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のんの“新たな一面”を引き出した大九明子監督の演出術 『私をくいとめて』の裏側を語り合う

リアルサウンド

20/12/22(火) 10:00

 のんと林遣都が共演する映画『私をくいとめて』が12月18日より公開中だ。綿矢りさの原作小説を、『勝手にふるえてろ』に続き大九明子監督が再びメガホンを取り映画化した本作。脳内に相談役「A」を持つ、おひとりさまライフを満喫中の31歳・黒田みつ子は、年下の営業マン・多田くんに恋をしてしまったことから、20代の頃のように勇敢になれない自分に戸惑いながらも、一歩前へ踏み出そうとする。

 リアルサウンド映画部では、今回が初タッグとなったみつ子役ののんと大九監督にインタビューを行い、お互いの印象や現場でのやりとりについて語ってもらった。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

のん「私にとっても挑戦だなと思いました」

ーーのんさんと大九監督の組み合わせはかなり意外でした。みつ子役にのんさんというのはプロデューサーの方のアイデアだったそうですね。

大九明子(以下、大九):どういう人にみつ子を演じてもらったらいいかを全く考えず、先にシナリオを書き上げたんです。それから誰にみつ子を演じてもらうのがいいんだろうと考えていたら、プロデューサーがのんさんを提案してくれて、「うわ、ぴったり!」と。みつ子は会社や日々の暮らしの中のどこにでもいるような存在だと思うんです。のんさんは実際にお会いするとすごく輝いていますが、いくつか出演された作品を拝見していた中で、いざ映画に入ってしまえば、どこにでもいそうな普通の雰囲気を醸し出せると思っていたので、みつ子役がハマると思いました。自分が書き上げたシナリオにのんさんがぴったりだったことが大きかったですね。それと、これまでに見たことのないのんさんが見られるというワクワク感もありました。

ーー「こういう人に演じてもらえたら」というイメージもなかったんですか?

大九:それが全くなかったんです。ただひたすら楽しみながらシナリオが書けてしまったので。私の中で唯一決まっていたのは前野(朋哉)くんだけです。「前野くんのスケジュール早く抑えて!」って言っていたくらいでした(笑)。

ーー大九作品といえば前野さんですよね(笑)。のんさんは大九監督の作品をご覧になっていましたか?

のん:はい、拝見してました。女性のダメなところやズルいところなど全てをさらけ出して、しかもそれをすごくチャーミングに描いている。登場人物を愛おしく撮ることができる、すごく素敵な監督だなと思っていました。

ーーそんな大九監督の作品世界の中に入っていく気持ちはいかがでしたか? みつ子はのんさんが今まであまり演じてこられなかったようなタイプの役柄でしたが。

のん:そうですね。みつ子は、今まで私がやってきた役と比べると、より感情が揺さぶられているキャラクターです。人前では感情を抑えていますが、「A」と喋っているときや、1人になったときにドバーッと感情を激しく出す役だったので、ある意味、私にとっても挑戦だなと思いました。

大九:実際、のんさんは自分の中できっちりとみつ子を作り上げてくれました。演出行為としての微調整はもちろん行いましたが、私がイメージしていたみつ子と近かったです。ただ、どうしてもやってもらわなきゃいけなかったのが、31歳として、多田くんよりお姉さんであること。そこに関しては、のんさんがちょっとかわいらしくぴょんぴょんぴょん走ったりしちゃったときに、「もうちょっと肘を曲げて走ろうか」とかは言いました(笑)。

ーーそう、のんさんは現在27歳ですが、みつ子の設定は31歳。しかも実際は年上の林遣都さんが年下の設定だったんですよね。

のん:そこが難しかったんですよね。走り姿は本当に焦りました。そういう仕草とかがもともと子供っぽいところがあるので、お芝居をするときにもちょっと素が出ちゃって、「あ、すみません!」って感じでした(笑)。でも、林さんがすごくリアルに年下の多田くんとして返してくださるので、私もみつ子として“年上面”しやすくはありました。

ーーのんさんは撮影前や撮影中に、疑問に思ったことなどを大九監督に積極的に聞いていたそうですね。そのあたりのやりとりは具体的にどのようなものだったんでしょう?

大九:例えば、衣装合わせが終わった後に、「部屋着ってもっとこういうのだと思っていました」と言われて、自分にはその選択肢がなかったことに気づかされるというか。過去の作品では、このキャラクターはこういう家族構成で……というように、それぞれのキャラクターのバックグラウンドを書いて実際に演じてもらう俳優さんに渡していたりもしたんです。ただ、今回はあえてそれをしなかったので、のんさんに限らず、キャストの皆さんは何か気になることがあれば私に聞きに来てくれました。そうやって実際に質問してくれると、それまでは自分も言語化していなかったけど、答えているうちに自分の中でも理解が深まっていくことがあったので、一つひとつのやりとりが私にとってもすごく貴重でしたし、ありがたかったですね。

のん:衣装合わせもそうですが、台本や原作から読み解ける部分で疑問が出てくると、そのわからないところはなくすようにしているんです。現場で生まれてくるものや現場で発見することもたくさんあるんですけど、事前にある程度自分の中に馴染ませておかないと、いざ本番になったときに自由に動けなくて。走り方はちょっとできませんでしたが(笑)、この役だったらどう動くんだろうみたいなことは事前にきっちり考えて、常に本番でわからない部分がないようにすることは意識しています。

大九「自分がとにかく見たことのないものを見たい」

ーーみつ子と相談役「A」のやりとりは非常に独特ですよね。撮影はどのように行ったんですか?

