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シド『慈雨のくちづけ』インタビュー「再会と永遠の愛、もっと最高の景色を一緒に」

ぴあ

シド

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2021年5月15・16日、河口湖ステラシアターでスペシャルライブ<SID LIVE 2021 -Star Forest->を開催し大成功に収めた、4人組ロックバンド・シド。7月18日には、中国で人気のアニメシリーズ『天官賜福』の日本語版オープニングテーマとなった新曲『慈雨のくちづけ』をリリースする。

今回のインタビューでは、約1年4ヶ月ぶりの開催だった5月のライブを振り返ってもらうとともに、新曲の制作話、メンバー一人ひとりのソロ活動、そして9月に開催予定の全国ツアー……シドのメンバーが今抱える、様々な“思い”に触れた。

会えない時間が開けば開くほど、会いたい気持ちが募った

ーーまずは、5月15・16日に河口湖ステラシアターで開催されたスペシャルライブ<SID LIVE 2021 -Star Forest->について。コロナ禍以降久しぶりの有観客ライブで感じたこと、印象に残っていることからお聞かせください。

マオ 前回のライブから1年4ヶ月ぶりだったのですが、何事もなく普通に活動をしていたら1年4ヶ月会えないことってなくて。前向きに考えると、会えない時間が開けば開くほど、会いたい気持ちが募るから、それによる爆発力を期待していました。そしたら、その上をいくような爆発力のあるライブだったんですよ。

声が出せない暴れられないなどいろいろな制限のある中で、お互いにぶつけられるものって気持ちしかないけれど、これもすごくよかった。お互いに目をつむってライブをやっていたような、ただただ久しぶりに会えたことだけで嬉しい。すごく気持ちでぶつかり合えた気がしました。

ーーファンのみなさんはマスクを付けての参戦だったと思いますが、マスク越しに伝わってくる表情を感じ取ることも?

マオ 目で伝わってくるものが大きかったですね。今回、制限のある中で制限を守っていては成り立たないようなセットリストにあえて挑戦しました。「時代がこうなってしまったからといって俺たちのスタイルを曲げない」という意思表示とともに、「制限を守りながらでも絶対に盛り上がれる。むしろ新しいノリが生まれるだろう」という挑戦的なライブでもあって。やる前よりやった後の方が意味を感じられるライブでしたね。

次のライブをやるときは、もっと最高の景色を一緒に見に行けるのかなと。そんな気持ちになりました。

ーー新しい可能性が見えてきたんですね。Shinjiさん、ゆうやさん、明希さんはいかがでしょう。

Shinji ライブってこんなに楽しかったっけ?と思うくらい、本当に2日間楽しかったです。そして、これまでツアーとかで死ぬほどライブをやっていたことで、当たり前になっていた自分がいたなと気づきました。久しぶりにライブをやってみたら、これだけ力を入れられるのか!って。

普通なら1年以上の期間が開いてしまうと、ブランクというかギター裁きも若干落ちてしまうことがあるのですが、それに勝るライブへの情熱や思いがあった。久しぶりで上手くいかなかったとか一切思わなかったし、もうすでに早くライブがやりたいですね(笑)。すごく楽しかった。

ゆうや ライブをやってみなさんに会えたことがすごく嬉しくて。僕、あまりホームシックにならないタイプなんですけど、<Star Forest>に関してはホームシックから解き放たれたような感覚を覚えました。海外にいてずっと味噌汁が飲みたくて、日本に帰ってきてやっと飲めた感じというか……当たり前のように今までずっといただいてきたものがいただけなくなると、こんな気持ちになるんだ!と。

だから、ライブをやってすごくスッキリして、嬉しくて、やっぱりここだよねと思える場所を再確認できた。それがすごく良かったですね。

明希 もうみんなに言いたいことを言われてしまったんですけど(笑)、愛情をすごく感じた2日間でした。1年4ヶ月延期してようやく開催できたライブなので、そこにいてくれる人たちへの感謝が募りましたね。

ーーライブ当日はマオさんの「メンバーの個性が見たい」というリクエストから実現した楽器隊のソロコーナーもあったとか。いかがでしたか?

