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現代日本を泳ぐ気鋭のクリエイターに聞く「現代クリムト講座」

ウィーンの街並みとクリムトは、積み重なる

特集

第3回

19/3/16(土)

19世紀末当時の面影を残したガソメーターの外観

現代クリムト講座の第3回は、番外編としてオーストリア・ウィーンの街並みについて考察します。19世紀末にクリムトが活躍したウィーンの街は、現代にどのように引き継がれているのでしょうか。

日本橋。各地へと延びる五街道の起点であり、東京に長く暮らすぼくのような人間からすると、多かれ少なかれ特別な場所という意識がある。「東海道五十三次」でこの橋がドラマティックに描かれている様は国内外に広く知られているし、1964年の東京オリンピックに向け、首都高速道路が覆った(道路の建設自体は63年に完成)ことも、有名なエピソードだろう。景観や文化を保護する観点から日本橋と空を遮る首都高を否定する見解は少なくなく、地下に移設する計画も議論されている。いっぽうで、“都市を更新する”という視点から現状を肯定的に見る動きもある。

ぼくらは成長しなければならないのか。更新し続けなければならないのか。発展至上の考え方が踊り場で息切れをしている東京の街に対し、ウィーンの街はひとつの回答を示している。

ウィーン中心街から電車で10分ほど進んだところに、「ガソメーター」駅がある。その名の通り、75メートルもの高さの巨大なガスタンクが4基並んでおり、ひっそりとした街区で圧倒的な存在感を示している。これらは19世紀末(1899年)に建てられ、20世紀末(1999〜2001年)に、それぞれ著名な建築家(ジャン・ヌーヴェル、コープ・ヒンメルブラウ、マンフレート・ヴェードルン、ヴィルヘルム・ホルツバウアー)によって修復された。外観に産業革命を象徴するような物質感を維持しながら、住宅や商業施設、映画館にジムなどを内包している。

4基の中は、突っ切って歩くことができる。ガソメーターの中央部は空洞状にくり抜かれていて、住宅のベランダにささやかな植木鉢を見上げたり(日当たり悪そう)、マックカフェの看板が煌々と光っているのを見下ろすことができる。ぼくは次の取材待ち合わせまでの待ち時間を、中にあるマクドナルドで過ごした。新しいキャンペーンもののハンバーガーとコーヒーを味わいながら、19世紀末の外観から20世紀末の内観、そして2019年のマクドナルドの店頭へと、内に行けば行くほど歴史が現代に向かう、バームクーヘンの層のようなものを実感した。

改装されたガソメーカーの内側。中央の空洞部にマックカフェがある

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