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浦井健治×柿澤勇人「30代の自分たちだから演じられるトニーがある」

ぴあ

浦井健治×柿澤勇人

ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season3がいよいよ動 き出す。昨年8月の来日公演からスタートした『ウエスト・サイド・ストーリー』もこの Season3をもってついに完結。フィナーレを飾るにふさわしい、日本のミュージカルを代 表するトップスターが集結した。

ぴあにトニー役を務める浦井健治と柿澤勇人が登場。過去にWキャスト経験もある旧知の ふたりが仲良しトークを繰り広げてくれた。

※このインタビューは2月に行われました。

トニーを見ていると人間ってアンバランスだよなと思う

――おふたりは、トニーという役にどんな演じがいや魅力を感じますか?

浦井 トニーはまっすぐで、純粋に人を愛する気持ちを体現できる役。そこは男として憧れるところであり、自分もそうありたいという願望のこもった役ですね。

柿澤 人生を最期まで添い遂げるであろうと確信できる女性とめぐり会って、ただその人を愛し抜く。それだけ女性を愛することを体現できるのは、役者としてもすごくうれしいです。

浦井 人間としての生き方をたくさん学べる役ですよね。友情とか、地域や大人との関係とか、本当はこうあるべきだよなという面が描かれている。だけど、若さゆえの至らないところもあって、人間ってアンバランスだよなと感じたりして。その不完全なところを今の我々の年齢でやるから面白いんだろうなと。30代の我々が演じることで、物語に込められた伏線だとか台詞の裏側の感情といったところまで丁寧に表現できたらなと思います。

柿澤 僕も32になったんで、トニーに挑戦できるのもきっとこれがラストチャンス。トニーが親友のリフやジェッツのメンバーと過ごした時間は、青春と言っていいのかわからないですけど、きっとみんなが通ってきた道だし。僕も若い頃にトニーとリフみたいな関係に憧れていた部分もあるので、それをこの年で思い切りやれることが楽しみです。

――『ウエスト・サイド・ストーリー』と言えば音楽も大きな魅力のひとつ。そんな名曲の数々に挑戦する気持ちを教えてください。

浦井 大変ですよね。キーも高いところから低いところまであって。音に感情を含めるのは、すごく繊細な作業だし、技術が必要。ちゃんとお芝居に歌を溶け込ませなきゃいけない難役だなと。

柿澤 ちょうど今日(取材当時)、『Something's Coming』の歌稽古をしてきたんですけど、4分の3が4分の2になって、それが何度か続いたらすぐまた変拍子っていう、ものすごく変則的な曲。でもきっとそこに(作曲の)レナード・バーンスタインが表したかったものがあるんだなと思うと、なんとか歌いこなしてみせるぞって気持ちです。

浦井 メロディがとても素晴らしいので、そこに乗っていけるように、このロングランをカッキーと助け合って、1回ずつ魂込めて一緒に乗り越えてやっていけたらなと思います。

柿澤 前に(三大テノールとして知られる)ホセ・カレーラスが『Maria』を歌っているのを動画で観たんですけど、すごく苦戦されていて。あの世界的なドミンゴがワケがわからなくなって楽譜を閉じて帰っちゃうんですよ。そんな難しい曲を自分が歌うんだと思うと、あんな動画観なきゃ良かったって思いました(笑)。

健ちゃんからスタンプが来ても今は全部無視です(笑)

――おふたりは、以前に『デスノート THE MUSICAL』で主人公の夜神月役をWキャストで務めたこともありますよね。お互いのことをどんなふうに見ているんですか?

