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サントリーの最多V6か、パナソニックのV5か? 最後のTLプレーオフ決勝で強豪ライバル対決キックオフ!

ぴあ

福岡堅樹(パナソニック ワイルドナイツ)

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最後の『トップリーグ』チャンピオンを決めるにふさわしいカードとなった。2年ぶりの開催となる『日本選手権』にうってつけの顔合わせである。サントリーサンゴリアス×パナソニック ワイルドナイツ。18年間の『トップリーグ』で、いくつもの名勝負を繰り広げてきた強豪同士の頂上決戦だ。最多タイの優勝5度を誇るサントリーと、優勝4回で続くパナソニックが雌雄を決する。

『ジャパンラグビー トップリーグ2021』プレーオフトーナメント準決勝は両軍のチームカラーとは異なる試合展開ながら、それでもなお強さを見せ付ける結果となった。9試合で100失点という鉄壁のディフェンスを誇るパナニックは激しい点の取り合いを演じつつ後半に4トライをまとめて48-21でトヨタ自動車ヴェルブリッツを下した。8試合で496点という爆発的な攻撃力を見せてきたサントリーは、クボタスピアーズをノートライに封じ込め26-9で勝利した。

5月15日のトヨタ自動車×パナソニックは、ウイング(WTB)福岡堅樹の29秒ノーホイッスルトライで幕を開けた。自陣22mライン手前・左サイドで福岡がボールを受けるとそのまま一気にトップスピードまで加速。フルバック(FB)野口竜司とのワンツーを経て、追い駆ける南アフリカ代表61キャップのFBウィリー・ルルーを振り切り、電光石火のトライを決めた。狙っていた先制パンチを逆に食らったトヨタも黙っていない。5分にセンター(CTB)ロブ・トンプソンがゲインラインを突破、フランカー(FL)古川聖人がピック&ゴーでねじ込んで同点とすると、9分には右サイドでひとり余ったWTB高橋汰地が逆転トライ。その高橋が16分に大仕事をやってのける。相手陣22mライン手前・右サイドでボールを受けた高橋は対峙した福岡をフェイントで抜き去り、日本代表候補のCTBディラン・ライリーのタックルをかわし、野口のタックルを受け倒れ込みながらインゴールへボールを運んだのだった。

ノーホイッスルトライから15分、5-15と主導権を握られたパナソニックだが、慌てず騒がず。21分、ラインアウトが安定しないと見たロビー・ディーンズ監督はフッカー(HO)島根一磨に代えて、堀江翔太を投入。日本代表66キャップの猛者は動きが悪いと感じたタイトファイブに「もうちょい動けよ」と檄を飛ばす。

本来の動きを取り戻すとパナソニックは相手陣内で試合を進めた。ペナルティを獲得すればSO松田力也がペナルティゴール(PG)を決める、ディフェンスの寄せが甘いとみると個の大一番でラグビー人生初のドロップゴール(DG)を松田がズバリ。惜しくも松田からライリーへのキックパスはTMOの結果、トライと認められなかったが、33分にはこの日3つ目のPGを決めて17-15と逆転。それでも2分後、SOライオネル・クロニエがPGを決め返され17-18で前半を終える。

後半に入り、パナソニックとトヨタが3点ずつ加点すると、次々リザーブを投入したパナソニックが23名の質を発揮。60分に途中出場したファンタジスタ・山沢拓也がディフェンスラインのギャップを突き、トライ。69分には、途中出場のFL福井翔大のビッグゲインから素早くボールを出し、最後は福岡がトイメンの高橋のタックルを受けながらフィニッシュ。そして75分にライリーがとどめのトライ、松田がコンバージョンゴール(CG)を決めて39-21と勝負あり。

クライマックスは77分に訪れる。自陣10mラインでハイパントをキャッチした福岡がキレキレのランで防御網を切り裂き、独走トライ。福岡で始まった準決勝は福岡で終わったのだった。

医学生との二刀流を実践しながら、3トライをマークした福岡だが、試合後「ハットトリックで終われたのはよかった。ただ、トータルのパフォーマンスでは足りない部分もある。決勝へ修正しなければいけない」と反省の弁を口にした。高橋に許したふたつのトライについて「最初のトライの後はふわふわしていたのが反省点。1本目はセットプレーのディフェンスでコミュニケーションの問題なので、チームとして修正すれば問題ない。ただ、もう1本は自分のタックルミス。しっかり決勝へ準備していきたい」と16分のトライを悔やんだ。

ディーンズ監督が「まさにプレーオフという試合になった。プレーオフの試合というのはメンタルに大きなプレッシャーがかかる。そのプレッシャーがかかる中で集中が欠ける場合があるが、今日ゲームキャプテンをした布巻(峻介)がチームの落ち着きをマネジメントして戦ってくれた」と称えれば、当のFLは「前半からタフなアタックで少しプレッシャー受けて苦しい時間帯が続いた。だけど気持ちだけは切らさず、『いつかチャンスが来ることを信じて、自分の役目に集中しよう』と話した。後半に入ったメンバーが勢いを与えてくれて、最後は点差開いた。前半に我慢して、後半に相手にプレッシャーかけていくというゲームプランを遂行できた」と振り返った。

また、記者から「動けよ」の真意を問われた堀江は「ケツを叩いたと言うか。余裕を持つことと、安心するのは違う。余裕を持つのはいいけど、必死にならんとどの相手にも勝てない。(ベンチから見て)変に余裕を持っている感じがあったので、僕から必死さを出した」と明かした。

