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Entertainment Live Magazine ぴあMUSIC COMPLEX

古家正亨が2021年のK-POPを総括。オーディション番組の現在を語る!【前編】

PMC編集部

第8回

2001年日本初の韓国音楽専門番組『Beats-of-Korea』(FM NORTH WAVE)を立ち上げて以来、K-POPのDJ、司会・MC、日韓大衆文化ジャーナリストとして活躍する古家正亨氏が登場。日本の音楽チャートを席巻していた2021年のK—POPシーン、そして、オーディション番組とその可能性について、総括!前編後編にわたりお届けします。

── 2021年のK-POPを振り返ると、どのような1年だったと思われますか。

古家 グローバルに見るとBTSの躍進があって、そこから他のグループの人気もしっかりと定着していった1年だったと思います。挙げ出すとキリがないのですが、SEVENTEEN、NCT、ENHYPENほか、日本でもおなじみのアーティストたちが名を連ねますが、『PMC Vol.21』の表紙を飾ったStray Kidsもそうで、韓国のビルボードと言われているGAONチャートの音盤(CD)セールスチャートで100万枚越えのアーティストがぞろぞろと出ているんです。ただ、デジタル(配信)チャートに目を向けると、BTSの人気は別格なので置いておいて、アイドルグループ発の国民的ヒットと言える曲はかなり限られてきます。韓国国内でダントツの人気を誇る女性ソロシンガーのIUやSMのガールズグループaespa(エスパ)のヒットもありましたが、デジタルチャートは主にテレビ番組の影響が大きく、OST(オリジナルサウンドトラック)などの企画モノがチャートの上位を席巻する傾向が強いんです。そのなかでも特にMnet発信の番組からのヒットは多く『STREET WOMAN FIGHTER』(女性ダンサーたちによるリアルなサバイバル番組)や『SHOW ME THE MONEY』(韓国のHIPHOPブームを牽引するラッパーのサバイバル番組)関連の楽曲が人気を集めました。

『STREET WOMAN FIGHTER』(Mnet)

── 目下、『SHOW ME THE MONEY 10』のサントラが大ヒット中ですね。

古家 近年、そういった流れが続いているんですが、最新の国際レコード産業連盟(IFPI)の統計では、音楽市場規模の上位5ヵ国(アメリカ、日本、ドイツ、フランス、イギリス)は不動の5か国と言われてきたんですが、6位が韓国なんです。もしかすると今年の数字で上位5位に入ってくるんじゃないかみたいなことを言われていますが、この数字は国内だけの売り上げではなく、海外で購入された、いわゆる輸入盤の数字もカウントされますので、一概に韓国国内の数字が伸びているとは言えないんですね。一見華やかに見えるんだけれども、比較的国民ヒットが出にくい時代であるのは間違いないのかなと。

【SHOW ME THE MONEY 10】(Mnet)

── BTSが世界的ヒットを記録するなか、たくさんの実力派グループが出てきて、戦国時代のようにも感じるのですが。

古家 そうですね。日本で話題になっているK-POPアイドルの中でも、韓国本国では、なかなかテレビの音楽番組に出演できないくらい、飽和状態になっているのは間違いありません。そのため、その中で抜きん出るために海外市場の攻略が必要不可欠になっているんです。先日開催された「2021 Mnet ASIAN MUSIC AWARDS(MAMA)」の専門家審査員を務めた関係で今年の韓国音楽界の関連リサーチ資料をかなり見ましたが、数字的には、過去最高と言われた昨年の音楽産業関連の売り上げを今年は上回るとみられていて、絶好調です。ただ、その売り上げの多くをBTSをはじめとする一部のアーティストの売り上げにかなり依存している傾向が強いので、喜んでばかりはいられません。その中で個人的に興味深かったのはaespaのヒットです。SMエンターテイメントが久々に放った満塁ホームランみたいな、新人のガールズグループをうまく軌道に乗せました。デビュー曲「Black Mamba」はあまりヒットしませんでしたが、僕も、その「自分と自分のアバターがメンバーである」という独特なコンセプトを理解するのに時間がかかりましたが、気が付けば時代はメタバース社会をめざしていた。時代がaespaに追いついたんですね。

aespa「Next Level」MV

── 「Next Level」「Savage」で見事にブレイクしましたね。

古家 90年代後半から常に韓国のアイドルシーンを牽引してきたSM エンターテイメントの底力というか、創業者イ・スマンさんのプロデューサーとしての手腕を改めて見せつけられました。そういう意味でもaespaの年だったなと。ガールズグループではMnetのサバイバルオーディション番組『Girls Planet 999』(以下、『ガルプラ』)から誕生したKep1er(ケプラー)など、デビューを控えているガールズグループも多いですし、僕はデビューしたばかりのBilllieも好きですが、HYBE(BTSらが所属)もガールズグループをデビューさせる予定ですし、すでに大ヒット中のIVEなど、このまま、来年はガールズグループ隆盛の年になるのではないかと思うんです。

── オーディション番組も、2020年から引き続き日本でも大人気でしたが、どうみていますか。

古家 オーディション番組の制作は、引き続き行われると思います。2022年もすでに韓国では、『Boys Planet』や『I-LAND2』の放送が予告されていますし、日本でもJ.Y. ParkさんがNizi Projectのボーイズ版、HYBE JAPANのオーディションもありますよね。盛り上がるとは思うんですけど、供給過多になってしまう気がするんです。

── 確かに。そういう中、注目していた番組はありますか。

古家 『ガルプラ』ももちろん観ていたんですが、『LOUD』が、最初はそれほど大きな期待はしてなかったんですが、本当におもしろかったですね(笑)。

LOUD【本編#01】(HD版)
圧倒的なパフォーマンスが続々! プロデューサーの評価は…!?

