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『危険なビーナス』ディーン・フジオカが仕掛ける罠 伯朗はなぜ疑われないのか?

リアルサウンド

20/10/19(月) 6:00

 矢神家に眠る30億とも言われる遺産。失踪した明人(染谷将太)の行方を追って、矢神家に乗り込んだ伯朗(妻夫木聡)と楓(吉高由里子)は、親族の冷たい視線にさらされる。楓を閉じ込めた人物と「価値のあるもの」について情報を得るべく、伯朗と楓は、康之介(栗田芳宏)の次男・牧雄(池内万作)に会いに行くが、2人に会う直前、牧雄は何者かに襲われていた。

 『危険なビーナス』(TBS系)第2話で、伯朗と楓の前に立ちはだかったのが、康之介の養子・勇磨(ディーン・フジオカ)だ。牧雄を狙ったのが親族の誰かなら、その人物は屋敷に戻っていないはず。そう考えた楓は、伯朗とともに屋敷へ取って返す。不在だったのは、勇磨ともう1人の養子である佐代(麻生祐未)、二女・翔子(安蘭けい)の娘・百合華(堀田真由)の3人で、百合華にはアリバイがあった。

 牧雄の携帯の着信履歴を見て、警察は事情聴取のため、楓を署に連行する。楓を疑う勇磨は、伯朗に「楓さんは本当に明人の嫁なのか」と疑問をぶつける。子だくさんな康之介の一族の中で異彩を放っているのが、勇磨と佐代の養子コンビ。勇磨に対して、伯朗は良い印象を抱いていない。その理由は少年時代の記憶にあった。

 名門の一族で冷遇されてきたせいか、勇磨はどこか陰にこもった性格で、「自分の力でのしあがった」という自負心が鼻につく。楓の素性を探りつつ、楓に向かって「私がパイプ役になりましょう」と矢神家との交渉を買って出る勇磨は、口がうまく腹の底が読めない人物だ。『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)や『シャーロック』(フジテレビ系)など、屈託のあるイケメンを演じるとディーン・フジオカは抜群にハマる。

 勇磨は、伯朗に楓のスマホを盗んで来るように持ちかける。一方、伯朗は、楓に依頼されて、勇磨の車にGPSを取り付ける。「日本の警察の捜査では違法らしいんですけど、お義兄様は一般人ですよね」という楓の理屈はもっともらしく響く。楓と勇磨の間で板挟みになる伯朗。最終的に、楓を信じて勇磨を裏切ることになるのだが、ここで問題になるのが伯朗のキャラクターだ。

 なぜ伯朗は、楓からも勇磨からも疑われないのか? 矢神家と早くに縁を切った伯朗は「部外者」で遺産を相続しないということもある。家の事情を知っており、親族と顔見知りで、明人を助ける動機のある伯朗は、楓や勇磨にとって頼りがいのある、もっと言えば、利用価値のある便利な存在なのかもしれない。ただし、それだと10数年ぶりに親族の問題に首を突っ込んできた伯朗は、もっと煙たがられるはずだ。

 波恵の冷淡でありながらも受け入れている様子や、百合華が突然訪ねて来る場面など、なんだかんだ言って、伯朗は矢神家の人間に信頼されている気がする。助手の元美(中村アン)からもなかば動物扱いされている伯朗は、良い意味で人畜無害な存在なのだ。欲望の渦巻く矢神家にあって、伯朗の周囲だけは無風地帯であり、命を扱う獣医という職業はいかにも伯朗らしい。あえて勘ぐれば、周囲はみんなグルで、伯朗だけがそれを知らないという可能性もあるが……。

 楓や勇磨だけでなく、矢神家の面々が繰り広げる“化かし合い”。勇磨から投げかけられた「周りの人間を見極めて戦え」という言葉を、そのまま勇磨に投げ返した伯朗は、本当に楓を信用してよかったのだろうか。平常のテンションの人がいない『危険なビーナス』で、ほぼ唯一と言っていい冷静な目で見ているのが元美で、「考えすぎると空回りするタイプ」と伯朗を分析。「その場、その場の直感で進んでいく方がお似合い」と助言する。

 というわけで、私たちはしばらく伯朗の直感に付き合うことになりそうだ。それは楓や、「次の段階」に進もうとする佐代と勇磨たちの思惑に乗ることを意味するのだった。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
日曜劇場『危険なビーナス』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:妻夫木聡、吉高由里子、ディーン・フジオカ、染谷将太、中村アン、堀田真由、結木滉星、福田麻貴(3時のヒロイン)、R-指定(Creepy Nuts)、麻生祐未、坂井真紀、安蘭けい、田口浩正、池内万作、栗原英雄、斉藤由貴、戸田恵子、小日向文世
原作:東野圭吾『危険なビーナス』(講談社文庫)
脚本:黒岩勉
プロデューサー:橋本芙美(共同テレビ)、高丸雅隆(共同テレビ)、久松大地(共同テレビ)
演出:佐藤祐市、河野圭太
製作:共同テレビ、TBS
(c)TBS

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