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黒木華が語る、女性たちが前を向いて進んでいく新しい『ウェンディ&ピーターパン』

ぴあ

黒木華  撮影:源賀津己

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黒木華と中島裕翔(Hey! Say! JUMP)がダブル主演を務める『ウェンディ&ピーターパン』が8月13日(金)に開幕する。

本作は、世界的傑作『ピーターパン』の小説版(作:ジェームス・マシュー・バリー)を、ロンドンで注目の若手作家・演出家のエラ・ヒクソンが新たにウェンディの視点から翻案し、2013年に英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーが上演した話題作で、今回が日本初演となる。演出を手掛けるのは、ロンドンでの初演・再演でも演出を務めたジョナサン・マンビィ。

稽古の真っただ中である7月下旬、ウェンディを演じる黒木華に話を聞いた。

「女性がアイロンをかけるものだ」というところに疑問を持って描かれている

――出演が決まった時のお気持ちをお聞かせください。

ジョナサン(・マンビィ)と『るつぼ』(’16年)でご一緒した時から「また一緒に仕事したいね」と話していたので、こうやってまたご一緒できることが嬉しかったです。『ピーターパン』というみんなが知っている夢のある作品を、新しいカタチでできるのも刺激的だなと思いました。

――ジョナサン・マンビィさんの演出はどのようなところが魅力ですか?

とても丁寧で、役者それぞれの良いところを見つけ、引き出してくれます。役者の挑戦を喜んで楽しんで聞いてくださるのもすごくいいなと思います。ジョナサンにとってこの作品はすごく大きな意味のある舞台とのことで、ジョナサンがいろいろ模索している様子が伝わってきます。

――この作品は、『ピーターパン』をウェンディの視点から翻案したものですが、『ピーターパン』との違いを黒木さんはどのように感じられましたか?

私の中の『ピーターパン』はディズニーの印象が強くて、子供のための物語であり……夢の世界に誘われるイメージでしたが、この作品ではエラ(・ヒクソン)さんが“女性”に注目し、女性の社会的な立場や成長が大きく描かれています。ウェンディやタイガー・リリー、ティンク(ティンカーベル)、お母さんといったそれぞれの女性がきちんと前を向き進んでいくところが、これまでの『ピーターパン』と大きく違うんじゃないかと思います。

――印象的なシーンはありますか?

ある男性が女性に好意を抱く中で、「アイロンがけをしているところが目に浮かぶ」とポジティブに話すシーンがあるんです。人によっては疑問を持たず、「ああ、温かい家庭を築きたいんだな」と受け取る方もいると思いますが、この作品は、「女性がアイロンをかけるものだ」ということに疑問を持って描かれています。

ウェンディが現状をどう打開し、成長していくか

――ウェンディ役を演じられるうえで、どこを核として大事にしていきたいですか?

稽古をしている中でウェンディは、家族に大きな影響を与える存在だと感じています。壊れかけた家族を自分がなんとかしないといけないという思いを、ネバーランドに着いてからも持ち続けていて、現状をどう打開し、どう成長していくかという過程を見せていくことが大事だと思っています。

――ウェンディを演じていて楽しいと思っていることはどこですか?

飛びながらのお芝居はしたことがなかったので、大変ではありますが、フライングは楽しいです。あと、ウェンディとタイガー・リリーとティンクの女子3人組のシーンもすごく楽しいですね。男子たちには負けないぞ!という気持ちになっています(笑)。去年、『桜の園』が公演直前で中止になってしまったこともあり、(’20年4月予定だったが上演中止。続いて6月の『ケンジトシ』も上演中止に)、久しぶりの舞台になるので、舞台上の大きな空間で演じることを想像するだけで、とても気分が上がります。

――先日通し稽古があったそうですが、全体像が見えて、どんな魅力のある作品だと思われましたか?