Shinji 普段やらないことだったので、ちょっと緊張しましたね。自分の出番は最後だったのですが、ドラム、ベースのソロを見ながら出番を待っている時はドキドキしていました(笑)。

ゆうや 僕は楽しかったし、楽しみだったんですよ。ソロのとき、自分の中で二部構成にしていて。前半は「いつものゆうやだね」と今までの僕を思い出してもらえるパート、後半は「ゆうやってこんなタイプだったっけ?」と意外性を見せるパートという構成にしました。どちらかというと、どういう反応が来るかすごく楽しみになりながら演奏していましたね。

明希 僕は終わってみると楽しかったけど、それまではプレッシャーみたいなものがありましたね。一人の時間だからこそ、全体的な見え方とかも気にして最後までリハ(ーサル)をやっていたので。そうやって調整している時間は少しだけ不安もあって、終わった後に「楽しかった」と気づきました。

華やかな趣と美しさを乗せた新曲『慈雨のくちづけ』

ーー<Star Forest>の中で中国の人気アニメ『天官賜福(てんかんしふく)』の日本語版オープニングテーマを担当すると発表しました。日本のアニメ主題歌は数多く手掛けられていますが、中国アニメの主題歌は初めてかと思います。中国アニメや『天官賜福』について、どのような印象を受けましたか?

マオ 今、中国アニメがすごく来ていると聞いていて、『天官賜福』のビジュアルを初めて見たとき、中国アニメは「美しさ」が突き抜けているかもしれないと感じました。

こと『天官賜福』に関しては、シドのファン層の好みと近いところがあるのではないかとも。シドのファンには、瑞々しさやキレイさ、切なさを表現した世界観、歌詞、曲が好きな人たちが多いと感じているので、いい感じにハマるのではないかと思いました。

ゆうや マオくんが言っているように、僕たちのジャンル感や立ち位置に合わせていきやすいだろうなと感じました。アニメに限らず中国の作品は高貴な雰囲気を纏っている印象があったので、その雰囲気を崩さずにすごく合わせることができるなと。自分で自分たちのことを高貴というのもおこがましいかもしれないけど、そんな印象を受けましたね。

Shinji 僕は中国アニメにあまり詳しくなかったのですが、今回関わらせていただいて思ったのは、日本のアニメ作品より優しい印象というか……ギターの音とかもゴリゴリしていない感じがハマりそうだなと。そういう意味ではシドはゴリゴリした曲ばかりやっているバンドではないから、二人が話したようにハマりやすいと思いますね。

ーーたしかに、シドも『天官賜福』も「美しさ」「高貴感」を感じます。明希さんは中国アニメや『天官賜福』について、どう思われますか。

明希 僕が勝手にイメージを抱いている中国の華やさや趣を、『天官賜福』のビジュアルを最初に見たときにも感じました。とはいえ、『天官賜福』に関わる以前は中国アニメに全く詳しくなかったから、まずは主題歌をやらせてもらったこの作品をもっと深くまで知っていけたらと思います。

ーー今回タイアップとなった新曲『慈雨のくちづけ』の楽曲制作では、そういった華やかさや趣を取り入れられたのでしょうか。

明希 作品のタイアップ曲をつくるときはいつも「自分がその世界に降り立ったとしたら、そこで流れてくる・聴こえてくる音楽とは?」を考えています。『慈雨のくちづけ』も同様に『天官賜福』のビジュアルから受けた印象を音でも感じられるようにしました。

また、お話をいただいたときは設定と公開されていたビジュアル、ちょっとした曲調の要望があったのでそれらを組み込みつつ、自分たちらしさをいかに同居させていくかも考えていました。加えて新しさを少しでも表現したいという気持ちもありましたね。

ーー『天官賜福』のビジュアルから感じ取れる瑞々しさや透明感のようなものを、『慈雨のくちづけ』のメロディからも感じました。

明希 たしかに。作品に幻想的なイメージがすごくありますよね。意識していたわけではないですが、無意識にそのイメージを感じ取って入れていたのかもしれません。

ーーマオさん、歌詞についてはいかがでしょう。タイアップ発表の際には「曲と『天官賜福』の世界観が一番綺麗にリンクする部分を歌詞でも表現できました」とコメントしていました。歌詞を手掛ける上で作品とリンクさせた部分について教えてください。

