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『JIN -仁-』『野ブタ。』に反響 過去作の再放送は若い視聴者をドラマの世界に誘う契機に?

リアルサウンド

20/4/28(火) 6:00

 新型コロナウイルスの影響で春クールのドラマの多くが放送休止となりコンテンツが不足する中、大きな注目が集まっているのが過去作の再放送だ。

【写真】再放送中の『野ブタ。』より堀北真希、亀梨和也、山下智久

 TBS系では『半沢直樹』の続編を放送予定だった日曜劇場(日曜夜9時枠)で同じ池井戸潤原作のドラマ『下町ロケット』の特別総集編を放送。その後も池井戸潤原作のドラマ『ノーサイド・ゲーム』の特別編が放送された。火曜ドラマ(火曜10時枠)では『私の家政夫ナギサさん』の代わりに前クールに放送され話題となった『恋はつづくよどこまでも』の胸キュン!特別編が放送。金曜ドラマ(金曜夜10時枠)では『MIU404』で主演を務める星野源と綾野剛が出演する『コウノドリ』の傑作選が放送されている。

 フジテレビの月9(月曜夜9時枠)では『SUITS/スーツ2』が第2話まで放送されたが、その後休止となり『コンフィデンスマンJP』の傑作選を放送することとなった。火曜9時のカンテレ(関西テレビ)枠では『竜の道 二つの顔の復讐者』の代わりに『素敵な選TAXI』を、木10(木曜夜10時枠)では『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』の代わりに『グッド・ドクター』が放送されている。

 テレビ朝日系の木曜9時枠では木村拓哉主演の『BG~身辺警護人~』第2章の代わりに前作となる第1章の傑作選を放送。日本テレビ系の土曜10時枠では『未満警察 ミッドナイトランナー』の代わりに、同じジャニーズアイドルのバディモノである『野ブタ。をプロデュース』(以下『野ブタ。』)の特別編が放送。NHKのドラマ10(金曜夜10時枠)では『ディア・ペイシェント~絆のカルテ~』の代わりに『アシガール』が放送されている。

 他にも『JIN-仁-』、『カンナさーん!』、『初めて恋をした日に読む話』(すべてTBS系)も放送されているが、こちらは深夜枠や14時台だ。

 いわゆるプライムタイム(19~23時)のドラマ枠で、過去作が多数放送されるということは、今までになかった事態だろう。しかし、視聴者からは好評だ。『野ブタ。』第1話の平均視聴率は11.0%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を記録し、2話までの放送だったのが4話まで延長。DVD-BOXの売上にも再び火がついている。

 Yahoo!ニュースでドラマの再放送を扱った記事のコメントを見ていると、放送してほしい過去作のタイトルがズラッと並んでいる。そのラインナップを見ていると、今のテレビドラマが暗に批判されているように見えて複雑な気分になるが、それはそれとして、筆者も再放送は大歓迎である。

 そもそも以前は、ドラマの再放送は頻繁におこなわれていた。筆者は90年代前半に中高生だったのだが、夕方の4時ぐらいに学校から帰ってくると必ずドラマの再放送がされていたため、なんとなく観ていれば近過去のドラマはほとんど網羅できた。

 当時、再放送されたドラマは、映画でいうと二番館や名画座で上映される映画に近く、再放送を入り口にドラマの面白さに気づくことも多かった。

 再放送をきっかけに人気に火がつくドラマも少なくない。例えば『相棒』シリーズ(テレビ朝日系)は始まった当初の視聴率は当時としては決して高いものではなかった。しかし何度も再放送を繰り返し、シリーズ化することで、じわじわとファンを増やしていき、テレ朝を代表するドラマとなった。

 その意味でも、再放送は新規ドラマファンを開拓する上で重要な拠点である。だから是非、力を入れてほしいのだが、現在のラインナップを見ていると、もう少し広がりがあっても良いのではないかと思う。

 幕末を舞台にコレラや梅毒との戦いを描いた『JIN-仁-』や、学園ドラマの枠組みの中でフェイクニュースの問題を先取りした『野ブタ。』は、今観る意義は充分にある。黒島結菜と伊藤健太郎の出世作で、誰もが楽しめる優れたジュブナイルドラマだった『アシガール』の放送には発掘良品的な意義を感じる。だが、他は近年のヒット作が中心なので、今後は低視聴率で埋もれてしまった良作や、テレビドラマの古典と言える山田太一や向田邦子の名作ドラマも是非、放送してほしい。

 ドラマ評論の仕事をしていると、宮崎駿作品を筆頭とするスタジオジブリの劇場アニメが金曜ロードショーで定期的に放送されているアニメがとても羨ましくなる。

 ジブリアニメはアニメファンにとっての共通言語となっており、80年代の『天空の城ラピュタ』や90年代の『もののけ姫』が世代を超えて観られている。しかし、過去作が顧みられることの少ないテレビドラマにおいては、視聴者が10歳違うだけで全く違う歴史観となり、共通言語と成りうる作品はほとんどない。

 しかし、過去の名作が定期的に放送されていれば、視聴者だけでなく作り手にとっても大きな指標となりうる。

 Paravi、Hulu、NHKオンデマンドといった有料配信サイトも悪くないが、テレビの良さは偶然の出会いが味わえることにある。再放送が充実すれば、偶然観た若い視聴者をドラマの世界に誘う大きな契機と成り得るはずだ。

(成馬零一)

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