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海外映画取材といえばこの人! 渡辺麻紀が見た聞いた! ハリウッド アノ人のホントの顔

ポール・W・S・アンダーソン

連載

第51回

ポール・W・S・アンダーソン(右)とミラ・ジョヴォヴィッチ(左)

── 今回は日本の同名ゲームの実写化映画『モンスターハンター』を手がけたポール・W・S・アンダーソンをお願いします。彼は『バイオハザード』シリーズ(02~16)で知られる監督。『バイオ』も『モンハン』も奥さんのミラ・ジョヴォヴィッチが主演しています。

『モンスターハンター』撮影中のポール・W・S・アンダーソン

渡辺 アンダーソンは、好きな監督のひとりです。ジャンル映画しか作ってないし、本人もそれにしか興味がない。徹底しているんです。私は彼の初期の作品、デビュー作の『ショッピング』(94)や『イベント・ホライゾン』(97)、『ソルジャー』(98)が大好きでした。『ソルジャー』は、実は切ない泣けるSF映画なんですよ、わたし的には。『ショッピング』には大きなミレニアム・ファルコン号のモデルが出てくるんですが、それは彼の私物だそうです。

── 本人に聞いたんですか?

渡辺 『バイオハザード』のときに聞きました。「みんな、オレのファルコン号、壊すなよー」って現場で叫んでいたそうです。

初めてのインタビューはその『バイオ』なんですが、まさにオタク少年が監督になった感じ。「今、オレは(ジョージ・A・)ロメロと(ジョン・)カーペンターやってるんだぁ!」って思って泣きそうになった」と突然、立ち上がって叫ぶんですよ。これはホンモノだって(笑)。

── 確かに(笑)。

渡辺 このときミラちゃんにもインタビューしたんですが、彼女のポールに対する感想は「彼は本当にゲームが大好きなのよ。あとはゾンビと爆発ね。おもちゃ屋でコーフンしている子、いるじゃない? まさにアレ。こういう作品には本当にぴったりの監督だと思ったわ」と笑っていました。

もちろん、このときはまだおつき合いもしてなかったのかもしれないですから、人生、どうなるか分からない(笑)。

── 調べてみると、ふたりは2007年に婚約して、2009年に結婚していますね。

渡辺 いつつき合いだしたのかはよく分からないんですが、確か『バイオハザード3』(07)でミラだけ来日したとき、ポールとは別れたから質問はダメ、と言われたと記憶しています。ということは、帰国した後に復縁して婚約したのかもしれませんね。

2002年、『バイオハザード』当時のふたり。十分イチャついている感じなので、おそらくこの頃には“始まって”いたんだろうなという気が。ちなみにミラはこの若さで、ポールとの結婚が3回目の結婚。

ちなみにポール本人は長身で、ルックスも悪くない。それでいてオタクで英国人というのは、私的にも最高ですね(笑)。

── 『ファントム・スレッド』(17)の監督、ポール・トーマス・アンダーソンと名前が似ていますけど、作風はまるで違いますよね。

渡辺 SF作家にも同じ名前の人がいるんですよ。わりと多い名前なのかも。実は、“トーマス”についても尋ねたことがあるんです。彼と間違われたことはないの?って。その答えが笑えました。

「まさか! 作る作品がまるで違うから間違えようがないよ……いや、待てよ。僕のところに、なぜかバーニーズニューヨーク(高級ファッションデパート)の豪華カタログが最近届いて、なぜ僕に?と不思議だったんだ。もしかして“トーマス”と間違えているのかもしれない!(笑)」

かわいいなーって。ミラちゃんもこういうところが好きだったのかもと思いますよね。

── なるほど。母性本能をくすぐるタイプなのかもしれないですね(笑)。

2020年2月、ミラは44歳で第三子となる娘を無事出産。子供たちは3人とも女の子で、長女のエヴァーは『バイオハザード:ザ・ファイナル』にレッドクイーン役で出演したことも話題に。かなり円満そうな家族です。

ところで、彼はゲームの実写映画化が多いですよね。『モンハン』で3種類のゲームを実写化したことになるそうです。

渡辺 『モータル・コンバット』(95)も同名ゲームです。実際に、自分が好きなゲームを手がけているようで、『バイオ』のときは「ゲームを好きな人がやる方が絶対に正しい。『トゥームレイダー』(01)なんて、ゲームへの愛情はまるで感じられなかった。アンジーのララ・クラフトはいいけどね」。さらに「映画の製作には長い時間がかかる。それだけの時間を費やすのなら、自分が好きな企画の方ががいいに決まってる」って。

