Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

キュウソネコカミ、ヤバイTシャツ屋さん、岡崎体育……笑いを越えた先にある“音楽性の核心”に迫る

リアルサウンド

18/12/7(金) 8:00

 キュウソネコカミが12月5日にニューアルバム『ギリ平成』をリリースする。日常の“あるあるネタ”や鋭い社会風刺を織り交ぜたコミカルな楽曲で人気を獲得したキュウソネコカミだが、彼らのようなコミカルなテーマをメインとした楽曲が多いミュージシャンは、ともすれば笑えるだけの“コミックバンド”ととらえられてしまいかねない。しかし、キャリアを重ねるほどにその楽曲の中に音楽性の核心が見え、エモーショナルになってきているように思う。

(関連:キュウソネコカミは今いい状況を迎えているーー実直に音楽活動に臨んできたバンドの姿勢を追う

 そこでシーンでも特に高い人気を誇るキュウソネコカミ、ヤバイTシャツ屋さん、そして岡崎体育の3組を取り上げ、それぞれの代表曲と近年のヒット曲を通してその音楽性の核心に迫ってみよう。

キュウソネコカミ
 キュウソネコカミが確固たる存在感をシーンで示し続けている理由は、ひとえにその独特なユーモアセンスと、歯に衣着せぬ風刺的な歌詞表現による点が大きいだろう。

 ライブでも人気の代表曲「ビビった」では、現代の音楽シーンへの赤裸々すぎるほどの反骨精神がワンフレーズ目から大サビまで徹底的に貫き通されているのがわかる。この歌詞は、キュウソネコカミの“メジャーでロックバンドとして活躍していく”ということへの覚悟の表れともとれるだろう。

 シーンを批判するからには、そのシーンでたしかな地位を築かない限り、ロックバンドとしての面子が立たない。今でこそ人気バンドの一員として数えられるキュウソネコカミだが、当時の彼らにとって、シニカルな歌詞表現は自らを追い込んでいくような捨て身のブラックジョークだったと言える。キュウソネコカミのシニカルな歌詞には、彼らの音楽への正直さと真面目さが隠されているのだ。

 今年4月にリリースされた「越えていけ」は、そんなキュウソネコカミには珍しくストレートな応援ソング。そこに綴られているのは、どこまでも優しく、真っ正直な言葉たちだ。カッコつけた言葉を選ばず、常に飾らない歌を聴かせ続けてくれるその姿勢が、音楽に対して常に真摯であり続けるキュウソネコカミの最大の魅力といえるだろう。

ヤバイTシャツ屋さん
 キュウソネコカミと同じく、日常の“あるある”をテーマにした歌詞が印象的な“ヤバT”ことヤバイTシャツ屋さん。「あつまれ!パーティーピーポー」「ハッピーウェディング前ソング」など、骨太なメロコアサウンドとミスマッチなほど親しみやすい関西弁が特徴的で、生活に密着した独特なテーマの楽曲が魅力である。

 そんなヤバイTシャツ屋さんの楽曲の核となる姿勢が表れているのが、2018年1月発売のアルバム『Galaxy of the Tank-top』に収録されている「サークルバンドに光を」だ。この楽曲の中で、こやまたくや(Vo/Gt)は〈誰でも使える言葉を使って誰にも歌えん歌を歌う〉というフレーズを綴っている。このワンフレーズは、何よりもヤバイTシャツ屋さんの音楽の骨子を表しているのではないだろうか。

 しっかりとした曲作りを基礎としつつ、感動的なラブソング以上に誰もが共感できる=誰もが経験しうる日常に立脚した物語を音楽にのせていくのが、ヤバイTシャツ屋さんが選んだスタンスなのだろう。“共感”という汎用性の高いテーマに則しながらも、その特有のユーモアとセンスによって、ヤバイTシャツ屋さんにしかないオリジナリティを確立しているのだ。

岡崎体育
 今やSNS世代を代表するヒットミュージシャンの1人といっても過言ではない岡崎体育。「感情のピクセル」「MUSIC VIDEO」といった楽曲やそのMVなどから見えるシニカルさからは、“MVあるある”など世間で受け入れられているコンテンツの“それっぽさ”を的確にとらえ、笑い飛ばしてしまおうという思いが感じられる。

 そんな岡崎体育の楽曲の中でも、近年話題となったのが「キミの冒険」。TVアニメ『ポケットモンスター サン&ムーン』(テレビ東京系)の主題歌にもなったこの楽曲の中で、岡崎体育はある種彼らしくないほどにまっとうなポップソングとしての歌詞表現に挑戦しているのだ。

 日本のロックシーンやJ-POPシーンへの皮肉ともとれる表現方法を選ぶ一方で、「鴨川等間隔」などの楽曲や一連の『ポケモン』主題歌作品群などではよりシンプルで上質な表現を見せる岡崎体育の根底には、“音楽そのものへのリスペクト”がある。だからこそ、日本のロックシーン・JPOPシーン特有の“それっぽさ”を笑い飛ばしながらも、より広く受け入れられる音楽を極めていけるのだろう。

 最初はコミカルな楽曲で評価されたという共通点はありながらも、バラバラのスタイルを有する3組。その“面白さ”の根底には確固たる信念があり、笑いを越えた先にある“カッコよさ”がリスナーの心をつかんで離さないのだろう。彼らのコミカルな楽曲を耳にした際には“面白い”の向こう側の“カッコよさ”に想いを馳せてみてほしい。(五十嵐文章)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む