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みうらじゅんの映画チラシ放談

『テスラ エジソンが恐れた男』 『AVA/エヴァ』

月2回連載

第58回

21/4/15(木)

『テスラ エジソンが恐れた男』

── 今回の1本目は『テスラ エジソンが恐れた男』です。

みうら 副題に“エジソンが恐れた男”とありますから、“テスラ”はライバルですよね?

── そうです。発明家のニコラ・テスラさんですね。

みうら 僕、よく知らないんですけど、チラシに“彼がいなければ世界は100年遅れていた”って書いてあるってことは、実はテスラさんが考えていたアイデアをエジソンが結構パクったってことなんですか? それともその発明、先にエジソンがマルシーを取ったとか? なんかアマデウスとサリエリの映画のようなニオイがしますけど。

── それは『アマデウス』ですね(笑)。

みうら あれはヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトにサリエリっていう作曲家のライバルがいて、才能はあるんだけど、モーツァルトみたいにキャラがパッとしてなかったもんで嫉妬するっていう話でしたからね。これもそうじゃないかと。

テスラさんは交流の電気を発明したって書いてありますね。今の家庭の電気は交流ですから、そこはテスラさんのおかげですよね。でもね、やはり発明王というと「エジソンはエラいひと、そんなの~常識」って歌が浮かびますよね。なぜテスラさんはちびまる子ちゃんで「エラいひと」って歌われなかったのか? そこにこの映画のテーマがあるのでは?

もしかするとテスラさんは、エジソンに比べてキャラが弱かったとか、酒を飲むとめんどくさかったとか、ケチだったとか、とにかく後世にエラい人とは言ってもらえないような面が多かったんじゃないかな。この映画でそれが暴かれるんだと思うんですけど、違います?

── いや、まだ観ていないので分からないんです(笑)。

みうら でも、天才っていうのは紙一重なところがあるわけですよね。何冊か偉人の伝記本も読みましたけど、後にそこには書かれてなかっためんどくさい部分が明らかになったりするわけでしょ。生活面ではいろいろと破綻していたとか。

彼が天才なのがちびまる子ちゃんに伝わらなかったのは、封印されたか、または天才というものをやめてしまったのか?ってことですよね。この人って教科書に載ってます?

── 教科書は分からないですけど、それなりに有名な方ではあります。『プレステージ』という映画ではデヴィッド・ボウイが演じていました。

みうら 『戦場のメリークリスマス』も『ラビリンス 魔王の迷宮』も演じてきたボウイですもの。それはおみそれしましたっ! このチラシの紹介だと、電力システム、ラジオ、ラジコン、噴水、電気モーター、点火プラグを発明したと書かれてますよね。それらってぜんぶエジソンが作ったようなイメージありますが。

エジソンって映画を発明したけど、特許を取得していて、使うとすぐに金払えってうるさいから、当時の映画人たちが西海岸まで逃げてハリウッドを作ったって、こないだテレビで紹介してましたよ。思えばジョージ・ルーカスが最初の『スター・ウォーズ』のときからグッズの権利を持っていたのは、エジソンに学んだんじゃないでしょうか?

でもニコラ・テスラさんは、きっと発明に集中したら周りが見えなくなるタイプだったんでしょう。いいマネージャーがついていたら良かったんでしょうけどね。

── チラシによると“この映画は催眠術を体験しているよう”らしいです。

みうら は? それはテスラさんが「あなたは権利を取らなくてもいい、取らなくてもいい」ってエジソンに催眠術をかけられるシーンがあるんじゃないですか?

