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「狂言劇場」が開幕、野村萬斎「“読後感”のようなものを感じてもらえたら」

ナタリー

「狂言劇場 その九」Bプログラム「鮎」より。(撮影:政川慎治)

「狂言劇場 その九」が、6月18日に東京・世田谷パブリックシアターで開幕した。

「狂言劇場」は「“舞台芸術=パフォーミングアーツ”としての能・狂言」というコンセプトで、2004年にスタートしたシリーズだ。今回の第9弾では、狂言劇場には初登場となる古典狂言「武悪」「舟渡聟」のほか、現代狂言である「法螺侍」「鮎」を、新演出・新配役にて上演。Aプログラムで「武悪」「法螺侍」、Bプログラムで「舟渡聟」「鮎」が披露される。

総合演出を手がける野村萬斎は各作品についてコメントを発表。池澤夏樹が作劇を務めた「鮎」の上演には「コロナ禍の現在、都会はある意味抑圧された場所、抑圧されればされるほど魅力的に感じる『毒』のような場所と捉え、非常に複雑な我々の現状を背負いながら、いま『鮎』を上演する意義を感じています。『読後感』のようなものを感じてもらえたなら、現代劇の劇場での狂言の在り方として、一つの手ごたえになると思っています」と語った。

公演は6月27日まで。26日には終演後にポストトークが行われ、12:00開演回では萬斎、野村太一郎、高野和憲、中村修一、内藤連、野村裕基が登壇。17:00開演回には萬斎、石田幸雄、深田博治、裕基が出席し、手話通訳も用意されている。なお萬斎からのコメント全文は下記の通りだ。

野村萬斎コメント

Aプログラム

「武悪」は劇場で上演したことで、作品のもつドラマ性がよりはっきりしたのではないでしょうか。一人一人のキャラクターの浮き上がり方や対峙する役者の緊張感が際立ち、よりスリリングな人間ドラマとなりました。常々ドラマとは「生きることを考えること」だと言っていますが、今回の舞台セットを含めた演出でも、「生と死」「生の地続きに死があること」が見えてくるのではないかと思います。

「法螺侍」は(洞田助右衛門は野村万作から野村萬斎へ、太郎冠者は野村萬斎から野村裕基へと)代替わりして、パワフルな作品へと“アップデート”しました。シェイクスピアと狂言のもつ古典的な手法はそのままでも、劇場で演じることで現代性を獲得するという不思議さは、まさに役者によって作品がアップデートされるからだと実感しています。新旧の時空の超え方と東西の文化の越え方を是非目撃していただきたいです。

Bプログラム

「舟渡聟」は狂言の名作ですが、舞台後方に琵琶湖の風景を出現させたことで、雄大な世界の中で頑張って生きていく人間を描きました。この作品では最年長(野村万作・90歳)と最年少(野村裕基・21歳)が船頭と聟を演じていますので、今回の「狂言三代」ならではの面白みを感じていただければと思います。

「鮎」は、劇場という現代的な空間へ移ったことで、原作の小説から感じた「都会と田舎論」を、より具体的且つ象徴的に描くことができ、これもある種の“アップデート”ができたのではないかと思います。狂言の衣装を着て世田谷パブリックシアターという現代の劇場に立つことで、古典と現代が地続きになっていることを自分でも感じることができました。

コロナ禍の現在、都会はある意味抑圧された場所、抑圧されればされるほど魅力的に感じる「毒」のような場所と捉え、非常に複雑な我々の現状を背負いながら、いま「鮎」を上演する意義を感じています。「読後感」のようなものを感じてもらえたなら、現代劇の劇場での狂言の在り方として、一つの手ごたえになると思っています。

「狂言劇場 その九『武悪』『法螺侍』 / 『舟渡聟』『鮎』」

2021年6月18日(金)~27日(日)
東京都 世田谷パブリックシアター

総合演出:野村萬斎

Aプログラム「武悪」「法螺侍」

「武悪」

出演
武悪:野村万作
主:石田幸雄
太郎冠者:野村太一郎

「法螺侍」

原作:ウィリアム・シェイクスピア「ウィンザーの陽気な女房たち」
作:高橋康也
演出:野村万作

出演
洞田助右衛門:野村萬斎

太郎冠者:野村裕基
次郎冠者:中村修一
お松:高野和憲
お竹:内藤連
焼兵衛:深田博治

Bプログラム「舟渡聟」「鮎」

「舟渡聟」

出演
船頭・舅:野村万作
聟:野村裕基

姑:野村太一郎(19日)、岡聡史(25日)、石田淡朗(26日)

「鮎」

作:池澤夏樹
演出・補綴:野村萬斎

出演
小吉:野村萬斎
才助:石田幸雄

大鮎:深田博治
小鮎:月崎晴夫、高野和憲、中村修一、内藤連、飯田豪 ほか

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