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「ポスト若冲?」との呼び声も高い日本画家、渡辺省亭 印象派をも唸らせた、優美な花鳥画の世界を紹介!

ぴあ

21/4/23(金) 18:00

《牡丹に蝶の図》1893年

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繊細な色使いと卓越した画力で人気を博した日本画家、渡辺省亭。明治時代から大正時代にかけて活躍した省亭の作品は、その色使いや繊細な表現などに注目が集まり、再評価の機運が高まっている。現在、東京芸術大学大学美術館で開催されている『渡辺省亭―欧米を魅了した花鳥画―』も、その動きの一つ。展覧会は5月23日(日)まで開催されている。

幕末の江戸に生まれ、生涯を浅草で過ごした渡辺省亭は、16歳で歴史画家・菊池容斎に入門。明治に入りパリ万博に日本画家として派遣され、当地で高い評価を受ける。その卓越した筆さばきは、現地で評判を呼び、印象派の画家たちに感嘆を与えたと言われている。ドガもその一人で、省亭に目の前で描いてもらっていたという。

第一会場 展示風景より

しかし、省亭はある時期から中央画壇とは距離を置くようになった。そのため、1918年に彼が亡くなった後は、次第にその活動や名前は忘れられていったという。

本展は、没後約100年の間に、知る人ぞ知る作家となってしまった渡辺省亭の業績を改めて振り返る回顧展。これまで知られてこなかった個人コレクションや、アメリカのメトロポリタン美術館などからの作品を元に構成されていく。

第一会場で渡辺省亭の生涯についての映像を鑑賞した後、作品のある第二会場へ。まず目に入るのは、迎賓館赤坂離宮の「花鳥の間」のために描かれた七宝額の原画。羽の細部まで描きこまれたカワセミやカモ、色鮮やかなロブスターが会場を飾る。無線七宝の技術を開発した濤川惣助の手によって七宝額絵化され、現在も迎賓館赤坂離宮に欠かせない装飾となっているという。

迎賓館赤坂離宮 七宝額原画

そして、彼の得意とした花鳥画が展示される。メトロポリタン美術館所蔵の《花鳥魚鰕画冊》は省亭が得意としていた花鳥だけでなく、たゆたう金魚や跳ねるカレイなども描かれており、その表現力の幅広さに驚かされる。

《花鳥魚鰕画冊》より

また、師匠である菊池容斎から学んだ歴史画や風俗画なども、省亭は数多く描いていた。あらゆるものを省亭は巧みに描くことができたのだ。

《寿老松竹梅鶴亀図》1908年

続いて、会場全体が華やかな雰囲気に満ちた第三会場へ。展覧会のポスターやチラシにも採用されている《牡丹に蝶の図》のほか、繊細な描写を一点ずつじっくりと鑑賞できる、工夫をこらした空間構成となっている。

《牡丹に蝶の図》1893年
《群猿》
展示風景

ちなみに、省亭は自ら編集した多色摺木版による雑誌「美術世界」を発行もしていた。江戸時代からの多色摺木版の技術を蘇らせ、北斎などの作品を翻刻掲載していた。その美しさは日本のみならず、海外でも評判を呼び、数多く輸出されていたという。

「美術世界」春陽堂刊 1890~94年 

花鳥画はもちろんのこと、あらゆる分野で卓越した技術力、表現力を発揮していた渡辺省亭。この展覧会をきっかけに、多くの人々に注目される存在になることは確実だ。この機会に、彼の名前と作品をしっかりと覚えておこう。

取材・文:浦島茂世

『渡辺省亭―欧米を魅了した花鳥画―』
3月27日(土)~5月27日(日)、東京藝術大学大学美術館にて開催
※会期中展示替えあり
https://seitei2021.jp/

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