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佐藤浩市×石田ゆり子×西島秀俊が語る、『サイレント・トーキョー』と日本映画界の現状

リアルサウンド

20/12/17(木) 8:00

 映画『サイレント・トーキョー』が12月4日より公開中だ。『アンフェア』シリーズの秦建日子が、ジョン・レノンの名曲「Happy X-mas (War Is Over)」にインスパイアされ執筆した小説を映画化した本作は、クリスマスの東京を突如襲った“連続爆破テロ事件”に翻弄される国家と人々の姿を描いたクライムサスペンス。

 今回リアルサウンド映画部では、東京で起きた連続爆破テロの容疑者・朝比奈仁を演じた佐藤浩市、買い物の途中で事件に巻き込まれる主婦・山口アイコを演じた石田ゆり子、一連の事件を独自に追う渋谷署刑事課警部補の世田志乃夫役の西島秀俊の3人にインタビュー。圧倒的なスケールで描かれる本作での役作りや、今年俳優生活40周年を迎えた“俳優・佐藤浩市”について語ってもらった。【インタビューの最後には、サイン入りポスタープレゼント企画あり】

佐藤「映画を観て思ったのは、『思ったより難しいぞ』ということ」

ーー今回の『サイレント・トーキョー』は昨今の日本映画ではなかなか珍しい、スケールの大きな作品ですね。

佐藤浩市(以下、佐藤):いわゆる“日本映画”というものは、個人の背景的なことにフォーカスを当てて、登場人物の心情を丁寧に追っていく作品がどうしても多くなってしまう。ただ、今回の『サイレント・トーキョー』は、“99分”という短尺で見せるため、そういったことを逆に全部排斥して、そうではないところで見せようとした作品だと思います。そういう波多野(貴文)さんの今回のやり方が、昨今の日本映画ではわりと新しかったのではないかなと。僕が“主演”と言っても、くじ引きで決まっちゃったようなものですし(笑)。大きな言い方をすれば、今回は群像劇で、主役なのは渋谷だったりCGだったり、アクションだったりしますから。

ーーいまおっしゃったように“99分”という尺はこの規模の映画ではかなり短いですよね。

佐藤:僕なんかは本を読んだ時点でどれくらいの尺になるかすぐに計算しちゃうタイプなんです。今回は話が話だから2時間切れればいいのかなと思っていたら、実際は99分で、思ったよりも短かった。なぜかというと、朝比奈だったりアイコだったり世田のように、全ての登場人物の過去や背景をあえて省いているから。そういうことに特化した作品で、その見せ方を選択した波多野さんの覚悟は相当大きかったと思います。実際に映画を観て思ったのは、「思ったより難しいぞ」ということでした。

ーーそれはどういう意味でしょうか?

佐藤:ストーリーなり人物なり、いろんなものの合図を観客の方が拾っていくには意外と難しいかなと。緊張感を緩めて観ることができないのではないかなと思いましたね。集中して観なければいけない。だから、監督がそちらに勝負をかけたということだと思うんです。

ーー石田さんと西島さんは、この映画はどのような作品になると思っていましたか?

石田ゆり子(以下、石田):とても壮大な企画だなと。私はこういうタイプの作品に出るのが初めてなんです。しかも重要な役だったので、正直、私がこの役でいいのかなと思いました。でも、佐藤さんと西島さんが出られると知っていたので、絶対に面白い作品になるだろうなという確信はありました。あと、一体この原作をどうやって映画化するんだろうとは思いました。でも波多野組ですし、だからこその波多野組というか。逆に波多野さんがどう映像化するのかにとても興味がありました。

西島秀俊(以下、西島):僕もお二人が出るということが1番大きな出演の動機でした。あと、波多野監督とは以前『オズランド 笑顔の魔法おしえます。』でご一緒していて。前回はコメディだったんですけど、今回は波多野さんの得意とするジャンル、本領が発揮されるような作品だと思って、どういう現場になるのかなという興味もありつつ、参加させていただきました。

石田「とにかく“普通っぽさ”を意識していました」

ーー実際に撮影を経て、完成した作品を観ていかがでしたか?

