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『BLEACH』阿散井恋次のパワーの源とは? 一護との「強さ」の違いを考察

リアルサウンド

20/11/26(木) 8:00

 連載終了から4年が経ってもなお高い人気を誇る久保帯人『BLEACH』。家族を護るために悪霊である虚を退治する死神となった高校生・黒崎一護と、死神、人間、滅却師といった仲間たちとの戦いを描く。

 今回、ピックアップするのはルキアの幼なじみで死神の阿散井恋次だ。

幼なじみに焦がれ、強者に焦がれ

 恋次が初めて登場したのは第6巻。一護に力を譲渡し、無力化したルキアを連れ戻すためだ。ルキアが連れ戻されるのを阻止しようとする一護に問答無用で斬魄刀を振るうが、油断からか一撃を食らう。一護の敵であるように見えただろうし、最初の印象としてはあまり良くなかった、という読者もいるかもしれない。

 しかし、ルキアが尸魂界に連れ戻されてから、その関係が徐々に明らかになっていく。幼なじみであり、流魂街では家族のように暮らしていたこと、周りの仲間たちが次々と死んでいく中、生き抜くためにルキアと共に真王霊術院に入ったこと。そして、ルキアが朽木家の養子になったこと――。

 朽木家は四大貴族のひとつと言われ、身分の高い家柄である。恋次はルキアに想いを寄せていたが、朽木家の養子となれば流魂街で一緒にいた時とはわけが違ってくる。圧倒的な身分の差が立ちはだかることになったのだ。

 貴族の人間となったルキアと対等になるため、そして、尊敬する白哉を超えるために鍛錬を積んできた。

 ルキアの処刑に関して、連れ戻しはしたものの、処刑になるとは考えていなかった。投獄されているルキアの元を訪れ、白哉が減刑を乞うはずだと言い、それを疑っている様子もない。恋次はルキアと白哉のこじれた義兄妹の関係を知らなかったからだ。だからこそ、ルキアが極刑だと決まった瞬間には大きく動揺する。ここから、恋次の心は迷い始める。幼なじみで大切な想い人と、自分が護廷十三隊六番隊副隊長という立場であるということに。

迷いの中で託した自分の思い

 瀞霊廷に侵入した一護たち。その戦いの中で恋次もまた、一護と相対することになる。初めて会ったときよりも圧倒的に強くなった一護によって、接戦になりながらも刀を折られ、負けてしまう。そんな一護との戦いの中で、自身の過去を振り返っていた恋次。

 朽木家に養子として迎えられることに、ルキアに家族ができるのだから祝ってやらなければ、と言い聞かせていた。しかし、本当は貴族に盾つくことなど自分にはできない、怖気づいてしまったのだと思い返す。

 朽木家の養子に入ることを止めたとしても、ルキアは喜んだだろう。しかし、養子に入ることを喜んでくれているのもまた、ルキアにとっては寂しくもあり、嬉しいのだ。恋次が自分のことを大切に想ってくれているのは知っているから。

 処刑が決まってから、ルキアは恋次に対して弱気な発言はしないし、ましてや助けてほしいなどとは言わない。自分を助ければ恋次も罪人となることは分かっているし、そんなことは望んでいないのだ。いまある現状を全て理解した上で、恋次は一護に乞う。

「恥を承知でてめえに頼む…! ルキアを助けてくれ…!」

 恥、というのもまた本音。同時に激しい悔しさもあっただろう。本当なら、自分が助けたい。でも、白哉と相対しても自分は勝てない。恥よりも悔しさよりも、――嫉妬よりも、ルキアを助けてほしい。そんな気持ちから発した言葉だったのだろう。

男として、戦士として強くなっていく恋次

 一護が関わる戦いの多くに恋次は参戦している。一護は、強い。それ故の天真爛漫な部分がある。強くなりたい、大切な人を護りたい、という気持ちはもちろんあるが、必ず強くなって見せる、と信じている部分がある。目の前に強者が現れ、一度は負けても、再戦し、勝つという成功体験ゆえだろう。

 一方、恋次は白哉とは何度やっても破れ、ルキアを救うための戦いでも白哉の前に倒れている。その後も鍛錬を積み、順調にその実力を上げていき、一護と共に戦うときも重要な戦力となっている。

 ユーハバッハにまつわる戦いの中では、修行で得た真の卍解の力で圧倒的な強さも見せた。恋次は強くなれると信じて、ではなく、負けの痛みを知っているからこそ、強くなっているのだ。もともと、護るための強さではない。共に戦うための強さを目指してきた。一護とは違う強さを持っていると言えるだろう。

 一護と再戦することはないが、対戦した経験があるからこそ、強さとその心意気を信頼しているように思える。白哉は、越えたい強さ。一護に対しては、共に戦う仲間、友人として支えられる強さを持ちたい、と願ったのではないか。

 孤高の強さもある。しかし、仲間がいるからこそ、強くなれる者もいる。阿散井恋次は周りに仲間がいる限り、そして護るべき家族ができたことで、また新たな強さを手にしたはずだ。

(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))

■書籍情報
『BLEACH』(ジャンプ・コミックス)74巻完結
著者:久保帯人
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/bleach.html

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