Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

高城れに、『彼女が成仏できない理由』で見せる“演技派女優”の顔 ももクロとは違う魅力を発揮

リアルサウンド

20/10/3(土) 10:00

 4人組アイドルグループ「ももいろクローバーZ」の高城れにが、現在NHK総合の「よるドラ」枠で放送されている『彼女が成仏できない理由』で、ソロでドラマ初主演(森崎ウィンとのW主演)を果たし、アイドルの顔とは違う女優としての新たな魅力を発揮している。

 『彼女が成仏できない理由』は、ミャンマーから日本に漫画留学したエーミン(森崎ウィン)と、激安物件の古いアパートの部屋に住み着く、色白で黒髪の幽霊・小鳥遊玲(高城れに)との共同生活を描いたビターテイストのラブコメディ。

 高城れには、国民的アイドルグループ・ももいろクローバーZ(以下、ももクロ)の紫色を担当する、最年長の27歳。いつも笑顔を絶やさず、グループきってのバラエティ班として活躍し、メンバーやファンに愛されるキャラだ。

 これまではももクロとしてのカメオ出演や、2012年の映画『ももドラ momo+dra』、2013年のドラマ『クリスマスドラマ 天使とジャンプ』(NHK)などの作品に出演してきたが、ももクロが女優として高く評価されたのが、高校演劇部を題材にした2015年の映画『幕が上がる』。高城は、いつもの明るくコミカルな高城の魅力をそのまま活かしたようなキャラだが、母子家庭という複雑な設定も。父親を題材に「肖像画」という一人芝居を部員それぞれに演じるのだが、高城は彫像を、父親ではなく呑んだくれのおじいちゃんに見立て、コミカルに面倒を見る芝居をしてから「母子家庭だからおじいちゃんが面倒を見てきてくれた。おじいちゃんが歳をとった時守れるのは私だけなんだ、だから今私は看護師を目指してます」と笑顔を見せる。わずか十数秒の一人芝居で、その明るさと優しさが伝わる感動的な劇中劇を演じ、自然体の演技が女優としての可能性を感じさせた。何より楽しそうに演技をしているのが伝わる一幕だった。

 その後も、個人での目立った女優活動はなく、2019年4月放送の『ももクロChan』(テレビ朝日系)で、メンバーの百田夏菜子や佐々木彩夏が主演級で映画や舞台で活躍するも、主演を務めたことがない高城は「主役をやるためには一体何が足りないのか?」と玉井詩織とともに舞台役者たちに会いに行くという、自虐ネタとして番組を作るほど。かつて2014年の『Quick Japan』の高城れに特集で、当時の川上アキラマネージャーは「高城さんの場合は、経験すれば経験しただけ色んなものを吸い込んでいく土壌というかキャパシティがある」と話していた。

 その言葉の通り、ソロ活動として、お笑い芸人・永野とのお笑いツーマンライブ、エキセントリックコミックショー「永野と高城。」を3年連続で行い、永野の過激でシュールな台本に高城は物怖じすることなく、様々な変な人を自然にやりきった。しっかり演技で観客を笑わせる姿は、純然たる喜劇役者としての成長を感じさせた。そして、スターダストが13年間女優として温め続け、機が熟したタイミングで今回の『彼女が成仏できない理由』の主演に抜擢。ファンの間でも「やっと本領発揮だ」という期待の声が多く上がった。

 ドラマを観てまず驚かされたのが、玲がまるで女優の板谷由夏を彷彿とさせるような“大人の女性”だということ。最初は高城と気づかなかった人も多いのではないだろうか。明るいイメージのアイドル・高城れにと切り離し、感情を抑えた演技が、女優としてアンニュイな新たな魅力を引き出している。『幕が上がる』でも感じたが、その笑顔の裏側を深読みしたくなる高城の存在感が、悲しい過去を抱えたキャラクターに見事に反映されているように感じる。

 また、常に部屋でゴロゴロしている幽霊という設定も興味深い。見方を変えれば、アイドルも幽霊も非現実的な存在であり、そうした部分は実際の高城のキャラクターが活かされていると言える。以前、高城には特技を「幽体離脱」と言う時代があり、玉井詩織に魂が乗り移ったエピソードなど、ファンの間では語り草となっているが、本作で幽体離脱でエーミンに憑依する、高城が得意(?)としているシーンがあるのも、本作にハマった理由の一つかもしれない。

 前回の第3話では、玲が、エーミンが影響を受けた漫画『氷の武将』の作者だったということが明らかに。ただその漫画は玲が死んだ後も連載は続き、玲のアシスタントだった山田(村上穂乃佳)がゴーストライターとして描いているという、『ミリオンジョー』的な展開に。玲も編集者・中路(和田正人)を憧れの存在だったことを思い出し、涙するなど、これまでのひょうひょうとしたキャラクターから徐々に感情的になり、演技も変化を見せている。親しくなればなるほど真実が解明され、悲しい現実が迫ってくる。

 制作総括の三鬼一希は「愛おしい距離感、切ない距離感を味わっていただけたら」と語っていたが(参照:森崎ウィンが留学生、高城れにが幽霊に NHKよるドラ『彼女が成仏できない理由』9月放送へ)、おそらく成仏してエーミンとの別れが訪れることは予想でき、切ないエンディングに向かうはず。哀しい場面こそ高城の笑顔がきっと映えるだろうが、女優・高城れには最後にどんな表情を見せるのか。

 アイドルが俳優の道を選んだとき、これまでのイメージを払拭できるかが一つの壁となることは多いが、高城について言えばその壁は超えたも同然だ。初主演でこれだけ自然体の演技を見せることができるのは、新しい“演技派女優”の誕生と言えるだろう。佇まいもそうだが、台詞回しや、精神面で勝負するような演技は、戸田恵梨香を彷彿とさせ、彼女のように個性の強い役から静かな役まで、幅広い演技が期待できる女優になっていくのではないだろうか。『彼女が成仏できない理由』は、そんな高城の女優としての本領が発揮された作品だ。

■放送情報
よるドラ『彼女が成仏できない理由』
NHK総合にて、毎週土曜23:30〜23:59放送【全6回】
出演:森崎ウィン、高城れに(ももいろクローバーZ)、和田正人、村上穂乃佳、中島広稀、 白鳥玉季、高橋努、ブラザートム、古舘寛治ほか
作:桑原亮子
制作統括:三鬼一希
プロデューサー:増田靜雄
音楽:トクマルシューゴ、王舟
演出:堀内裕介、新田真三
写真提供=NHK

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む