通してみて、とても忙しい舞台だなと思いました(笑)。そのぶん、お客様は観ていて面白いと思いますし、多くの方に愛される舞台になるんだろうなと感じました。ちゃんと体力をつけないとダメだなというのが正直なところです(笑)。本番に向けてさらにブラッシュアップしていきますし、ジョナサンもより細かく指導してくださると思うので、そこもまた楽しみたいと思っています。

――ウェンディにとって、ピーターパンはどんな存在なのでしょうか。

今作に関して言いますと、ピーターパンやフックは、ウェンディの想像の中の登場人物なのかなと思います。ウェンディが思う理想のヒーローであり、目の前に現れてほしい人物の象徴なのかなと。フックについて、ジョナサンから「ウェンディが想像する “大人の男の人”。魅力的でちょっと危ない存在」という話を聞いて、ピーターもウェンディと同年代の自分を救ってくれる理想の男の子なのかなと。強くて、アグレッシブで、怖いもの知らずだけどセンシティブな一面もある素敵な男の子なんだと思います。

初共演の中島裕翔は「ピーターパンにぴったり」

――ピーターパン役の中島裕翔さんとは初共演になりますが、印象をお聞かせください。

とても真面目で素直な方だなというのはお芝居から感じます。それに身体能力がすごく高くて、殺陣やフライングなど全部一発で覚えちゃう。ピーターパンにぴったりだなと思いながら見ています。

――フックとウェンディの父・ミスター・ダーリング役の堤真一さんの印象もお聞かせください。

堤さんとは今までにも何度かご一緒させていただいているので、お父さん役としてすごく安心感があります。堤さんご自身も実生活ではお父さんということもあり、子供とのやり取りもとても自然なので違和感なく、父と娘の関係が築けているように思います。フックとしては、(ウェンディとの立ち回りのシーンもあるが)立ち回りも経験が豊富な方なので、教えていただきながらやっています。

――カンパニーはどのような雰囲気ですか? 今回座長でもありますが。

あまり座長という自覚がなく、できていることといえば、差し入れするくらいです。若い方が多いので活気に満ちていて、すごく和気あいあいとしています。作品自体もものすごくエネルギーがいるので、稽古中はみんなのパワーがみなぎっています。今回、「シャドウ」というピーターパンの影役の方たちがいらっしゃってシャドウの皆さんがいなかったら舞台が成り立たないと思うぐらい、私たちができないフィジカルな部分を担ってくださっています。シャドウの皆さん含め、すごく明るい現場です。

――お客様に「ここが面白い」と伝えたいところはありますか?

全部面白いですよ(笑)。見どころがたくさんある作品だと思います。人間模様もそうですし、フライングや殺陣もあります。衣裳や舞台装置もイギリスのスタッフの方々とのコラボレーションでできた素晴らしいものになっています。お子さんだけではなく、大人の方にも楽しんで観ていただける作品になるようがんばっているところです。

――冒険のお話ですが、黒木さんが最近された冒険は?

最近はあまり外に出られていないので稽古が冒険ですかね(笑)。

――では、最近楽しかったことは?

楽しかったことも稽古なんです(笑)。舞台が本当に好きなんですよね。

――舞台はどんなところが魅力ですか? 演じる側として、観る側として、両方お聞かせください。

観る側としては、目の前で演者さんが感情を出して動いているところをフィルターなしで生で観られる。その迫力は舞台ならではの伝わり方で、映像にはないものだと思います。そこが一番の魅力ですかね。演じる上での違いは、映画は撮り順が前後することが多いですが、舞台は始まりから終わりまで物語が流れている中にいられるので、私にとってはすごくやりやすいです。

――コロナ禍の上演となりますが。

お客様に心配なく来ていただくことがとても重要なことだと思います。そのために劇場側も様々な対策をしてくださっているので、安心して来ていただけたらと思います。コロナ禍だからこそ、舞台やエンタテインメントの力を私は信じたいし、信じています。もやもやした気持ちはぬぐえないですし、手放しで「遊びにきてください!」とは言えな状況ですが、こんな時だからこそ、皆さんの心に残る舞台にできればと思っています。日常を忘れられたり、登場人物に自分を重ねたり思いを馳せたりできるのが舞台空間だと思うので、純粋に楽しんでいただけたらなと思います。

取材・文:中川實穗 撮影:源賀津己



DISCOVER WORLD THEATRE vol.11『ウェンディ&ピーターパン』
2021年8月13日(金)~2021年9月5日(日)
会場:東京・Bunkamuraオーチャードホール

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