マオ 先ほども少しお話しましたが、今までいろんなアニメのタイアップを担当してきた中でも、オファーをいただいて初めて『天官賜福』を見たとき「美しさ」をすごく感じました。この「美しさ」にどう歌詞で寄り添えるかが重要だと思い、中国のアニメではあるけれど日本語の美しさをふんだんに使い、歌詞の中にしっかりとしたストーリー性を持たせ、もちろんアニメのテーマにも合う歌詞を書きたいなと。

そこで、普段歌詞を書くときにはあまりしないのですが、今回は歌詞の中に使いたいと思う日本の美しいと感じる言葉を複数出してみたんですよ。「慈雨」「深紅」「甘美」など。そして、『天官賜福』のストーリーを聞いて、「再会」「永遠の愛」というテーマ性を受けたので、この二つをテーマにストーリー仕立ての歌詞にしています。歌詞を書き終わったとき、これは作品の世界観とハマる歌詞に仕上がったんじゃないかなと思いましたね。

ーー歌詞の美しさもさることながら、マオさんの歌声の高音がとても美しくて。歌い方で意識した点があれば教えてください。

マオ 曲調が切なかったので、一番意識したのは「切なさ」です。あと、いつも高音を出すときハスキーなのですが、『慈雨のくちづけ』の高音は突き抜けて透き通っている歌声を目指しました。

「美しさ」に関しては歌っているときにそこまで考えていなかったのですが、これまで歌ってきている経験から自然と意識していたかもしれませんね。

ーー華やかさ、美しさなどの要素が詰まった『慈雨のくちづけ』、Shinjiさん、ゆうやさんがレコーディングの際に意識された点はありますか?

(お互いにどうぞどうぞ)

ゆうや 聴いた瞬間に受ける印象の核がデカい曲なので、まずそれを崩さないことは意識しました。

あと、最近自分の中ですごく意識しているのが、力を入れるところは入れて、抜くところは抜く。リレーで例えるなら、バトンを持っているときは次の人へバトンを繋ぐまで全力で走るけど、バトンを渡したら相手にゆだねるように、やるべきところとやらなくてもいいことってあるような気がしていて。それは今回もすごく意識して演奏しましたね。

Shinji ゆうやと同じく差し引きは意識していますね。たしかに瑞々しさや透明感のある雰囲気の曲ですが、それは中国の楽器がふんだんに入っているからなのかなと。Aメロはしっとりしていますけど、それ以外のところのギターは激しく刻んでいて、ギターソロも情熱的なんですよ。ガンガン弾く分には勢いでいけるのですが、Aメロのクリーントーン(透き通った音色)がひたすら続く部分は逆に演奏が難しい。その差し引きが大事な楽曲なので、おそらくライブで弾くのは難しいだろうなと感じています。楽しみでもありますね。

「秘めていた想い」の伝え方

ーー『慈雨のくちづけ』の「溢れ出したら戻れない伝えたい想い」「秘め続けた想い」というフレーズがとても印象的でした。家族・友人・ファン・メンバーでも構わないので、シドのみなさんが「秘めていた想い」を伝えるとき、どのような伝え方をするのか知りたいです。

マオ 「歌に乗せて伝える」ですかね。自分の気持ちと歌詞がリンクしている曲を見つけて、想いを伝えたい相手の前で歌う。それで伝わったらいいですよね。面と向かって言えないことでも恥ずかしさがなく。だけど、「この人もしかして……」と察することもできる。そんな伝え方はどうでしょうか?