同じことをギレルモ・デル・トロも言っていました。オタク監督の選択基準はどうもここにあるようですね(笑)。

ちなみに『モンハン』に関しては、来日していたときにゲームをプレイしてすっかりハマり、映画化権を取得したと言っていました。「まだ海外では知名度が低かった頃だよ。僕が大好きだったのはあの世界観。スケールがありリアリティがあった。それを映画でも絶対、再現しようとしてロケ地にもこだわったんだ」と熱く語っていました。

2010年の米サンディエゴでのコミコンで『少林寺三十六房』のTシャツを嬉しそうに着こなすポール。

── なるほど。ゲーム系以外の作品はどうなんですか?

渡辺 個人的には、ゲームをしないせいか、ゲーム系以外の方が好きかもしれません(笑)。さっき挙げた初期の作品とか、お馴染みの『三銃士』を自由奔放に翻案した『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』(11)です。このときもインタビューしたのですが、彼が燃えた『三銃士』が『新・三銃士』だったというのが、さすがだなーって。

「父に連れられて初めて劇場で観た『三銃士』(73)がリチャード・レスターの作品(『三銃士』)。その後、同じキャストで彼らの20年後を描く『新・三銃士』(89)が作られ、そこには熱気球が出てくるんだ。当時、24歳くらいだった僕は「ワオ! 三銃士が熱気球に乗ってる!」って大コーフン。今回、飛行船を出したのはそういう感動があったからなんだよ」

ちなみに『宇宙戦艦ヤマト』も好きなようで、「“ヤマト”もこの飛行船の起源のひとつだよ!」と言ってました。

この作品はドイツのヴュルツブルクのレジデンツで初めてロケされた作品なんです。それを3Dカメラで収めているんですが、これを観て3Dと世界遺産の建造物は相性がいいと思いました。ちゃんとドラマチックに見える。今の技術をフルに使って、いわばスチームパンク的なファンタジーに仕上げたところは大いに買っているんですが、世間的にはそれほど評判が良くなくて残念でした。

2011年、東京国際映画祭のオープニング作品となった『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』を引っ提げ来日。妖婦ミレディを演じたミラももちろん一緒。ミラは、自分は出演していない2014年の『ポンペイ』の際も、プロモーションでポールと同伴来日している。

── 続編を作りたいのにできなかったという成績だったようですね。

渡辺 そうですね。あとは『ポンペイ』(14)ですね。これは彼の入魂のテーマだったんです。ジェームズ・キャメロンの『タイタニック』(97)みたいな感じで。

当然、なぜポンペイなのか、知りたいじゃないですか? ポンペイを描いた映画となると、何度も映画化されている『ポンペイ最後の日』(26、35、50、60)を思い出すので、キワモノ的な印象が強い。そう考えると彼らしいチョイスなんですけれど、当人は真面目にポンペイが好きだったそうです。「一夜にして、すべてがなくなってしまったというとんでもないディザスター」な部分がドラマチックで良かったようで「これこそ僕のドリームプロジェクト!」と言っていました。

「屋敷やモザイクのデザイン、石畳の大きさや道路の幅、建物の高さもすべてリアルなんだ。街並みをサイバースキャンしてデータ化し、そこから割り出して寸法どおりに作ったんだ」

そうやってリアルに再現した中で『ロミオとジュリエット』的なロマンスを描くというアプローチも『タイタニック』に似てますよね。まあ、キャメロンの方はメガヒットして、ポールは撃沈しちゃいましたが、それも彼らしくて、ファンとしてはOKです!(笑)

── 彼の次回作は?

渡辺 調べてみたらジョージ・R・R・マーティンの短編『<喪土>に吼ゆ』の実写映画化みたいですね。マーティンは『ゲーム・オブ・スローンズ』(11~19)の原作者として映画界でも有名になったSFファンタジー作家。これもダークファンタジーで、主人公の魔女を奥さんのミラが演じるようですね。

ちなみに原作ではこの魔女の名前はグレイ・アリスなんですよ。綴りは違いますが『バイオ』と同じアリス。このへんにもちょっと縁を感じます。かなりグロい作品でもあるので、どう料理するかマーティンファンも気になると思いますよ!

※次回は4/13(火)に掲載予定です。

文:渡辺麻紀
(C)Constantin Film Verleih GmbH
Photo:AFLO

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