西島:自分が考えていたよりも遥かに“ノンストップの99分”という感じでした。事件が起きてからラストまで、一気に突っ走っていく映画になったなと。それと、クリスマスイヴの爆発のシーンなど自分が関わっているシーンも、撮影の時点では正直どうなるかが全然分からなくて。完成した作品を観ると、実際は渋谷では撮っていないのに驚くぐらい渋谷だったので、すごく不思議な感覚でした。最終的に、自分のイメージとは全く違う映画になっているなと思いました。

石田:あのシーンはすごい撮影だったと噂には聞いていましたが、実際に完成した作品を観て、本当に大変だったんだなと思いました。出来上がって初めて全体像が分かるような作品でもあるので、私もほぼ観客目線で観ていました。

ーー先ほど佐藤さんが「全ての登場人物の過去や背景をあえて省いている」とおっしゃいましたが、演じる立場として、そういった過去や背景が描かれないのは役作り的にどうなんでしょう?

佐藤:正直言って、描いてくれた方が僕らは楽なんです。それはそうですよね、語ってくれるわけだから。でも、今回はそういったものがあまり克明には描かれないかわりに、映画全体にいい意味での“ドライさ”が生まれたと思うんです。僕らが言うのはおこがましいんですが、観てくださる方がそういった心情的なものをうまく引っ張り出してくれたらうれしいですね。

西島:原作にはしっかりと過去のことが書いてありますしね。それと今回、準備稿の段階ではシーンとしても存在していました。僕らは当然それを撮るつもりで考えていたので、完成した作品の中には残っていませんが、イメージとしてはそれぞれの過去や背景、キャラクターの一貫性みたいなものは持ってやっていました。なので、もしかしたら観ている方からしたら「なんでだ?」と思うようなことがあるかもしれませんが、僕の中では全部しっかりと理由があった上で行動しているイメージでした。

石田:もちろん過去や背景などもあるのですが、私はとにかく“普通っぽさ”を意識していました。私はいつも完成したものを観ると、常に「ああすればよかった」すぐに思ってしまって反省することもあるんですが、今回はそれとは別に、自分が思っている感じとはまた違った見え方になっているのかなとも思いました。

ーー皆さんの共演シーンは終盤の2シーン程度だったと思いますが、西島さん、石田さんから見た主演の佐藤さんの現場でのあり方はどうでしたか?

西島:撮影に入る前にセリフの微妙なニュアンスを監督と丁寧に検証されていたのが印象的でした。あと、僕たち後輩をリラックスさせてくださったり、そのシーンに緊張感を持たせてくださったり、そういう演技だけではない部分、スタートする前段階の場の作り方などは、本当に勉強になりますという感じで。そういう姿をもっと見ていたいと思いましたし、今回は本当に共演シーンが少なかったので、次はもっとたくさん共演シーンがある作品でご一緒したいなと思いました(笑)。

石田:浩市さんはいつも全力でそのシーンそのシーンを深く突き詰められていて。私からしたら、その姿を見ていつも気が引き締まる思いです。「私もしっかりしなきゃ」といつも思わせてくださる存在ですね。

佐藤:いやいや、そんなことは……。

西島「浩市さんは、日本の映画界をずっと引っ張ってきた方」

ーー佐藤さんは2020年に俳優40周年を迎えられましたが、『サイレント・トーキョー』はそのラストを飾る作品になります。石田さんと西島さんから見た“俳優・佐藤浩市”という存在について教えてください。

西島:浩市さんは、僕が一視聴者として見ている頃から日本の映画界をずっと引っ張ってきた方なので、逆にどういう思いでいらっしゃるのかにすごく興味があります。きっと、“俳優として”というよりも、もっと広い視野で業界全体を見ていらっしゃっていて、日本映画というものを考えていらっしゃるのではないかなと。だからこれからもずっと支えてください(笑)。どんどん若手も出てきて、いろいろ大変な状況もあるので、どんどん背負うものは重くなっていくとは思うんですけど、僕からすると、やっぱり浩市さんにはそういうものを背負っていただいて、ますます突き進んでいっていただきたいと思いますね。

佐藤:いやいや(笑)。恥ずかしいな。

ーー(笑)。石田さんはどうですか?

