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小泉今日子×上田ケンジ、盟友ふたりの新ユニット「黒猫同盟」が2021年に始動した理由

ぴあ

黒猫同盟

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小泉今日子と上田ケンジが、黒猫同盟というユニットを組み、計3作のシングル・EPを先行配信した上で、それらもすべて収録した全16曲(!)のファースト・アルバム『Un chat noir』を9月29日にリリースした。
このふたりのコラボレーションは、小泉今日子の2008年のアルバム『Nice Middle』に上田ケンジが作詞・作曲・編曲で参加し、そのリリース・ツアー等でバンマスを務めた2008年以来。小泉今日子にとっては、2018年2月に所属事務所を独立して以降で、初めての音楽作品でもある。10月27日(水)には、黒猫同盟としての初めての配信ライブを行うことも決まっている。
なぜ黒猫同盟なのか、なぜアコースティックな手触りが心地いいフレンチ・ポップなのか、なぜ今やることが必然だったのか、などについて、ふたりに訊いた。どの質問に対しても、明確な答えが返ってきた。

「私は自由だ」って言いたかったんだと思う(小泉)

――このユニットがどのように始まったのかから、教えていただけますか。

小泉:私が4月から、ポッドキャストの番組をSpotifyでやることになって。普通のラジオ局と違って、既存の曲はかけられない、ということで。「オリジナルで作れば可能なんですか?」って訊いたら「可能です」と言われたので、じゃあ作るしかないな、と。で、こういう時は上田さんだなと思って、呼び出して、お話しして。1年目のコロナ禍の頃で──。

上田:去年の10月。1年前だね、だいたい。

小泉:お互い会社を経営しているので、舞台やライブのことで苦労があった数ヵ月の話をしたのちに、「こういう企画があるんだけど、どう?」って言ったら「やりたい」って。これは、私の中では、今、事務所から正式に独立してからやる音楽活動としては、初めてだったので。新しいユニットでやるのが、より自由なのかな、ということで、黒猫同盟というユニットで、最初から考えました。

――そのコンセプトが、猫になったのは?

小泉:偶然なんですけど、同じ時期にお互い、保護猫で女の子の黒猫と暮らすようになっていて。なので、どうせだったら、活動をして、保護猫とかの実情を、広くわかってもらえるようなことになったらいいな、というのもあって。上田さんが今回全曲、作詞、作曲、アレンジもやってくれたんですけど、全部猫目線の歌詞なんですよね。

上田:そう、猫から見た世界。

――保護猫等の問題に関心を持ったのは──。

上田:僕は、飼い始めてからです。保護猫の活動をしている人のところへ面会に行った時から、「あ、これは大変だな。問題山積みだな」と感じたので。じゃあそのへんも連動してやろうか、みたいな話も、小泉さんとして。

――音楽性とかは、どんなふうに決まっていったんでしょうか。

小泉:もともとポッドキャストの番組のために音楽を作りたかったので、大きい小さいで言うと小さい曲、気持ちよく聴ける曲。それで、小泉今日子のソロの作品だとすると、ちょっとこの流れの中に入れにくい感じもあったんですよね。デビュー40周年とか、控えていたりするから。あと……「私は自由だ」って言いたかったんだと思う。

上田:(笑)。それで、「軽めの感じがいいよね、BGM的にも使えるような。だけど歌がしっかり入ってる曲もほしいよね」っていうようなことで、最初、3曲作って。今回全部うちで録っているんですよ。で、「歌詞をどうしようかな」っていう時に──。

小泉:「私も書こうかな」って言ってたんだけど、ずっと書いてないから回線が途切れてて。そしたら上田さんが「自分、今、調子がいいから」「あ、じゃあ調子がいい人に任せる」と。

――上田ケンジのキャリアの中で、こういう音楽性の作品って、ありましたっけ?

上田:ないんですよね。

――ですよね。聴いてびっくりしました。

小泉:みんなそう言うね。

上田:でも、最初に「軽い感じ」って言われた時に、「あ、こういう感じかな」みたいなのが浮かんで。それをやってみたら、できた。「あ、俺、こういうこと、できるんだな」っていうのがありましたね、この歳になって。

小泉:それこそ、コロナ禍じゃなかったら、こうならなかったかもしれないんですよね。

上田:レコーディングもライブも、去年は全部なくなったから。完全に没頭できたし、何か新しいものを作れる気がしたっていうか。去年、僕、ずいぶん作ってるんですよ、この作品以外にも。ソロのライブ、30本ぐらい飛ばしたんですけど、それがストレスじゃなくて、だったら曲を作ればいい、っていう。独特だったでしょ、去年の3月から5月とか。「あれ? 世の中、終わっちゃうのかな。これはなんか書き留めておかないと」みたいなのがあって。

小泉:昨日(2021年9月20日)、国連のスピーチにBTSが出たんです。「この世代の人たちは、Lost Corona Generationと言われそうだけど、Welcome Corona Generationという言葉にしたらどうでしょうか?」と言っていて。

上田:あ、マジで?