浦井 柿澤くんという役者を僕が初めて見たのは、まだカッキーが劇団四季にいた頃の『春のめざめ』なんです。そのときの感想は、「なんだこの子は?」という驚きで。その後、食事に行ったら、普通のサッカー少年でまた驚かされた(笑)。

カッキーは、役者然としていないというか、俺は役者じゃなくて人間なんだと言い切れる生き方をしているところが、不器用かもしれないけど、めちゃくちゃカッコいい。それと同時に、人情深いというか、絶対に人を見捨てないところが「漢(おとこ)」だなって。「漢」と書いて「漢(おとこ)」だなって。

柿澤 そここだわるの?(笑)

浦井 ビールが似合ってサウナも似合うぞっていう。なかなか令和の時代に、ミュージカル畑にいないタイプです。そりゃ吉田鋼太郎さんに気に入られるわけだ(笑)。

柿澤 吉田鋼太郎さんには「お前、俺の若い頃にそっくりだ」って言われますよ(笑)。

浦井 そう言われて、どう思うの?

柿澤うれしいけど……俺、3回も離婚したく――

浦井 (遮って)やめなさい!(笑)

――(笑)。柿澤さんはどうですか?

柿澤 健ちゃんと初めてご飯に行ったときのことは今でも覚えていて、すごいうれしかったんですよ。いろんな舞台で健ちゃんのことを観てたから、「どういう方なんだろう?」って気になっていたんですけど。今みたいにフランクな感じで、場の雰囲気を見て僕が話しやすいようにいろいろと質問してくれて。思わず「本当にこういう人なのかな?」っていう――

浦井 (遮って)鬱陶しかった?(笑)

柿澤 鬱陶しいんじゃなくて、疑ったの(笑)。まさかそこから福田雄一さんの舞台で一緒になったり、『デスノート THE MUSICAL』で同じ役をやったり、ましてや『ウエスト・サイド・ストーリー』で一緒にトニー役をやるとは考えていなかったら。

浦井(しみじみと)本当だね。

柿澤 これは何かの縁だなって。僕は健ちゃんって呼ばせてもらっていますけど、年下の 僕がそう呼ばせてもらえるのも健ちゃんの人柄があってこそ。もしかしたら家に帰ってから怒っているのかもしれないですけど(笑)。

浦井 どんな人だよ(笑)。

柿澤 お互い人間としてのタイプは全然違いますけど、だからこそざっくばらんに話せる 。健ちゃんはいきなり(LINEの)スタンプとか送ってくるんですよ。最初は僕も普通に返事してたんですけど、今は全部無視する(笑)。

浦井 そう。既読スルーなんです(笑)。

柿澤 それでもこうして現場で会ったときに何事もなく話せるのは、浦井健治の人間性の おかげだと思います。

ーーちなみに浦井さんは既読スルーされてもめげないんですか?

浦井 めげませんね。そういう愛情表現かな?って思っています(笑)。

カッキーの一途なところがトニーっぽい

浦井 カッキーは、役者としてイチではなくゼロになれるんですよね。舞台上でゼロからお芝居ができる人。潔いというか、本当にその場に存在して生きることができるんです。役に全身を憑依させるというか、役を全うすることができる人。そういう役者さんってなかなかいなくて、かなり稀有な存在だと思っています。

柿澤 いやいや、ありがたいですよ、そう言ってもらえるのは。僕から見た健ちゃんは、行くとこまで行っちゃう人。たとえば『デスノート THE MUSICAL』だとしたら、最後に月がリュークに「40秒以内に死ぬ」って言われて。残りあと40秒で死ぬ芝居をしなきゃいけないんですけど。僕はそういう狂わなきゃいけないときでも、頭の中は冷静なんです。立ち位置も今は何番だとかチラチラ確認しながら、わりと俯瞰で見ているんですけど、健ちゃんはそうじゃない。楽屋に戻って「健ちゃん、大丈夫?」って声かけたら痣だらけだったことがあって。僕はそこまで行っちゃうことができないからすごいなって。

――相手を見ていて、トニーっぽいなって感じるところはありますか?