石田:ご本人を前にして言うのは難しいですね(笑)。

佐藤:じゃあ俺を中井貴一だと思って言ってよ。そしたらもっと滑らかに言葉が出てくるから(笑)。

石田:(笑)。でも、今回のように浩市さんとご一緒できることだけで喜びですし、光栄だなと思うぐらい偉大な先輩です。浩市さんや貴一さんの世代の先輩って、私にとっては“憧れの世代”というか、とても大きな存在で。私は18歳からこのお仕事をやっているので、もう30年ぐらいになるんですけど、浩市さんたちはいつも私にとって目標というか、上の方でキラキラと輝いている。それがすごく喜びであり、ありがたいことなので、ずっとそうであってほしいです。だからどうか長生きしてください(笑)。

佐藤:僕も中井も思ってることはひとつで。実は「『またあのじじいセリフ間違えたよ』って言われないように頑張ろうな」って言ってるんだよ(笑)。

一同:(笑)

ーー先ほど西島さんがおっしゃられていたような、“日本映画を背負っていく”ということは意識していらっしゃるんでしょうか?

佐藤:いや、そんな意識は全くないです。“日本映画を背負っていく”という意識があると、“観客を裏切っちゃいけない”っていう気持ちがまず絶対に頭に出てくる。でも僕は、逆に観客を裏切り続けたいんです。「佐藤浩市がこんな役やるの?」という役で、どこか観客を裏切りたいんですよ。だから、振り幅が多いと言ってもらえるような存在でありたいなと。日本映画を背負うとなると、自分がやっていくことが限られすぎてしまうと思うので。

ーーとはいえ、意識せずとも下の若い世代が佐藤さんから受け取っているものもたくさんあるような気がします。

佐藤:まあ、ゆり子さんも西島も若い世代ではないですからね。

石田・西島:(笑)。

佐藤:彼らのような中堅、ベテランの人たちに言うことはないですが、もっと若い世代には、「氷の薄さを確認するような仕事の仕方はするな」と言いたい。それはつまり、氷が割れてハマってもいいじゃないかということ。2人の場合はもう確立しているからそれは当てはまらないけど、もっと下の世代の役者にはそういうことを言いたいですね。

■公開情報
『サイレント・トーキョー』
全国公開中
出演:佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊、中村倫也、広瀬アリス、井之脇海、勝地涼ほか
原作:秦建日子『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』(河出文庫刊)
監督:波多野貴文
脚本:山浦雅大
エンディングソング:Awich「Happy X-mas (War Is Over)」
配給:東映
(c)2020 Silent Tokyo Film Partners
公式サイト:silent-tokyo.com
公式Twitter:@SilentTokyo2020
公式Instagram:@silent_tokyo2020

▼『サイレント・トーキョー』サイン入りポスター プレゼント▼

『サイレント・トーキョー』佐藤浩市×石田ゆり子×西島秀俊のサイン入りポスターを1名様にプレゼント。応募要項は以下のとおり。

【応募方法】
リアルサウンド映画部の公式Twitterをフォロー&該当ツイートをRT、もしくはリアルサウンドの公式Instagramをフォロー&該当投稿をいいねしていただいた方の中からプレゼントいたします。当選者の方には、リアルサウンド映画部の公式Twitterアカウント、もしくは公式InstagramアカウントよりDMをお送りさせていただきます。

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