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SHE’Sのライブから感じた清々しいほどの潔さ 初心に戻り音楽で“一つ”になった渋谷クアトロ公演

リアルサウンド

18/12/4(火) 18:00

 「これからも変わらないけど、このライブから変わっていくんやろな」ーー2016年3月14日、渋谷CLUB QUATTROにて行われた『SHE’S ONEMAN TOUR FINAL「She’ll be fine -chapter.0」』ツアーファイナル公演。メジャーデビューを発表した本編最後のMCで、井上竜馬(Vo/Pf)はこう口にしていた。核となる部分は変わらずに、しかし、変化を求めて音楽を作り続けていくと誓ったあの日。あれからおよそ2年半が経った2018年11月29日、SHE’Sは再び渋谷CLUB QUATTROのステージに立った。『SHE’S Autumn Tour 2018 “The One”』と名付けられたこの公演は、そんな思い出深い会場で今一度初心に戻り、音楽で“一つ”になろうという思いから企画されたライブだった。

(関連:SHE’S、シングル『歓びの陽』でより洗練された音楽性 進化続けるバンドの“今”のモードを分析

 いわゆるリリースに伴うツアーとは異なり、様々な作品の収録曲が並んだこの日のセットリスト。11月14日にリリースされたばかりの『The Everglow』を含めシングル4枚、ミニアルバム1枚、フルアルバム2枚と、メジャーデビュー以降ハイペースで作品を発表してきたSHE’S。ピアノの旋律をいかしたメロディの美しさや心地よいバンドのグルーヴ、心に染み渡るような歌声はどの曲にも共通する要素として存在するが、ロック色が強く出ているものもあれば、ストリングスの音色が際立つもの、エレクトロに寄ったものなど、様々なアレンジの楽曲が生み出されてきた。

 どんな自分でも受け入れてほしいと思い、それを知らずのうちに押し付けてしまうのが世の常である。しかし、今のSHE’Sにそんな堅苦しさはない。リスナーが気分によって聞きたい曲を選んで聞くのと同じように、バンドもより良い表現を目指して、その時に鳴らしたい、届けたい音楽を奏でる。人によってはあまり好みではない曲もあるかもしれない。しかし、それでもまた、気に入った曲があれば聞いてくれればいい。ライブも自分たちは堂々と自信をもって素晴らしい曲を届け続けるのみ。あなたは会いたいときに会いにきてくれればいいーーそんな清々しいほどの潔さを端々から感じ取ることができた。それと同時に、バンドが今とてもいい状態であることが表情や演奏から伝わってくる。服部栞汰(Gt)のギターヒーローとしての見せ場はもちろん、広瀬臣吾(Ba)と木村雅人(Dr)のプレイも躍動し、会場全体が高揚感に包まれていく。

 そんないきいきとしたムードが伝播して良い空気が作り出されたように、SHE’Sのライブは音楽を通して感情を共有する場でもある。今回、「歓びの陽」「Un-science」「Upside Down」「White」といった曲でそれを改めて強く感じた。一緒に笑ったり歌ったり泣いたり……みんなが素直になれる場所、家のような場所でありたいと井上は語る。そして、SHE’Sにとってはライブハウスこそがそのような場所なのだ、と。

 今のライブでは、2年前にはなかった「Freedom」「Over You」のような曲でも盛り上がりや一体感が生まれている。その姿こそが、確実にバンドが歩みを進めている証だ。活発な音楽制作と並行して、全国ワンマンツアーやホールツアーなどを経験、フェスなどの音楽イベントにも多数出演し、順調に自分たちの音楽を届ける人たちを増やしているSHE’S。その中で育まれてきた新たなアンセムが、始まりの地に鳴り響いたのかと思うとじつに感慨深い。

 この日のライブを経て、来年2月6日には3rdアルバム『Now & Then』をリリースすることが発表された。“今とあの時”というような意味を込めたというアルバムには、SHE’Sの変化した部分、変わらない部分、その両面が詰め込まれているのだという。それはまさに、この日のライブで見た彼らの姿に通ずるものがある。そう考えると、俄然アルバムの到着が待ち遠しい。

 2年前と同様、この日のライブ本編も「遠くまで」「Curtain Call」の2曲の流れで締められた。井上が「ここにいるすべてのあなたとこの先もずっと歩んでいきたい」と力強く語っていたように、SHE’Sはこれからも目の前にいる“あなた”を幸せにするために、“あなた”にむけて音楽を作り届けていくのだろう。それもまた、バンドの核にある変わらない部分であるように。(久蔵千恵)

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