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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

Klein、Kindness、Byron The Aquarius……小野島大が選ぶエレクトロニックな新譜9選

リアルサウンド

19/9/22(日) 8:00

  まずはなんといってもロンドンの鬼才クライン(Klein)の3年ぶりの2作目『Lifetime』(ijn inc.)が圧倒的に美しい。現時点でのエクスペリメンタルR&Bの最高峰です。サイケデリックな音の粒子が飛び交うような目まぐるしくドープなサウンドコラージュと、根底にスピリチュアルなアフロブラックネスのグルーヴを強烈に感じさせる世界観は、クラクラするほど刺激的で他に比べるものがないほどの鮮烈な個性です。今年度のベストアルバムの1枚と言っていい大傑作の誕生。Bandcampは動画が2本ついてきて、44.1kHz/24bitのハイレゾが選べます。ハイレゾは音の厚みとエネルギーがストリーミングとはまるで違う感じ。(bandcampからの試聴はこちら

 活動20年目を迎えたアメリカの電子音楽ユニット、テレフォン・テル・アヴィヴ(Telefon Tel Aviv)の『Dreams Are Not Enough』(Ghostly International/PLANCHA)。メンバーの1人、チャールズ・クーパーが2009年に急逝してヨシュア・ユーステスのソロプロジェクトとなってから初のアルバムで、なんと10年ぶりとなる通算4作目です。以前のようなメランコリックで叙情的なエレクトロニカに加え、ノイジーでゴシックなインダストリアル色も加わり、ダークでエモーショナルでありながら、透明なリリシズムをも漂わせる素晴らしい出来となっています。従来のファンも納得させながら、チャールズの死と向き合ったヨシュアの葛藤と内省もくっきりと刻まれた見事な作品です。9月27日発売。(作品詳細はこちら

Telefon Tel Aviv – standing at the bottom of the ocean;

  英国の鬼才、カインドネス(Kindness)ことアダム・ベインブリッジの5年ぶり3作目が『Something Like A War』(Female Energy/Beatink)。5年ぶりといっても、その間ソランジュやBlood Orange、ロビンなどのプロデュースに参加したり、映像作家としてグリズリー・ベアなどのMVを手がけるなど多様な活動で、むしろ以前より注目度が高まっている中での一作です。以前よりすべての面でグレードアップしたことが実感できる見事な出来映え。多彩な曲調とゲストを見事に消化して、最高度に洗練されたモダンエレクトロニックR&Bを展開しています。(作品詳細はこちら

Kindness – Lost Without feat. Seinabo Sey (AUDIO VERSION)
Kindness – Hard To Believe (feat. Jazmine Sullivan)
Kindness – Raise Up (Single Version)

 英国出身ベルリン在住のDJ/プロデューサーのバーカー(Barker)ことサム・バーカーの4年ぶり2作目が『Utility』(Ostgut Ton/OCTAVE-LAB)。トランシーで流麗で洗練されたテック〜ミニマルハウスで、美しいメロディとクールなテクスチャー、疾走感のあるダンサブルなリズムが見事に融合した快楽度の高い作品に仕上がっています。テクノ〜ハウスのアルバム作品としては久々に聴き応えのある傑作です。(bandcampからの試聴はこちら

Utility

 パリの作曲家/プロデューサーのダヴィッド・シャルマン(David Chalmin)のアルバム『La Terre Invisible』(Ici D’Ailleurs)。プロデューサー/エンジニアとしてThe Nationalなどを手がけ、ミュージシャンとしてはポストクラシカルやエクスペリメンタルな電子音楽の分野で活躍してきた人です。これがソロとしては1stアルバム。メロディックで叙情的なアンビエント〜ディープ〜テックハウスで、非常に洗練された上品で完成度の高い作品に仕上がっています。

DAVID CHALMIN – Matière Noire
Images nocturnes

 ノルウェーのシンガーソングライター、ジェニー・ヴァル(Jenny Hval)の3年ぶり7枚目のアルバム『The Practice of Love』(Sacred Bones Records/Inpartment)。息が詰まりそうなダークでヘヴィな前作から一転して、柔らかく温かい光が差し込むような優しく広がりのあるアヴァンアートポップを展開しています。この人らしく奇妙でねじれた世界ですが、この人にしては非常に聴きやすくとっつきやすくもある。懐の深い包み込むようなサウンドが非常に魅力的な佳作です。(作品詳細はこちら

Jenny Hval – Accident (Official Music Video)
Jenny Hval – Ashes to Ashes (Official Audio)

 Flying Lotus『Los Angels』のプロデュースに抜擢され注目を集め、セオ・パリッシュやFloating Pointsともコラボしてきたアトランタのキーボード奏者、バイロン・ジ・アクエリアス(Byron The Aquarius)の1stアルバムが『Astral Travelling』 (MUTUAL INTENTIONS)。黒光りする激渋なディープハウス〜エレクトロニックソウルは、決して流暢とは言えないゴツゴツしたボーカルも含め、とても無骨で人間的です。 

Universal Love
Love Is 4 U

 UKジャングル〜ドラムンベースのレジェンド、4 Heroのディーゴ(Dego)の3枚目のソロアルバムが『Too Much』(2000 Black /P-VINE)。女性ボーカルをフィーチャーしたネオソウル風の歌モノから、彼らしい変則的なブレイクビーツまで、ファンク、ジャズ、2ステップなどを横断する手練れの技はさすがに英国ダンスミュージック史上最高度に洗練された音楽を作り続けてきたベテランならでは。昔のような切れ味はありませんが、そのぶん大人の余裕が感じられる佳作です。なおCDリリースは日本のみだそう。(作品詳細はこちらbandcampからの試聴はこちら

 最後に日本人クリエイターの作品をひとつ。仙台を拠点に活動する電子音楽家ケイ・サトウ(Kei Sato)の3年ぶり2作目が『Constellation Journeys』(PROGRESSIVE FOrM)。繊細で手つきで編み込まれた電子音の煌めきがとてもロマンティックで映像的なエレクトロニカ。いいオーディオで部屋の灯りを暗くして、想像力を豊かにして聴きたい美しい作品です。

■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebookTwitter

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