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年末企画:折田侑駿の「2019年 年間ベスト俳優TOP10」 原作キャラの“再現”にとどまらない熱量

リアルサウンド

19/12/20(金) 6:00

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2019年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優たちも紹介。今回は、2019年に日本で劇場公開された邦画の作品と、放送されたドラマの中から執筆者が独自の観点で10人の俳優をセレクト。第1回の選者は、映画から舞台まで幅広く鑑賞し、多くの役者評を執筆した映画ライターの折田侑駿。(編集部)

・伊藤健太郎
・山崎賢人
・染谷将太
・三浦春馬
・池松壮亮
・柳楽優弥
・宮沢氷魚
・清原翔
・笠松将
・サトウヒロキ

 この2019年、大いに楽しませてくれた俳優たち。ここでは昨年に引き続き、強い魅力を放った10名の男性俳優を挙げていきたい(順不同)。

【動画】『惡の華』予告編 パンツを脱がされる伊藤

 まずは、伊藤健太郎と山崎賢人。この二人は、露出の頻度としては昨年と比して大きく減った。昨年の伊藤は出演した映画が続々と公開されたし、山崎は主演映画一本に加え、二本ものドラマで主演を務めた。でありながら、なぜ両者ともこの一年を通して忘れがたい存在になったか。それはもちろん、伊藤は『惡の華』、山崎は『キングダム』と、公開された主演作の威力があまりに大きかったからである。

 どちらも原作ありきの作品。となれば当然、多くの“原作ファン”が存在し、実写化の報が出た時点で、「イメージと違う」といった声が方々から上がっても不思議ではない。両作とも熱烈なファンを持つ作品とあって、演じる彼らもそれ相応のプレッシャーを背負っていたのではないかと思う。しかしフタを開けてみれば、あちこちから聞こえてくる称賛の声。むろん、他者の評価を基準にするわけではないが、彼らが今後も作品を背負い続けていくことができるかどうかは、この“声”にかかっているのも事実だ。作品の毛色がまったく違うとはいえ、両者とも原作のキャラクターの“再現”の枠にとどまらない、それぞれの人物の熱量を体現していたように感じる。映画が原作から独立したかたちで立ち上がるのに、彼らは多大な貢献を果たした。信頼できる二人である。

 年齢的には“若手”ながらも、キャリア的にはすでに“ベテラン”の域に入りつつある染谷将太、三浦春馬、池松壮亮にも胸を熱くさせられた。染谷は例年通り、多くの出演作が公開。とくに、黒沢清監督作『旅のおわり世界のはじまり』の染谷は素晴らしかった。彼はウズベキスタンにロケに来ているテレビディレクターという役どころであったが、このクルーの一員として、そして映画のいちピースとして、黒沢監督の生み出すフレームに絶妙に収まっていた。かと思えば、朝ドラ『なつぞら』(NHK総合)では果敢にオーバーアクトを実践していたりするのだから面白い。

 三浦、池松もまた、露出の目立った存在だ。その中でもやはり強く胸を打たれたのは、市井の人々の群像を活写した『アイネクライネナハトムジーク』での三浦の姿と、一人の若者の成長していく姿を描いた『宮本から君へ』での池松の姿。両作とも“生き方”についての映画だと感じ、彼らと同い年の筆者は大きな勇気をもらった。観る者に勇気を与えるーー改めて俳優とはすごい職業だと思う。三浦は舞台『罪と罰』で主演を務め終えた直後に、ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』再演の成功も収めており、舞台俳優としても相当なポテンシャルを秘めているようだ。

 さらに“ベテラン枠”でいえば、柳楽優弥の凄みが圧倒的だった。静かな演技に激情を滲ませた主演映画『夜明け』にはじまり、『泣くな赤鬼』『ザ・ファブル』とメインキャストとして出演した作品が立て続けに公開。とくに後者の二作は同時期に公開されたこともあり、その演技の振れ幅に感嘆の声を禁じ得ずといったところ。五年ぶりに主演を務めた舞台『CITY』では、現代演劇の最前線にも立ってみせた。そして、この『CITY』に出演した宮沢氷魚の活躍にも目を見張るものがある。『映画 賭ケグルイ』で映画初出演を果たし、『偽装不倫』(日本テレビ系)ではプライムタイムの連ドラでヒロインの相手役という大役を務めた。いわゆる大抜擢ではあるが、よくよく考えてみてほしい。彼はまだ俳優デビューをしてから二年ほどしか経っていないのだ。この飛躍ぶりは、一段飛ばしどころか、三段飛ばし、いや五段飛ばしの所業。しかし先述した『CITY』の演出家であるマームとジプシーの藤田貴大から、昨年の『BOAT』に続いて起用されている事実や、来年公開の主演映画『his』を観れば、いろいろと納得である。

 そんな、一気に存在感を示した俳優といえば、ほかに清原翔が挙げられる。ドラマ作品に多く顔を見せながら、『なつぞら』で知名度は急上昇。映画も『PRINCE OF LEGEND』『うちの執事が言うことには』『HiGH&LOW THE WORST』と話題作が次々に公開されたが、いずれも清原のクールでミステリアスな佇まいありきの役どころに収まっている印象だった。滑らかで美しい発声ができる俳優でもあるのだから、来年はより適役に恵まれることは間違いないだろう。

 そして存在感について言及するのなら外せないのが笠松将だ。彼の顔と名前は、今年多くの方に強く印象づけられたのではないだろうか。なにをしでかすか分からない不敵な佇まいで私たちの恐怖と興味を煽り、どんな役どころであっても、彼が登場するとワクワクしてしまう。ドラマに映画にと出演作があまりに多く、すでに彼の実態をつかむことは難しそうだが、きたる2020年にはさらなる接近を試みたい。年明けすぐに公開の主演作『花と雨』は、笠松のポテンシャルが存分に活きた、映画と彼の存在がケミストリーを起こしている作品なので要チェックだ。

 最後に、ここはギリギリまで迷ったところだが、サトウヒロキの名を挙げたい。まだ彼のことを知らない方も多いだろう。筆者もこれまでに彼の出演作を観たのは、ショートムービーのいくつか程度であった。しかしこの12月に滑り込みで観ることが叶った彼の主演作『ゆうなぎ』(「MOOSIC LAB 2019」のプログラム内にて上映)での好演を見て、サトウに決めた。画面内の彼の顔を見ていると、なにか言いたくなる。なにか言葉を与えたくなる。つまり、言葉を誘発する顔なのだ。ときにその表情だけで観客の視線を受け止めなければならないスクリーンの中の彼らにとって、これは非常に重要な要素であるように思う。もちろん、“演じる”ということができる前提でだ。本作が来年一般公開されることを願いたい。

 どの俳優もさらに実を大きくさせた2019年。新たなフェーズに突入する2020年に、彼らはどんな世界を見せてくれるのだろうか。彼らがいるのなら、不安と期待が入り交じる未来も、期待の方が勝りそうである。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記。

(折田侑駿)

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