浦井 え~、なんだろう。一途なところかな。人への思いやりも含めて、カッキーの一途なところはトニーっぽいかも。

柿澤 健ちゃんは、ちょっとふにゃふにゃしているところですね。

浦井 どういうこと?(笑)

柿澤 トニーって、本当は決闘を止めなきゃいけないところを、武器はダメだけど素手ならいいよってなったりするじゃないですか。そういうところとか健ちゃんっぽいなって(笑)。

浦井 よくわかんないけど、なんかいいんじゃね?っていう性格が?(笑)

柿澤 そう(笑)。あとは『Something's Coming』がまさにそうだけど、このまま生きていれば何かいいこと起きるんじゃね?みたいな感じは健ちゃんっぽい(笑)。

浦井 それ、笹本玲奈ちゃんにも言われた。Season1を観に行ったとき、「トニーにぴっ たりじゃーん」って言われて。褒められてるのかな?って思った(笑)。

ーー実際に決闘になったら、浦井さんはどうするでしょうね。

浦井 もうこの年齢になっちゃったんでね。とりあえず冷静になりましょうよって呼びか けていると思います。完全にドクの目線ですね(笑)

作品のメッセージを名曲に乗せて伝えられたら

――この『ウエスト・サイド・ストーリー』はトニーとマリアのラブストーリーだけにとどまらないメッセージ性がつまった作品です。おふたりは、この作品の持つテーマにどんなことを感じましたか?

柿澤 やっぱりいちばん感じるのは、争っても何も生まれない、ということだと思うんで すよね。ただ、今回の『ウエスト・サイド・ストーリー』を見て驚いたのが、あの有名なラストの演出が違うんですよね。

浦井 それは僕も印象に残った。マリアが客席に向けてピストルを向けていて。この作品 が持つ争いに対してのメッセージをマリアが背負っているようにも見えましたね。

柿澤 争いに対して、戦うことに対して、「どうなんだよ?」って最後に突きつけられて いる気がしました。

浦井 争いの虚しさが伝わってくるというか。今の日本でやる意義のある作品じゃないかなと思います。

――では、公演に向けて最後に意気込みをお願いします。

浦井 Season1からつないできたバトンを完結させるという意味でも、しっかり責任を持 ってゴールしたいなと思っています。そのためにも、「これが今の日本の『ウエスト・サイド・ストーリー』です」と胸を張って言える作品をお届けしたい。世界にオランダと日本にしかない客席が回転する劇場を体感できるのもすごく貴重な体験になると思いますので、ぜひともアトラクション感覚で楽しく劇場に来ていただけたら。

柿澤 『ウエスト・サイド・ストーリー』と言えば、昔から上演を重ねてきた不朽の名作。話の流れは難しくないですが、ちゃんと普遍的なメッセージ性がある作品なので、そのメッセージを名曲に乗せてしっかりお届けできればと思っています。

浦井 僕はお客さんが勝手にカット割りができるのが舞台の醍醐味だと思っていて、客席が回転する劇場だからこそ情報量は他の劇場と比べても増えるはず。その分、何回観ても面白いだろうし、よりニューヨークの世界に入り込んだ感覚になれると思う。「え? 客席が回るの? 何それ、行ってみようぜ」くらいの軽い興味で来ても、何かを感じて帰ってもらえる自信はあるので、とにかくぜひ一度足を運んでいただけたらなという思いです。

3月28日(土)午後4:00~4:30 『ウエスト・サイド・ストーリーSeason3 開幕直前SP』(仮)
TBS系にて放送‼ *一部地域を除く

浦井健治さん、柿澤勇人さんのサイン入りチェキを2名様にプレゼント!応募の方法はこちら

撮影/岩田えり、取材・文/横川良明
ヘアメイク/(浦井さん)山下由花、(柿澤さん)松田蓉子
スタイリング/(浦井さん)壽村太一 (柿澤さん)椎名宣光
衣装協力/(柿澤さん)ブルゾン¥84,000、シャツ¥31,000/ともにCINOH (MOULD 03-6805-1449)
パンツ¥18,000/NUMBER (N)INE(NUMBER (N)INE 03-6416-3503)
ブーツ¥65,000/FACTOTUM×EARLE(FACTOTUM LAB STORE 03-5428-3434)

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