Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

峯田和伸(銀杏BOYZ)のどうたらこうたら

ある怪談DVDをめぐり、怪奇現象が続く話・その⑤

毎週連載

第156回

5週にわたって話をしてきた怪談DVDによる怪奇現象の話もいよいよ今週で終わりです。

この怪談DVDはいろいろあって2巡した話を先週したけど、これは後半に話すとして、その前に2人目のYくんにまつわる想定外の事件から話しますね。

Yくんは、当初、DVDを嫁と一緒に観たらしい。でも、嫁の身には何も変なことは起きず、Yくんの身にだけ怪奇現象が起きたという。それを嫁に話したところ、「なんか怖いから一度、お祓いに行こう」ということになったらしく、うちのマネージャーの洋介や、その友達にはいっさい話をせず、独断で地元の神社にお祓いに行ったんだって。

でも、ああいうところで具体的に「こんなことがあって怖いので、お祓いしてください」なんて言わないじゃん。ただ、なんか縁起の悪いことが続くからっていうことで1万円くらい払ってお祓いをしてもらい護摩札をもらって帰ってきたんだって。

この間、僕も洋介もこんな話は聞いてなかったんだけど、Yくんはもらってきた護摩札を、部屋の南だか北だか、しかるべき場所の壁に貼ってたんだって。

その翌日、Yくんは仕事を終えて部屋に帰ってきたんだけど、嫁はまだ帰っていなくて、パッと電気をつけたらしいんだけど、すると護摩札に山奥でしか見ないような物凄いデカい蜘蛛がビタッと張り付いてんだって。お祓いに行った翌日だよ、これ。

慌ててたYくんは、よせばいいのに護摩札ごと殺虫剤をかけて駆除したらしい。すごい罰当たりだけど、結果的に翌日からも変なことが続くようになったんだって。

Yくんの家は最寄り駅から徒歩15分くらいらしいんだけど、毎日帰る際に、必ず誰かが自分の後をついてくる気配を感じるんだって。商店街はコロナ禍で人影も少ないし、余計に怖くなって早足で帰るんだけど、角を曲がったときに、パッと振り返ると一瞬、あとをついてくる人の姿が見えるんだけど、それがやっぱり髪が超長い女の人なんだって。

洋介越しにこのYくんの話を聞いたんだけどさ、そもそもお祓いに行くのが良くないと僕は思った。だってさ、お化けにとってみれば、そんなお祓い、挑発行為でしかないわけじゃん。結果的にYくんは、毎日あとをつけられてノイローゼみたいになり、仕事もしばらく休んだりしたらしい。

一方、前回話したDVDの2周目なんだけど、当初はお化けをいっさい信じていなかったWくんに、ことのあらましを伝えると俄然興味を示し始めて、「マジで! 俺、お化け見たい。全然怖くない。俺がお化けとコミュニケーションを取る」と言い出した。

結果的に、Wくんのところに2回目のDVDが届いたんだけど、何日目かで、玄関のドアの前に誰かの足音がするようになったんだって。そこで、余裕のWくんは「いいよー。入って!」とか声をかけるんだけど、何も起きない。そんなことが続いていたんだけど、ある日のこと。

いつものように玄関のドアの向こうで足音が止まった際、いきなりドアの向こうから、すごい強い圧を感じて初めて「怖い。これはヤバい」と思ったんだって。急に震えが止まらなくなって、怖いから布団に入ったんだけど、今度は金縛りが起きて。さらに真っ暗の部屋ん中で、女の人の声で「もうやめろ・もうやめろ」って声が聞こえるという。それがまた怖くて、WくんはDVDを持ってすぐにチャリで20分くらい飛ばして、多摩川にDVDを捨てちゃったんだって。

それを聞いた洋介がブチ切れて。「実証している途中でなんで捨てるんだ」と。でも、Wくんにしたらもともと信用していなかったからこそ、余計におかしくなっちゃったみたいでさ、そのままこのDVDの怪奇現象の話は立ち消えになっちゃったんだよ。

ただ、洋介によれば、同じ怪談のDVDを買い直して、同じように自分が観て、さらにはYくんにも送ったらしいけど、今度は何も起きなかったらしい。つまり、DVDの作品自体になんらかの呪いがあったわけではなく、「物」事態に呪いがあったみたいなんだよね、これ。ちなみにDVDの原作の中にも「ミエコ」(第153話参照)という名前は出てこない。

その「物」自体が多摩川に流れていったことで、この怪奇現象の話の強度はだいぶ弱くなっちゃったけど、でも恐ろしいよね、マジで。だって嘘のような本当に起きた話だよ、これ。2021年の夏に起きた不思議すぎる怪奇現象でした。

多摩川に流れていった怪談DVD、どこに行ったんでしょうね

構成・文:松田義人(deco)

プロフィール

峯田 和伸

1977年、山形県生まれ。銀杏BOYZ・ボーカル/ギター。2003年に銀杏BOYZを結成し、作品リリース、ライブなどを行っていたが、2014年、峯田以外の3名のメンバーがバンド脱退。以降、峯田1人で銀杏BOYZを名乗り、サポートメンバーを従えバンドを続行。俳優としての活動も行い、これまでに数多くの映画、テレビドラマなどに出演している。


アプリで読む