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『ジョジョリオン』東方定助のスタンド「ソフト&ウェット」の謎ーーなぜ”奪う”能力なのか?

リアルサウンド

20/4/24(金) 13:26

 医院長の思惑も見え、東方家、定助、そして医院長を始めとした岩人間たちの新ロカカカの実を巡る争いもいよいよクライマックスに差し掛かる雰囲気を見せ始めた『ジョジョリオン』。まだ解明されていない謎が多い今作だが、ここで私が個人的に気になっている点を考察しきたい。

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■東方定助が与えられた”奪う”能力

 それは主人公、東方定助のスタンド「ソフト&ウェット」とその能力についてである。読者ならご存知のことであるが、スタンドというのは「生命エネルギーが造り出すパワーある像(ヴィジョン)」であり、スタンド使いの精神の形を具現化したものである。そしてパラレルワールドに突入した7部で「困難に立ち向かう」ためのものだと言及された。7部と地続きの世界である8部でもスタンドの概念としてはこれが適用されていると言えるだろう。それでは定助はいったい何に立ち向かっていて、そのスタンドの能力は何を暗示しているのか。

 東方定助は吉良吉影と空条仗世文、二人の人間が融合した存在であり、スタンドも吉良のキラー・クイーンの爆破能力と、仗世文のソフト&ウエットの吸い上げる能力、双方の特性を受け継いだ「物理的な何かを一時的に奪う」力である。歴代のジョジョ主人公のスタンド能力は物語のテーマを内包した能力であることは言うまでもない。そしてこれまでの主人公のスタンドは、なにかを生み出す、もたらすプラスのエネルギーの発現であることがほとんどであった。これと比較すると、定助のスタンド能力は明らかに異彩を放っている。定助はなぜ”奪う”能力を与えられたのか? そして荒木飛呂彦自身が語ったジョジョリオンというタイトルに含まれた「定助がこの世に存在する意味」とは?

 当初、定助は融合することで失った自身の記憶を取り戻すために行動をしていた。壁の目とロカカカの等価交換によって奪われたもの、失ったもの、得たもの。”奪われた”という思いと”取り戻す”という意志が2人のスタンドの融合した能力を形作ったのは想像に難くない。吉良吉影を半分受け継いだとはいえ、ここではまだ仗世文としての意志の方が強い。

■ジョースター家にとって厄介な敵

 しかし、ジョースターの一族は素行の良し悪しはさておき、皆がその胸に「黄金の精神」を宿し、自らの運命に立ち向かい、誇り高く、正しく生きていた。定助も吉良吉影が持つ”ジョジョ”を受け継いでいるので、気づかないうちに黄金の精神をも受け継いでいた。その黄金の精神は「吉良・ホリー・ジョースターを救いたい」という想いに集約される。仗世文として幼少期に命を救われたことに対しての恩義、そして吉良吉影としての母親の対する想いが融合、集約して、黄金の精神に昇華したのではないかと考える。その瞬間、スタンドの”奪う”という能力は「どんな困難や運命が向かっていこうとも、自らの手でその願いを運命からも奪い取る」という強い精神の形となっているのではないだろうか? その強い想いのために、おそらく今回のラスボスと見られる医院長を追いかけて倒すと明言した定助にホリーは「絶対に追いかけるのは駄目よ。追いかけさせるのは良い」と伝える。立ち向かう気持ちがかえって仇となる敵というのは、ある意味ジョースター家にとってやっかいなことこの上ないが、(しかもまだラスボスと決まったわけではない)ホリーを救うという願いは、同時にジョースター家、東方家が苦しむ呪いから解放されるきっかけにも繋がる。

 ジョニィ・ジョースターの行動により始まったジョースター家の呪い、その因縁を断ち切ることこそが「定助がこの世に存在する意味」なのではないだろうか? いずれにしても物語はいよいよクライマックスに向けて加速し始める雰囲気を見せている。どのような結末が訪れるのか、続きを楽しみに待つことにしよう。

■関口裕一(せきぐち ゆういち)
スポーツライター。スポーツ・ライフスタイル・ウェブマガジン『MELOS(メロス)』などを中心に、漫画、特撮、芸能、ゲーム、モノ関係の媒体で執筆。他に2.5次元舞台のビジュアル撮影のディレクションも担当。

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