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テイラー・スウィフト、ビヨンセ、リアーナ…ビジネス的成功収めるスターから学ぶ音楽産業のヒント

リアルサウンド

19/9/14(土) 8:00

 男性優位な音楽産業において、年収ランキング首位に女性が多いことはご存知だろうか。彼女たちはメガトップスター。音楽界の頂点に立ちながら革命を繰り広げるビジネスパーソンたちだ。その存在は、音楽産業の現状のみならず生きる知恵も与えてくれるだろう。

Forbes『2019年版もっとも稼いだ音楽界の女性』
1位:テイラー・スウィフト…1億8500万ドル
2位:ビヨンセ…8,100万ドル
3位:リアーナ…6,200万ドル

(関連:ビリー・アイリッシュは、なぜカート・コバーンを彷彿とさせるのか 両者に共通する社会への視点

■テイラー・スウィフト:空席コンサートで歴代1位興行

 テイラー・スウィフトは「評判」を武器としてしまうポップスターだ。彼女を「もっとも稼いだエンターテイナー」たらしめた『レピュテーション・スタジアム・ツアー(Reputation Stadium Tour)』にしても、自らへの悪口として使われていた「蛇」を巨大オブジェにしたことで話題を呼んでいる。ここで興味深いことは、同ツアーがビジネス領域でも激論を発生させたことだ。なんと、これまでのツアーチケットは速攻完売が当然だったにも関わらず、今回は空席が目立ったのだ。理由は「スローチケット」と呼ばれる販売システムの導入にある。価格帯は強気の約50~1,500ドル(前回の1989ツアーでは40~225ドルほど)(参照:The Wall Street Journal)。まず、アイテム購入ポイント等からなる「ファン認証プログラム」によって、チケットの半分を熱心なファンに割安で提供販売。くわえて、市場価格によって値段が変わる「動的価格設定」を実施(約1,000ドルだった席が600ドルにまで下がる時もあった)。このやり方だと、チケットはスローに売れていくことになるが、転売を防ぐことができる。事実、主流の二次流通市場に出回ったチケットの割合は、前回30%から3%にまで縮小。『レピュテーション・スタジアム・ツアー』は、席が売れ残る段階で前回の興行収入を上回り、最終的にはたった38公演でアメリカにおける歴代最高興行収入ツアーとなった(2位The Rolling Stonesは70公演)(参照:Billboard)。

 こうしたやり方を拒む人気ミュージシャンも多かったという。「値上げによって貪欲なイメージがついてしまいかねない」ためだ。テイラーにしても、当初はForbes含むメディア群から「リスクある貪欲商法」と批判を受けている。歴史的成功に終わったことは同誌の収入ランクを見ての通りだが……テイラー・スウィフトから学べることはなんだろう? 勝算があるのなら、「評判」に負けずやってみることだ。

■ビヨンセ:映画ビジネスで神話創造

 定額制ストリーミング配信サービスの普及によって音源収入が減った今、音楽スターたちは様々な分野への進出を活性化している。近年ホットな映画ビジネスの代表格こそ女王ビヨンセだ。『HOMECOMING』含むNetflixとの3プロジェクト契約で約6,000万ドル、『ライオン・キング』ではディズニーから2,500万ドル受け取ったと報じられている(参照:Variety)。

 音楽ムービーは映画産業とミュージシャンその両方に利得を与える。映画業界からすれば、スター・ブランドで観客を呼び込みやすいし、コンサートに参加しているような「体験」の提供にはヒットのポテンシャルがある。ミュージシャン側は、単純に映画によってリスナーを増やせる(『ボヘミアン・ラプソディ』公開によってQueenのアルバム販売は480%以上増えた)(参照:Billboard)。さらには、製作に関わることで大々的なPR戦略、言い換えれば「自らの神話の創造」を行える。この「神話創造」マーケティングにおいてビヨンセほど巧みな現役チャートヒッターはいない。『HOMECOMING』はまさに「己の人生を超える創造」を遺す物語だった。ビヨンセは、その大局的思考をブランド化することで唯一無二の成功もおさめたアーティストでありビジネスウーマンと言える。財産に関してすら次世代のさらにその先を見ているのだからあっぱれだ。

「私の孫の孫まで既にリッチ、たくさんの茶色い子どもたちがForbesに載るでしょうね」The Carters「BOSS」

■リアーナ:信頼の「包括性」ビューティー帝国

「ああ、すごい。Forbesってヘンよね。人が“リッチである状態”を表彰するようなものでしょ? 奇妙だって。慣れることはないだろうけど、まぁ、ナイスな名誉だよね」(参照:ELLE)

 Forbesブランドを誇ったビヨンセとは対極に、リアーナはそれを一笑に付す。そんなくだけた姿勢の彼女こそ「もっとも裕福な女性ミュージシャン」の地位ーー当人いわく奇妙でナイスな名誉ーーが約束された存在であり、今日先進国で働く女性の理想像かもしれない。

 リアーナに6億ドルもの富を授けたビジネスが「多様性・包括性」を基軸とするFentyブランド帝国だ。高級衣服や下着も手掛けているが、なかでも40種もの肌トーンのファンデーションを展開するFenty Beautyは「ビューティー業界の革命」と評されており、年間セールスは5億7千万ドルに及ぶ (参照:Forbes)。拡大傾向にあるビューティー・スキンケア産業は女性起業家にとってホットな領域だ(Forbes『もっとも裕福な1代目女性』リストの8分の1以上が参入)。彼女のパブリックイメージもFentyブランドに寄与している。リアーナは、ポップスターらしからぬ過激な作品やビーフを通して「社会の抑圧に囚われず自分の好きなことをやる女性」イメージを確立したスターなのだ。ゆえに、人々は、ときに同意できずともリアーナの言動、そしてFentyブランドの「包括」の信念を「マーケティングを超えた本心」と見なす。近年、北米で働く女性間では「男性の模範」から抜け出すかたちで自己を表現するパワフルなドレスが流行している。そんな時代の理想こそ、常識や抑圧にとらわれず「好きなこと」をやりつづけるリアーナというわけだ。今後とも、リアーナは「自分自身であること」で人々のビジネス、そして人生を鼓舞していくだろう(Fenty Beautyのきらめくハイライターとともに)。(辰巳JUNK)

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