大九:事前にプレスコ(先行してセリフを収録)をしたんです。撮影の前に2人に揃ってもらって、お芝居の演出もしながら会話劇として先に声を録りました。撮影時は、のんさんの声は現場では出さずに実際に演じてもらいながら、録音部がスピーカーを抱えながらAの声を出していました。

ーーそういうやり方だったんですね。結構珍しくないですか?

大九:ですよね。私もどうやろうかなというのはずっと考えていて。最初は「A」の役の方に現場に来てもらおうかとも思っていたんですけど、この人にやってもらおうと閃いてからは、来てもらわなくても大丈夫だろうと。彼のすごさはわかっていたので、収録する際に1回きちんと演出すればかたちになるだろうなと思ったんです。もちろんアフレコで変えた部分も何箇所かありますが。

のん:プレスコも楽しかったです。「A」の方は本当にいい声だなと思いました。声だけでもこんなに存在感があるんだなと。それがすごいなと思いました。「A」の声を上回るような低音の素敵な声を自分は出せるかなと思って、家で真似したりもしてみました(笑)。

ーーそこは対抗しなくても(笑)。あとはなんといっても多田くん役の林遣都さんとの共演ですよね。出演発表の際のコメントでは「肌が白くて羨ましかったです。 羨ましすぎて、いつも以上に念入りにお肌のお手入れをしてました」と述べられていましたが(笑)、実際に共演してみていかがでしたか?

のん:林さんとのお芝居はすごく楽しかったです。林さんの役へのアプローチが本当に素敵で。最初、林さんがプランを立ててきた演技に対して、監督が真逆の演出をされたんですよ。その後、林さんがすぐに組み立て直したお芝居もすごく素敵で、「こんな瞬時にできるの!?」と圧倒されちゃいました。それで私も負けられないなと燃えたのを覚えています。

大九:あれどのシーンだったっけ?

のん:ご飯をもらいに行くシーンです。

大九:そうだ! 多田くん初日のときだ。

のん:林さんはすごくハツラツとした、誰もがかわいがるような素敵な後輩みたいな感じで作ってこられたんですけど、監督は「表情に出さない感じで」とおっしゃっていました。

大九:そういえばそうでした。思ったよりも爽やかな感じだったので、そこは変えていただきました。

ーー今回ののんさんや林さんもそうなのですが、監督は役者さんの“新たな一面”を引き出すような演出が巧みですよね。

大九:ひとつあるのは、自分がとにかく見たことのないものを見たいんです。なので、林くんもこれまであまり見たことのない林くんを見てみたいし、のんさんも今まで見たことのないのんさんを見たかった。そういうことですかね。俳優さんは皆さん素晴らしい方ばかりなので、ちょっと探ってみて、「こっちもいいですけど、こっちはどうでしょう?」と提案して、新しいものをいただいているだけなんですけど。

のん:すごく面白かったです。自分の解釈と違う演出をしてくださったりすると、「みつ子はそういう人なんだ」と理解できる。私は林さんのように瞬時には対応できませんでしたが(笑)。自分では鉛筆で書いていたみつ子が、大九監督によってボールペンで書けるようになった。そんな感じで、頭の中でみつ子が濃くなっていったので、そのやり方は楽しかったです。あと、現場でものすごく記憶に残っているのが、監督の“動き”。監督が段取りで実際に動きをつけてくれるんですけど、そのときの監督の身のこなしが素晴らしくて。動ける人の動きなんです(笑)。

大九:それがわからない(笑)。前も言われたんですけど、“動ける人の動き”ってなんだろう(笑)。自分ではよくわかりませんね。

のん:私自身が結構とろいので、監督の動きを見て、自分にもできるかなと思って(笑)。これで盗めたら自分の財産になるなと思って、監督の動きをめちゃくちゃ観察していました。

ーー今回のんさんは久しぶりに実写映画で主役を演じられました。この『私をくいとめて』はのんさんにとっても大きな作品になったのではないでしょうか?

のん:そうですね。みつ子の主観で物語が進んでいくので、撮影期間は毎日現場に行っていましたし、みつ子のことをずっと考えていました。なので、いつもより役を掘り下げて考えていける気持ち良さを久しぶりに味わった気がします。演じているときは本当に必死だったので、それは今だからこそ言えることかもしれません。本当にたくさんの人に観ていただきたいという気持ちが強いです。今ののんはこんな感じですというのを、皆さんにぜひ目撃していただきたいです。

■公開情報
『私をくいとめて』
全国公開中
原作:綿矢りさ『私をくいとめて』(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
監督・脚本:大九明子
音楽:高野正樹
劇中歌:大滝詠一「君は天然色」(THE NIAGARA ENTERPRISES.)
出演:のん、林遣都、臼田あさ美、若林拓也、前野朋哉、山田真歩、片桐はいり、橋本愛
製作幹事・配給:日活
制作プロダクション:RIKIプロジェクト
企画協力:猿と蛇
(c)2020『私をくいとめて』製作委員会
公式サイト:kuitomete.jp
公式Twiter:@kuitometemovie

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