── 「Nizi Project」のJ.Y.Parkさん(JYPエンターテインメント)と「江南スタイル」が世界的に大ヒットしたPSYさん(P NATION)、ふたりのプロデューサーが候補生を奪い合うオーディション番組ですね。期待していなかったんですね(笑)。

古家 『LOUD』ってSBSという地上波が放送した番組ですよね。地上波って放送法による制約がきついので、Mnetなどのケーブルテレビ局が作る番組のような自由度に限りがある。同じSBS制作の『K-POPスター』など、話題性はあっても大成功したかというと、視聴率も含めてなかなか結果は伴わなかったと思うんです。でも『LOUD』の場合、オーディション参加者の魅力はもちろん、プロデューサーとして出演したJ.Y.Park、PSY両氏のケミ(化学反応)と人間味あふれる審査も、見どころのひとつだったと思います。特にPSYさんの株は、この番組で爆上がりだったんじゃないでしょうか。

── なるほど。韓国のオーディション番組がここまで大きくなったのって?

古家 1977年から地上波のMBCが始めた『大学歌謡祭』という音楽コンテストがあって、ここから一般人が有名人になれるチャンスが本格的にできて実際にスターが生まれていったんですね。でも年々『大学歌謡祭』の人気が落ちていき、90年代後半になると、本格的なアイドル史の幕開けとともに、SMエンタテインメントを中心に芸能事務所の練習生になる流れが生まれるとともに、スターへの道の多様化が進みました。今のオーディション番組の流れはMnet が『アメリカンアイドル』をリメイクしたオーディション番組『スーパースターK』を始動させたことに起因します。この番組がなぜウケたのかというと、芸能人になるプロセスの難しさ、そのハードルを一気に下げたからなんですね。韓国の場合、日本と比べて芸能人になるといってもその明確な手段が少ない。そんな状況で、年齢も経験も不問、誰でも参加できるオーディションを売りにしたこの番組は「自分も芸能人になれるかも」という勇気と希望を、多くの国民に与えたと言われています。つまり、芸能人になるための努力よりも、これまでその人が歩んできた人生のプロセスを評価したことで、今まで歩んできた人生は決して無駄ではなかった。特別な訓練を受けずとも、実力があれば、評価されるんだという新しいスターへの可能性を提起したことが、受け入れられたんですね。

── 社会的な背景もあるんですね。

古家 そうですね。また、これと並行して、Mnetを中心に各芸能事務所が自社のアイドルをデビューさせるサバイバル番組を放送していくようになります。これら一連のオーディション番組やサバイバル番組の良さは、デビューまでの過程をみせることで、最初から特定のファンダムがある状態でデビューできることにあります。時間とお金をかけてデビューさせても、音楽番組に出ることも大変なんですが、デビューする段階で固定ファンもいて、テレビ局とのつながりもあるとなると、そこである程度ビジネスが成立することになるわけです。近年の番組と紐づかないとなかなかヒットしないというのは、こういう流れがあるわけです。

取材・文=PMC編集部

DATA

●オーディション番組『LOUD』とは?
「Nizi Project」のヒットプロデューサーであるJ.Y.Parkと、「江南スタイル」で世界的人気を誇るアーティストのPSYが、「自ら口を開き、作品をどのようにしたいという意志を持った、本物の才能を見つける」という想いから企画されたオーディション番組『LOUD』。韓国では2021年6月の放送開始から大きな注目を集め、初回放送は韓国で異例の11.3%という同時間帯のバラエティ帯で1位の高視聴率を記録。下記で全15話、配信中
dTV『LOUD』リンク:https://video.dmkt-sp.jp/ft/p0007943
dTV『LOUD』公式YouTubeリンク:https://www.youtube.com/channel/UCf3VIuJGXWEOoNAp59Kk7Tw

●大注目オーディション番組『LOUD』より
パフォーマンス音源がユニバーサルミュージックより配信中!
スペシャルCDが12月15日にリリース決定!
ユニバーサルミュージックLOUD公式サイト:https://www.loud-japan.jp/
『LOUD』音源配信リンク:https://lnk.to/LOUD_RTM
『LOUD』ユニバーサルミュージック公式プレイリストリンク:https://lnk.to/Digster_LOUD

『LOUD -JAPAN EDITION-』※完全生産限定フォトブック盤Team JYP Ver.

『LOUD -JAPAN EDITION-』※完全生産限定フォトブック盤Team P NATION Ver.

『LOUD -JAPAN EDITION-』※限定2CD+DVD盤

『LOUD -JAPAN EDITION-』※通常盤

プロフィール

古家正亨

ラジオDJ/テレビVJ/イベントMC/上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了/北海道北見市出身
https://twitter.com/furuyamasayuki0?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor
https://www.sunmusic-gp.co.jp/talent/furuya_masayuki/

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