ちがだいぶ楽になる。きっと福子はそのことをよく分かっていただけに、幸にエールを送りたいと思う気持ちもひとしおだったのかもしれない。

 子どもの頃の幸はいつだって源と2人で行動していた。何かがあったときに、一番に気遣ってくれるのも源だった。だが、大人になった今、昔みたいにいつまでも源と一緒にいるわけにもいかないし(ましてや、自分の恋愛のことをやすやす話せるわけもない)、源も源で自分の人生で精一杯である。しかし、こと恋愛に関して言えば、1人で解決できない物事も多い。何せ人によっては、影法師のように厄介なものに映ることも考えられるものなのだ。そんなとき、1人で抱え込まなくても気軽に打ち明けられる存在が家族にいることを再確認できたことは、きっと幸にとって大きなことであろう。(國重駿平)

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