小泉:そう。コロナで、新しいこともたくさん生まれたし、新しいアイデアや発見もあったし、すごく疲れてた人が、ちょっと休むことができたかもしれないし。経済的に苦しくなってしまった人はたくさんいる、ミュージシャンにしても、役者にしても、飲食業も。でも、だからこそ新しいアイデアが生まれて、新しく人気を博すお店も出てきているところもある。今まで、データとかを元にして「こういうブランディングで」みたいな事業が多かった気がするんだけど。これからはもっとアイデアが中心というか、パッと思いついてやったことが注目を浴びる、みたいな世の中に戻って行くのかな、って。そういうことも考えながら作っていましたね。ふたりだけで。

最初に呼び出された時、「歌う理由が見つかった」と言われた(上田)

――小泉さん、2020年と2021年に、ソロで配信ライブもやっておられますよね。

小泉:はい。2020年にコロナ禍になって、私みたいな楽観主義の人間でも、不安とか、怒りとかがあって。誰が悪いわけじゃないのかも知れないけど、信頼できる拠り所がこの国にはないな、頼りないな、っていう感じがあって。それで、私たちはどういう仕事なんだっけ?と思うと、そういう時に、人の心を少し慰めたり、少し楽しくさせたり、少し元気にさせたり、っていうことができるかもしれない仕事だったな、と。今は歌う意味があるぞ、意味があればできるな、って思えたんです。それで、この作品のリリースのことでやり取りをしていたビクターさんに、「配信ライブっていうのにチャレンジしてみたいと思っているんだが」って言ったら「やりましょう!」という話になって。

上田:最初に呼び出された時も、その話になって。「歌う理由が見つかった」と言われた。今だからこそ、楽しいことを大人がやっている、っていうのを、ちゃんと観てもらって、聴いてもらって、感じてもらう。「あ、こういう人たちもいるんだから、もうちょっと笑って暮らそう」みたいなことに、僕自身も気づいたっていうか。だから僕も、今まで自分がやってない音楽を作れたんだと思うし。

小泉:ちょっとした心の余裕みたいなものは、大人が担う、大人が見せる、っていうことが、あちこちで起こらないと。我々だけじゃなくて。我々が元気にできるのって、同世代とかちょっと下の世代がメインになるけど、その人たちが今、会社や家庭の中で大きな役割を担っているとすると、その人が元気になれば、また複数の人が元気になる、っていうような感じで。そういうのをイメージしていました。で、届く気がしたんだよね。

上田:うん。

小泉:配信ライブも……ドラマの影響もあって、高校生とか大学生のファンの方もけっこういるんですけど、「お母さんも好きだったって知らなかった、一緒に観ました」とか、そんなふうにつながったりして。そんなふうに、ひとりでも、ふたりでも、少し心が楽になる一瞬があるんだったら、私たち、生きてる意味があるね、っていう。そんなふうに気づいて、そんなふうな活動を、その頃から始めて、今も続けているアーティスト、多いような気がしています。

――黒猫同盟でも配信ライブをやるんですよね。どんな編成なんですか?

上田:ドラムふたり、ギターがふたり、キーボードがひとり、僕はウッドベース。パーカッションとか、おもしろい音がする楽器をたくさん置いて、楽しいライブになると思います。今、ひとりで練習してるんだけど、歌うパートが多いから。ウッドベースでソロをとりながら、歌を入れるのが難しくて。メンバーに「歌える?」「口笛吹ける?」とかきいてるんだけど、口笛吹ける人が少なくて。

小泉:私、吹ける。

上田:あ、やってもらうかもしれない(笑)。



Text:兵庫慎司 Photo:岩澤高雄

【ライブ情報】
黒猫同盟 UNDEUX!! <配信ライブ>
10月27日(水)19:30開場 / 20:00開演
チケット料金:視聴券 3,000円(税込)
※チケットぴあにて販売中
https://w.pia.jp/t/kuronekodoumei/

【リリース情報】
1stアルバム『Un chat noir』9月29日リリース
CD VICL-65545 3,300円(税込)

<収録曲>
1. Un chat noir
2. 巴里のおてんば娘
3. UNDEUX
4. DING DONG DASH
5. ニャー
6. 異国の窓辺
7. プロヴァンスで夜更かし
8. プロヴァンスでニャー
9. ベルベットリボン
10. 黒猫サティ
11. 星降る夜に傘の下で
12. ニャーとフェー
13. 黒猫探偵団
14. イマノワタシ
15. カラノワタシ
16. Un chat noir ~DENPA FROM TOKYO~.

【プロフィール】
上田ケンジとコイズミキョウコによる音楽ユニット。
コイズミがSpotifyオリジナルPodcast「ホントのコイズミさん」を始めるにあたり、既存の曲をかけられないのならオリジナルを作ればいい!と、まるでマリーアントワネットのように呟き、上田を喫茶店に呼び出したことから生まれたユニット。同時期に保護猫の黒猫を引き取り飼い始めたことがユニット名の由来。黒猫の目線を通して見つめた今の世の中を描くのが楽曲のテーマです。
ちなみに上田の猫の名前はひじきちゃん♀、コイズミは小福田さん♀。

【関連リンク】
レーベルサイト:https://www.jvcmusic.co.jp/kuroneko/
Twitter:https://twitter.com/chat_noir_ally
Instagram:http://instagram.com/chat_noir_ally
TikTok:https://www.tiktok.com/ @kuronekodoumei_official

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