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年末企画:藤原奈緒の「2020年 年間ベストドラマTOP10」 コロナ禍だからこそ生まれた幸せな作品

リアルサウンド

20/12/22(火) 8:00

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2020年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、国内ドラマの場合は地上波および配信で発表された作品から10タイトルを選出する。第4回の選者は、今年ドラマに関する記事を数多く執筆したライターの藤原奈緒。(編集部)

1.『MIU404』(TBS系)
2.『スカーレット』(NHK総合)
3.『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)
4.『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)
5.『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系)
6.『エール』(NHK総合)
7.『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京系)
8.『知らなくていいコト』(日本テレビ系)
9.『天使にリクエストを〜人生最後の願い〜』(NHK総合)
10.『世界は3で出来ている』(フジテレビ系)

 テレビドラマには「今」が映り込んでいる。そのことをより強く実感するような、激動の1年だった。コロナ以前・以降だけでなく、ドラマの内容自体が、人々のコロナ禍との向き合い方の変化と共に大きく揺れ動いているのが興味深い。今回選んだ10作は、最も「2020年らしさ」を感じたドラマである。

 野木亜紀子脚本である『MIU404』、『コタキ兄弟と四苦八苦』。綾野剛、星野源、菅田将暉はじめ俳優たちの熱演が光った『MIU404』は、物語をあくまでエンタメとして仕上げながら、弱者にしっかり光を当て、社会の暗部を指摘すると共に、見事にコロナ禍の現在へと着地した。一方の『コタキ兄弟と四苦八苦』は、ハートフルな物語でありながら、どこまでもシビアで生きづらい社会をサバイブする女性たちの悲哀とたくましさが際立った。

 2本の朝ドラは、見事に対極の魅力を持っていた。『スカーレット』は徹底して日常を描くことで、苦難に満ちたヒロインの人生を描いた。対する『エール』は、『スカーレット』とは逆に、週ごとにテイストが大きく変化する非連続性のドラマであり、むしろ「ハレとケ」のハレを通して、人生を描いた。

 『スカーレット』と同じく水橋文美江脚本の『#リモラブ』はコロナ禍による新しい生活様式をポジティブに受け入れた作品として斬新だった。いわば、「マスク越しのラブストーリーは可能かどうか」の試みである。それに加え、SNSという便利な手段に頼りすぎて、現実世界ではうまく思いを通わすことのできない、過剰に不器用になってしまった私たちの物語でもあった。

 人の心の中にまで掘り下げて恋愛を描くという点、だからこそぶつかる主人公の終盤の葛藤という点において、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』は『#リモラブ』と少し似ているところがある。『30歳まで~』におけるそれぞれの心の声を通して恋愛を描くという斬新な手法は、恋というものの素晴らしさと困難さをどこまでも深く捉え直していた。

 『私の家政夫ナギサさん』は、多部未華子演じるヒロイン・メイというキュートな存在が、2020年における等身大の女性像を示していた。大森南朋演じるナギサさんとのいわゆる恋愛とは少し違う「結婚」の形含め、既存の価値観に囚われない「完璧じゃない」生き方には、ふっと肩の力が抜ける心地よさがあった。小芝風花演じる『妖怪シェアハウス』(テレビ朝日系)のヒロイン・澪もまた、結婚ではなく、「妖怪になる」ことを選ぶことで自身を解放するというラストが秀逸だった。

 大石静脚本の『知らなくていいコト』。「手を繋いで朝まで一緒に眠る」穏やかな恋愛の幸せを描いた作品が多く見受けられた2020年において、『恋する母たち』(TBS系)もそうだが、大石静脚本は常にその対極にあった。でもそれが何より魅力的であり、柄本佑や重岡大毅、そしてなにより禁断の恋に足を踏み入れる境目で惑う吉高由里子の美しさがとにかく鮮烈だった。

 また、『天使にリクエストを~人生最後の願い~』において老いと死を、『ノースライト』(NHK総合)において人生の折り返し地点を迎えた男たちの葛藤を描いた大森寿美男脚本の確かさも特筆すべきものがあった。

 2020年、長期にわたる撮影中止期間や優れた俳優たちの相次ぐ訃報などで、テレビドラマは多くのものを失い、多くの苦難に立たされた。本来なら生まれるはずだった物語が多く失われたことは悲しい限りである。でも、坂元裕二や森下佳子など多くの作り手が挑んだリモートドラマや、木皿泉が書き下ろしたショートドラマ『これっきりサマー』(NHK総合)、ドラマ製作の裏側を垣間見ることができた『不要不急の銀河』(NHK総合)、林遣都が一人三役を演じるという離れ業によって生まれた『世界は3で出来ている』等、コロナ禍だからこそ生まれた幸せな作品もまた多くある。

 明るい年であってほしい2021年を、ドラマを通して、しっかりと見つめていきたい。

【TOP10で取り上げた作品のレビュー/コラム】
赤楚衛二×町田啓太の“もどかしさ”は現実世界そのもの 『チェリまほ』が描く人を好きになること
江口洋介、上白石萌歌、志尊淳が生み出すハーモニー “名曲”が心に染みる『天使にリクエストを』
『MIU404』は“0地点”にいる私たちの物語だった “世界のズレ”が大きくなる前に立ち止まる意義
『わたナギ』が教えてくれた3つの大事なこと “しょせん他人同士”だから進める一歩
『スカーレット』は“手を繋ぐ”物語だった 何度でも思い出したい喜美子の「大事なもんは大事に」

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■リリース情報
『MIU404』
12月25日(金)発売

【Blu-ray】
価格:28,800円(税別)
仕様:2020年/日本/カラー/本編(尺未定)+特典映像/16:9 1080i High Definition/Vol.1~3:2層、Vol.4:1層/音声:リニアPCM2chステレオ/字幕:日本語(本編のみ)/全11話/4枚組(本編ディスク3枚+特典ディスク1枚)

【DVD】
価格:22,800円(税別)
仕様:2020年/日本/カラー/本編(尺未定)+特典映像/16:9LB/片面1層/音声:ドルビーデジタル2ch/字幕:日本語(本編のみ)/全11話/6枚組(本編ディスク5枚+特典ディスク1枚)
※仕様は変更となる場合あり。

<特典映像>
1Sインタビュー集、SPOT集ほか(予定)

<初回生産限定封入特典>
劇用車「まるごとメロンパン号」クラフト(PP素材)

<封入特典>
ブックレット(脚本家・野木亜紀子による各話ライナーノート“nogi note”を掲載)

出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、黒川智花、渡邊圭祐、金井勇太、番家天嵩、菅田将暉、生瀬勝久、麻生久美子
脚本:野木亜紀子
主題歌:米津玄師「感電」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
音楽:得田真裕
発売元:TBS
発売協力:TBSグロウディア
販売元:TCエンタテインメント
(c)TBSスパークル / TBS

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