でも、テスラさんは「みんなが便利になればいいじゃない。僕はただ発明をしているのが楽しいんだからぁー」って言うと思いますね。儲け主義は元々、好きじゃないから。

そもそもテスラさんの顔を知らないもんで、イーサン・ホークがテスラさんに似ているのかどうかも分からないんですが。

── (画像検索しながら)実際のテスラさんはこんな感じの人だったようです。

ニコラ・テスラさんはこんなお顔

みうら ああ、優しそうな人じゃないですか。エジソンはエラい人だけど、テスラさんはきっとイイ人ですよ。

── 今、顔だけで判断しました?(笑)。

みうら ですね(笑)。でも、あまり煩悩を感じない顔ですよ。浮世離れしてるというか。この人は絶対にカネカネカネ言わないですって。通帳も見ないと思いますし(笑)。

── テスラさんは詩が読めて、音楽や美術にも精通していたみたいです。

みうら やっぱり夢想家でもあるんですよ。きっと「大人は判ってくれない」って、86歳でお亡くなりになったみたいですけど、85歳までそう言ってたと思いますね。今こういう映画を観て、あらためて彼の人柄を見直そうという動きが、映画界にもあるんでしょう。

『AVA/エヴァ』

── 2作目は『AVA/エヴァ』ですね。

みうら 僕は、昔から、女の人がやたら強い映画が好きなんです。たぶん『アマゾネス』の影響が大きいと思うんですがね(笑)。ハル・ベリーの『キャットウーマン』も好きでしたし。この映画も明らかに女の人が大活躍しますよね。

── チラシには“空前絶後のハードキリングアクション”って書いてあるので、ムチャクチャ活躍するし、ムチャクチャ殺しそうですね。

みうら それは間違いないでしょう(笑)。

僕、平和で一番大事なことって、女の人の機嫌だと思うんです。男の勝手な都合でね、女の人の機嫌を損ねると、結局ロクなことがない。たぶんこの映画でも、男が彼女の機嫌を損ねるんでしょうね。僕も今までに随分、女の人の機嫌を損ねてきましたからね。最終的に反省するのが基本だってことは分かります。

男性の大統領や総理大臣も夫人と一緒に外遊するじゃないですか。大概、奥さんのその日の顔を見たら「これは家で機嫌損ねてんな」って分かることありません? 家で争いごとを起こしてる人が、世の中を平和にするなんて土台無理ですよ。奥さんの機嫌をよく損ねてる人は、国の代表とかになっちゃダメだと思うんですね。今後、有権者もニュース映像で飛行機のタラップから降りてくるときに注目して判断するべきだと思うんですよ。

── なんだか社会派な話になってきました(笑)。

みうら いやいや、機嫌の話ですよ、あくまで(笑)。男は強いとか弱いとか勝ち負けにやたらこだわるけど、女の人ってそこで世界を見てないですから。女の人たちもきっと「とりあえず私の機嫌を損ねたら、どんなことになるか分かってるわね!」っていつも思ってるんですよ。

でも、なかなか男はその忠告に気づかない。この映画でもたぶんマルコヴィッチもコリン・ファレルも、最終的にエヴァにボコボコにされて「ああ、またやっちゃったな」って思うんでしょうね。

どうです? このチラシを見てくださいよ。機嫌を損ねた男たちが反省の顔をしてズラリと並んでるでしょ?(笑)。だから本来、邦題は『エヴァとエヴァの機嫌を損ねた男たち』にした方が良かったんじゃないかと。

── それは分かりやすいです!

みうら 観終わって、やっぱ、そこは忘れちゃダメですよとクギをさしてくれるから、こういう映画は人気があると思うんですよね。

取材・文:村山章

(C)Nikola Productions, Inc. 2020
(C)2020 Eve Nevada, LLC.
Photo:AFLO

プロフィール

みうらじゅん

1958年生まれ。1980年に漫画家としてデビュー。イラストレーター、小説家、エッセイスト、ミュージシャン、仏像愛好家など様々な顔を持ち、“マイブーム”“ゆるキャラ”の名づけ親としても知られる。『みうらじゅんのゆるゆる映画劇場』『「ない仕事」の作り方』(ともに文春文庫)など著作も多数。

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