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デーモン閣下、大ファンのALICEとのコラボで生まれた楽曲「NEO」は令和のアンセムとなるか

リアルサウンド

19/12/10(火) 19:00

 80年代のロックシーンに彗星の如く現れ、聖飢魔Ⅱを率いてハードロック/ヘヴィメタルを一般的に知らしめたデーモン閣下。かたや、フォークソングとバンドサウンドを融合し、70年代のポップスシーンに新たな風を吹かせたALICE。世代を越えたエポックメイキングな両者が、デーモン閣下のニューシングルでがっちりとタッグを組んだ。昭和を生きた男達を再び奮い立たせる「チャンピオン」+「蝋人形の館」のようなアンセムソング「NEO」が誕生した。

(関連:May J.が踏み出した挑戦への第一歩 デーモン閣下らとのコラボで見せた新たな表現

■デビュー48年目で初、ALICEがプロデュース
 ALICEは、山口百恵の「いい日旅立ち」や自身の楽曲「昴-すばる-」といった今に歌い継がれる名曲を作詞作曲した谷村新司、ALICEのヒット曲「冬の稲妻」や「ジョニーの子守唄」などを手がけ、ソロでは1978年発表の「君のひとみは10000ボルト」でチャート1位を獲得した堀内孝雄、そして、ドラマーの矢沢透の3人によるグループ。1971年にシングル「走っておいでよ恋人」でデビューした。

 フォークソング一色だった、70年代のポップスシーン。その中でALICEはフォークソングとバンドサウンドを融合し、哀愁漂わせた男の背中をアツく歌い上げるスタイルで、70年代後半の音楽シーンを席巻した。それまでつま弾きながらしんみりするイメージだったフォークギターを、小気味良いテンポでジャカジャカと力強くかき鳴らす様子は当時の若者の憧れだった。メインのメロディ以上に耳に残る合いの手のコーラスも話題を集め、例えば「冬の稲妻」(1977年)の〈You’re rollin thunder〉の後に出てくるコーラスや、50代ぐらいの方は「チャンピオン」(1979年)に出てくる〈You’re King of Kings〉というコーラスを、学校で友だちとマネした覚えもあるのではないだろうか。また当時は谷村の軽快なトークも人気で、谷村がパーソナリティを務めたラジオ番組も人気を集め、ALICEをスターダムに押し上げる要素になった。音楽界だけでなくテレビ/ラジオ業界をも席巻したALICEは、1978年に日本人アーティストとして初めて日本武道館3days公演を開催した他、1981年に活動停止するまでに、後楽園球場(正式名称は後楽園スタヂアム)や阪神甲子園球場などでのスタジアムライブも数多く成功させている。

 デーモン閣下は、世を忍ぶ仮の姿の中学生時代からALICEの大ファンだったそう。コラボレーションのきっかけは、6年ぶりに再結成して現在活動しているALICEに密着したドキュメント番組、『ALICEの210歳「限りなき挑戦」2019』(フジテレビTWO)に、閣下がゲスト出演したこと。閣下は40年以上前からALICEのファンだったエピソードを改めてメンバーに熱弁し、満を持して楽曲提供をオファー。「もし可能であればみなさんで……」と言葉を続け、それに3人は快諾し、ALICEとしてはデビュー48年目にして、初のアーティストプロデュースを務めることになった。

■「NEO」は、令和の「チャンピオン」
 かくしてALICEがプロデュースしたデーモン閣下のニューシングルは『NEO』と名付けられ、表題曲は作詞を谷村新司、作曲を堀内孝雄、編曲を矢沢透が務めた。どこか懐かしい音色のシンセと70年代を継承したギターリフのイントロが、ALICE世代の心をグッと掴む。続けて閣下の〈You’re the only one〉との高らかな叫びとコーラスは、まるで「冬の稲妻」を想起させるようで、泣きのギターソロや閣下のシャウトも加わり、往年のハードロックの持つ骨太なサウンドが今に甦ったといった印象。メロディはゆったりとしていて、それだけにパワーと安定した音感が求められるが、哀愁を漂わせながらサビは爽快さもあり、悲しみを背に前をしっかりと向いているといった雰囲気だ。歌詞は、“鬱屈とした今を乗り越えて新しい自分になれ”と、これからの時代を生き抜くための翼を与えてくれるような内容。かつて〈立ち上がれ〉と歌って聴く者を鼓舞した、ALICEの名曲「チャンピオン」に通じるメッセージが感じられる。また谷村・堀内のレジェンドduoによる〈You can do it〉と歌う低音ボイスのコーラスや、ALICEの3人が参加した〈Wow Wow Woo〉と歌うシンガロングもあって、ALICEのDNAが往年のロックスピリットと融合した令和の「チャンピオン」と呼べるものになった。会社のシステムや家族の在り方など、変革が求められる現代社会において、時代のスピードに必死に追いついていこうと頑張っているミドルエイジ=まさしくALICEを聴いて育ったデーモン閣下と同じ世代を、もう一度奮い立たせてくれるだろう。

 「地球デビュー以来、経験のないほど緊張した」というレコーディングを振り返り、「今でも本当にそんなことがあるんだ、という感想を抱いている。無謀とも言える願いをぶつけて、長年抱き続けていた夢が叶うことになった。力がみなぎって、ガツンとしたものを聴かせてやるつもりなので覚悟してろよ!」と感無量の様子で語った閣下。ALICEのメンバーも「ALICEに対する愛をいっぱい感じさせてもらえた。我々3人からのプレゼントとして、一つの曲を生み出せたということがすごくうれしい。チャンスをくれたデーモンに感謝しています」とコメント。両者にとってとても有意義なコラボレーションになったと言えるだろう。

 またカップリングには、ALICEが活動停止前最後にリリースした「エスピオナージ」(1981年)のカヴァーを収録。男の哀愁を歌った楽曲で、ラテン調の哀愁漂うロックサウンドでシャウトするように歌う谷村のヴォーカルが絶品だった。同曲を、デーモン閣下がどのように歌い上げているか楽しみにしていて欲しい。また初回生産限定盤のDVDには特典映像として、デーモン閣下とALICEによる楽曲制作密着映像も収録されており、朝焼けに染まるビル群と空をバックに、閣下が月を見上げて雄叫びを上げているような「NEO」のMV映像も収録している。どことないノスタルジーを醸しながら、ビル群と半裸にギラギラのコスチューム姿の閣下が、絶妙にマッチした映像は必見だ。(榑林史章)

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