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『スカーレット』が伝える“日々の営みの愛おしさ” 終わりを感じさせない開けた作品に

リアルサウンド

20/3/27(金) 12:00

 みんなの陶芸展当日。喜美子(戸田恵梨香)、武志(伊藤健太郎)、そして名古屋からやってきた八郎(松下洸平)の顔も晴れやかに感じられる。最終話を目前に控えた『スカーレット』(NHK総合)第149話。描かれたのは、日々の営みの愛おしさだった。

参考:『スカーレット』最終回・第150話では、喜美子(戸田恵梨香)が幸せな時間を胸に刻む

 会場には、喜美子や武志に所縁のある人がたくさん集まっている。中でも面白いのは、ちや子(水野美紀)と草間(佐藤隆太)の偶然の再会だ。2人は作家の出版記念パーティーで一度面識があったようで、ぎこちないながらも打ち解けることになる。そういえば、荒木荘では喜美子が草間流柔道を広めていたわけだが、その長年の点と点が繋がった瞬間でもあった。

 そんな細やかな伏線を最終話直前に拾い上げてくるわけだから、やはり『スカーレット』は最終話という形で閉じる作品ではなく、その先にも続く喜美子たちの人生そのものを切り取ろうとする開けた作品である気概が窺い知れる。

 真奈(松田るか)と武志の心の距離もゆっくりと日常を重ねている。信作(林遣都)と百合子(福田麻由子)の娘、桜(吉川詩穂梨)と桃(朝日湖子)に4月のピアノの発表会に誘われる2人。「わかった。じゃあ楽しみにしてるな」という武志の表情は、一抹の曇りすら感じさせない。

 そして喜美子が招いたジョージ富士川(西川貴教)も会場へ。富士川の作品「TODAY IS」にちなみ、会場で「今日が私の1日なら」というお題でワークショップが始まる。子どもから大人まで思い思いの1日を書き込んで行く中、武志が書いたのは「いつもと変わらない1日は特別な1日」。病院で喜美子から富士川の作品を手渡された時には、書くことができなかった言葉だ。病気になったことに絶望し、作陶に打ち込み、周りの支えを全身で受け止め、日々を生き続けた武志が出した答えだった。

 そして、舞台はびわ湖に。「海やぁ~!」と聞こえてくるのは直子(桜庭ななみ)の声。第1話で、川原一家が信楽へやってきた時のワンシーンを彷彿とさせる。しかしこの場では、川原一家だけでなく照子(大島優子)や信作をはじめ、様々な人たちに囲まれている。広大なびわ湖の水面のきらめきと喜美子たちの姿が眩しく、最終話へ繋がる印象的なシーンとなった。

 明日はいよいよ最終話。半年間放送を続けた喜美子たちの日常はどこへ向かっていくのか。最後まで暖かく見守りたい。

(文=安田周平)

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