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河童の女

20/7/9(木)

『河童の女』 (C)ENBUゼミナール

「役者さんが魅力的に映っていると思う」。試写の後、辻󠄀野正樹監督の冒頭あいさつを思い出していた。映画館に行く動機はさまざまだろうが、「川辺の民宿で働く男と、そこに流れてきた女」を描いた本作は、この言葉通り「俳優で観たくなる映画」だ。いわゆるスターはいないが、主演の青野竜平、ヒロインの郷田明希をはじめ出演者のコミカルで味わい深い演技が大きな魅力となっている。 浩二(青野)は渓流に面した民宿の次男。家業を手伝っていたが、社長の父親が女と出て行ったため民宿を一人で引き継ぐことになってしまう。そんな時、東京から家出してきたという美穂(郷田)と出会い、住み込みで働いてもらうことに……。 河童にまつわる少年時代のトラウマを抱える浩二、どこか暗い影をまとった美穂、2人を取り巻く陽気な地元の面々など巧みな人物造形で最後まで飽きさせない。 気になった演出がある。美穂が橋の欄干に大金入りの封筒の束を立てて置く。少しでもバランスが崩れれば、下の渓流に落ちてしまう。過去と決別しようとする美穂の揺れる心情が不安定な封筒の束と重なる。ある意味、サスペンス(宙吊り)の感覚。観ていて鼓動が早くなった。最も印象に残ったシーンだ。

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