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MIYAVIによるバーチャルプロジェクト、新たな音楽表現の意義 未来への希望つなぐプラットフォームとなるか

リアルサウンド

20/5/22(金) 6:00

 “サムライギタリスト”の愛称で世界的に親しまれるアーティスト、MIYAVIが今年5月、新たな試みとして、バーチャルプロジェクト・MIYAVI Virtualを始動させた。

MIYAVI『Holy Nights』

 同プロジェクトは、昨今の新型コロナ禍を受けてのもので、「どんな状況でも音楽を止めない」と宣言しているMIYAVIは、その第1弾として今年4月にリリースされた最新アルバム『Holy Nights』のタイトル曲にもなっている「Holy Nights」のMVを公開。全編USアニメーションチームによって制作されたMVは、楽曲の歌詞とアルバムの世界観をふんだんに盛り込んだ仕上がりが印象的な作品だ。

MIYAVI「Holy Nights」Music Video

 MVを手がけたのはディレクターのMr. iozoを筆頭にTristan Zammit、Rodrigo Silveira、そしてLA在住の日本人ビジュアルアーティストの粉川理沙といったUSを拠点とするクリエイターたちなのだが、Mr. iozoは、これまでにMIYAVIとは縁が深い<88rising>の看板アーティストの1人であるNikiのビジュアルワークを手がけたこともある人物であり、彼とのつながりを感じる人選もファンにとっては朗報だったことだろう。

 そんなMVでは、楽曲で歌われる〈まるで映画みたい〉という歌詞そのままに、アポカリプス的な終末感を漂わせた近未来の世界が舞台になっており、日本のSFアニメ『AKIRA』、『攻殻機動隊』を始め、ゲームソフトの『Deus Ex』、画家のH・R・ギーガーのイラスト、映画『トロン』のような古今東西のサイバーパンク的世界観がオマージュされている。

 しかし、現在の現実世界では、未知の疫病による数万人の死者、世界的なロックダウンの影響による世界恐慌の予兆など、これまではあくまで近未来SFの舞台設定のネタに過ぎなかったような話が、今やただのファンタジーだと言い切れないような状況になりつつある。

 そのためMVで描かれる荒廃した世界観は、コロナ禍で改めて浮き彫りになった経済格差、差別意識など現在の現実世界が抱える様々な負の要素のメタファーとして捉えることができる。そういった退っ引きならない現実がすでに世界に広がり出している今、我々はただ絶望するだけなのだろうか? その答えに対するMIYAVIの答えは「No」だ。

 MIYAVIは『Holy Nights』リリース時のインタビューで新型コロナ禍以降に起こる”争い”を踏まえて、「人と人が争わないようにするためにはどうしていけばいいのか? こういった状況で僕たちは何を歌うべきなのか? 音楽を通じて何を発信するべきなのか? それが問われている時代だと感じています」と語っているが(参考:音楽ナタリー)、今回のMIYAVI Virtualではまさにその答えをファンに示そうとするMIYAVIの姿勢が感じ取れるものになっている。

 たとえばMVを見てみよう。後半に見られるMIYAVIが敵のボスキャラのサイボーグと戦うシーンでは、途中から彼の持つ武器が拳銃から刀に変わり、敵を打ち負かすのだが、刀はMIYAVIのサムライギタリストのイメージを踏襲したものであり、その刀=音楽が現在の閉塞した世界を乗り越える武器となることが示されている。またMVの最後には、復興後に訪れる平和な世界が描かれているが、それは歌詞にある〈廻りめぐる 時代 日は昇り また笑う〉を彷彿とさせるものであり、困難な状況でも現実に向き合ってそれを乗り越えようとする限り、必ず解決する時が来ることが示されている。

 またMIYAVI Virtual始動時、MIYAVIは、「バーチャル(思考)がリアル(現実)になる」と前置きし、「コロナ以後の世界。全く変わってしまうかもしれない中で、僕たちはどう変わらず自分たちらしくいられるのか、どう変わらずにつながることができるのか」というコメントを発表している。

 この「バーチャル(思考)がリアル(現実)になる」という言葉は、映画やゲームのような“架空の世界”で描かれてきた終末的世界観が現実になりつつあるのがコロナ禍の現在であることを示す一方、MIYAVI Virtualのようなバーチャルコンテンツを通して“音楽でつながる”ことで、様々な不安やストレスを抱える中でも変わらず自分たちらしくいられるという希望を胸に抱かせてくれるものとしても捉えることができるだろう。その意味でMIYAVI Virtualとは非日常となってしまった現実世界に身を置く人々にとって、やがて戻ってくるはずの日常や、その先にあるポジティブな未来への希望をつなぐためのプラットフォームとして機能するものだと言えるのではないだろうか? 詳細の発表を控えている今後の展開にも引き続き注目していきたい。

■Jun Fukunaga
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター。DJと音楽制作も少々。
Twitter:@LadyCitizen69

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