ボーデン・バレット(サントリーサンゴリアス)(C)スエイシナオヨシ

5月16日のサントリー×クボタは、互いにキックでスコアを重ねていった。8分、クボタのWTBゲラード・ファンデンヒーファーが相手陣内10mラインほぼ正面の位置からPGを決めれば、20分にサントリーのSOボーデン・バレットが同じような位置からDGを通す。23分に日本代表候補のWTBがPGを決めれば、25・30分とニュージーランド代表88キャップを誇る司令塔がPGを立て続けに成功して9-6。4強の激突らしく、じりじりした緊迫感溢れる展開が続く。

33分、インゴールまで残り10mの位置でラインアウトを得たサントリーはマイボールをキープし、スクラムハーフ(SH)流大、バレット、CTB中村亮土、FB尾崎晟也とパスを回し、最後は左サイドでボールを受けた2015-2016季最多トライゲッター・江見翔太が内側へライン取りし、ファンデンヒーファー、CTBテアウパ シオネ、FB金秀隆のタックルを掻い潜りトライ! バレットのCGは失敗したものの14-6で前半を折り返した。

後半もサントリーペースが続く。42分、ブレイクダウンで激しいチャージを見せたオーストラリア代表26キャップのナンバーエイト(NO8)ショーン・マクマーンがペナルティを得ると、すかさずバレットのPGで3点を追加。47分にクボタが1本返すと2分後にサントリーがPGで加点して20-9。ゲームをコントロールしたサントリーは55、59分とペナルティを誘い、バレットがPGを決めていく。26-9と2トライ2ゴールでも追い付けないセーフティリードを築いた。

クボタも終盤に意地を見せて、FW陣が近場を突いてゴールラインを超えてくるが、サントリーが意地でもグラウンディングは許さず。逆転が厳しい時間となっても、クボタは果敢にアタックし続けるも、サントリーは鋭い出足と高い集中力、そして驚異的な粘りでトライを阻み続けたのだった。

決勝進出を決めたミルトン・ヘイグ監督は「いいゲームだった。前半はいいキックディフェンスをし、後半はプレッシャーを相手にかけた。いい結果が得られてよかった」と手応えを語れば、中村主将も「キックをしながらテリトリーを取っていくプランで進めた。これまでディフェンスで課題が多かった中、修正してノートライに抑えたのが自信になった」と同意した。

ブレイクダウンでの攻防と相手守備網の裏を突くキックが勝因になったと主将は振り返った。

「簡単にはゲインできないと思ったので、キックを蹴ってアンストラクチャーを作って、自分たちのゲームに持ち込んでいこうとした。ブレイクダウンのバトルはクボタさんも強みにしているので、そこで負けたら勢いに乗られる。『ブレイクダウンで負けないようにしよう』とチームで話した」

決勝の相手・パナソニックの印象について質問が飛ぶと、指揮官と主将はこう答えた。

「ディシプリンが素晴らしく反則が少ない。自陣ではあまりプレーしたくないチームだというイメージ。ディフェンスも強いが、自分たちはアタックでチャンスを得点につなげることを確実にやらないといけない。またこちらも全員が努力して失点されないようにすることが大切だ」(ヘイグ監督)
「今季のスタートとして『アタッキングラグビーを掲げるためにもトップリーグで一番のディフェンスチームになろう』と話してきた。毎試合の課題を修正しながらベストなディフェンスができてよかった。パナソニックさんもアタック力のあるチームだが、自信を持って臨めそう。対パナソニックのプランはあるが、サントリーが積み上げたものをしっかり出せるよう準備したい」(中村主将)

試合登録メンバーは以下の通り。
【サントリーサンゴリアス】
1森川由起乙、2中村駿太、3垣永真之介、4トム・サベッジ、5ハリー・ホッキングス、6ツイ ヘンドリック、7小澤直輝、8ショーン・マクマーン、9流大、10ボーデン・バレット、11江見翔太、12中村亮土、13中野将伍、14中鶴隆彰、15尾崎晟也、16堀越康介、17石原慎太郎、18セミセ・タラカイ、19ジョー・ラタ、20テビタ・タタフ、21齋藤直人、22田村煕、23梶村祐介

【パナソニック ワイルドナイツ】
1稲垣啓太、2坂手淳史、3平野翔平、4ヒーナン ダニエル、5ジョージ・クルーズ、6ベン・ガンター、7布巻峻介、8ジャック・コーネルセン、9内田啓介、10松田力也、11福岡堅樹、12ハドレー・パークス、13ディラン・ライリー、14セミシ・トゥポウ、15野口竜司、16堀江翔太、17クレイグ・ミラー、18ヴァル アサエリ愛、19長谷川崚太、20大西樹、21小山大輝、22山沢拓也、23福井翔大

サントリーは最多トライゲッターのWTBテビター・リー、豪州代表33キャップのCTBサム・ケレビの戦線復帰は叶わなかったが、2016-2017季トライ王・中鶴とベンチスタートのCTB梶村にはその穴を埋める役割を担う。パナソニックは最終決戦にHO坂手淳史主将が間に合ったのは明るいニュースである。

果たして、サントリーの3季ぶり6度目の優勝か、パナソニックが5季ぶりの5度目の優勝か。いよいよ最後の『トップリーグ』王者が決まる。『第58回日本選手権』兼『トップリーグ2021』プレーオフ決勝・サントリー×パナソニックは5月23日(日)・秩父宮ラグビー場でキックオフ。試合の模様はNHK総合にて生中継。また5月24日(月)には『トップリーグ2021年間表彰式』を開催。イベントの模様はトップリーグ公式YouTubeチャンネルにて配信。

取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)

チケット情報
https://t.pia.jp/pia/events/rugby-topleague/

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