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没後十年記念 映画俳優 池部良

20/1/14(火)

『足にさわった女』(1/18、1/26、2/1上映)シネマヴェーラ渋谷 「没後十年記念 映画俳優 池部良」(1/18〜2/7)で上映。 若き日には映画会社を渡り歩いた市川崑の長いキャリアの中でも、今では観るのが困難なのが、1951〜54年にかけての東宝時代。日本映画ばなれしたスクリューボール・コメディのケッサクを連発していたのに、DVDにもならないのは映画会社が……と言ってしまえばそれまで。実際、代表作の1本である『足にさわった女』(1952)が今では上映プリントもなく、今回の特集では国立映画アーカイブ所蔵のフィルムを借りてこなければいけないのだから、そこらの事情は察することが出来よう。 池部良の刑事が、越路吹雪演じる因縁の美人スリと大阪→東京間の特急列車内で鉢合わせしたことから起きる追っかけが前半の見どころだが、列車の限定された空間を工夫したあの手この手が実に愉しい。同乗者となる越路の助手の伊藤雄之助や、作家の坂口安吾ならぬ坂々安古を怪演する山村聰といい、同時代の彼らの出演作を何本か観ていれば、本作の軽妙すぎる演技はちょっと信じがたく見えるかも。山村聰が風呂でゴキゲンに『こんな私じゃなかったに』を歌い上げる珍シーンなんて、他ではまず観られない。 この時代の市川映画の顔だった池部良だが、スラリと伸びた美脚を次々見せるタイトルバックで越路が景気よく歌う主題歌の作詞までも担当。その歌を「うるさい!」と池部が遮って鮮やかに物語へと入っていくところからして、市川との呼吸もぴったりの蜜月期であることが伝わる。 ところでこの作品は、大正15年に阿部豊監督、岡田時彦、梅村蓉子の主演で作られた『足にさはった女』のリメイク――ではあるもののフィルムは現存しておらず、市川崑も観ていない。原作から女スリが敵討ちに行くという設定をもらってきただけなので、それ以外は和田夏十のオリジナル。公開時のパンフレットに和田は「学生時代に観たフランク・キャプラの喜劇の颯爽さ、痛快さは今だに忘れられません。私にはとてもあんな見事なシナリオは書けません。(略)結局私一流の物語を無理矢理にこしらへあげたのがこの『足にさわった女』です」と記しているが、映画から受ける印象はキャプラというより、『赤ちゃん教育』や『フィラデルフィア物語』の狂騒に近い。 なお、1960年にはテレビと映画でリメイクされており、前者は市川自身の演出で岸惠子とフランキー堺主演、後者は増村保造の監督で京マチ子とハナ肇の主演。さらには80年代にも松坂慶子で4度目の映画化が松竹で企画され、新幹線を舞台にした脚本も作られていたという。こちらは市川が再び監督する予定だったというから、これは観てみたかった。

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