ーーいいですね。自分の言葉で伝えるより伝わりそうな気がします。

マオ ね。好きな人への告白にも使えそうな伝え方だと思いますよ。コロナ禍が落ち着いたらですけど、数人グループでカラオケに行って、そういう想いの伝え方とかしたらドキドキしますよね。「もしかして、私のこと……?」って。二人きりでそれをされたらちょっと怖いけど(笑)。逆に「勇気がない人!」と思われてしまうかもしれないですね(笑)。

一同 (笑)。

ゆうや 歌詞が書けたら、歌詞で伝える戦法はめちゃくちゃいいなと思いました。僕は書けないから……。

ーーそんなゆうやさんは「秘めていた想い」を伝えるとき、どのような伝え方をしますか?

ゆうや こういう「インタビュー」じゃないですかね。「あのレコーディングのときどうだった」「あのライブのときこうだった」とかメンバー内で聞かれることも言うこともないから。インタビューで初めて知る想いとかもあって、へぇって思うことは結構多いんですよ。ファンのみなさんにも面と向かって言葉を発表する場もないし、秘めた想いを伝えるのはこういうところ(インタビュー)ですよね。だから、みなさんにはいっぱいインタビューを読んでもらいたいと思っています。

ーーメンバー同士でもファンの人にとってもインタビューは想いを伝える貴重な場ということですね。Shinjiさんはいかがでしょうか。

Shinji 伝え方……。難しいですね……。

ーー今、想いを伝えづらい世の中だと思うので……。

Shinji 「ポイズン」ですね。僕もSNSにはちょっと息苦しさを感じていて。それこそ「ポイズン」じゃないですか。

明希 ポイズン(笑)。(反町隆史さんに)憧れすぎているんだよな……。

Shinji (笑)。僕はフォロワー数もそんなにいるわけじゃないけど、だからといって思っていることを全て書いてしまったらダメだと思うんですよ。そういう意味では、今やっている「オンラインサロン(シド Shinjiのオンラインギタースタジオ)」はすごく素直な気持ちを伝えられるなと。最近、コラムのようなものを始めて、そこで自分の素直な気持ちを書いています。文章だから伝えられること、自分を好きでいてくれる人たちに囲われているから伝えられることってありますね。

ーーたしかに、信頼してくれている人だと安心して発信できますよね。明希さんはいかがですか?

明希 ずっと考えていたんですけどね。普段のコミュニケーションがどれだけ取れているか、どれだけ深い関係性なのか、すべてを伝える必要があるのか、いろいろ考えると一概に何がいいのか断言できないなと。でも、自分は「秘めずに面と向かってちゃんと伝える」かな。

シドとソロ、どちらの活動も境界線は引いていない

ーーそれぞれのソロ活動についてもお聞かせください。マオさんは<Acoustic Tour 2021 「箸休めNight」>真っ只中ですが、現時点で印象に残っていること、感じていることはありますか?

マオ そもそも「箸休め Night」のタイトルに込めたコンセプトからお話すると、例えばシドがステーキだったら「箸休め Night」はスープやサラダみたいな(笑)。そんな感じですごく和やかに楽しめるようにしています。

たまたまコロナ禍にもハマるようなスタイルをコロナ禍前から続けてきていたので、今までとほとんど変えずにできているのは幸運なことです。もちろん感染対策はしっかりしていますけどね。積み上げてきたものをやっていくだけかなと。すごく楽しいですよ。

ーーソロも今年で5周年ですもんね。

マオ そうですねぇ。ソロの方はアルバムを一枚も出していないから、いつか出してみたいな。10年目くらいに出せたらなって。

ーー10年目……?<br>
ゆうや もっと早く出しなよ!(笑)

マオ ふふふ(笑)。10年は開き過ぎかもしれないですけど、まったりのんびり楽しんでいけたらと思います。

ーーソロに対する考え方は5年で変わりましたか?

マオ 今は、シドとソロであんまり境界線を引いていないかもしれないです。歌うスタイルは違うから、歌うときのテンションは変えていますけど、それ以外は俺にとって変わらないなと。

初期の頃はすごく分けて考えていましたけどね。ファンのみなさんも頑張って分けようとしていたと思う。でも今は「シドもソロも俺(マオ)が歌っている」と一つに見てくれている感じがするから、いい感じになってきたと思います。

ーー明希さんも現在<AKi Tour 2021 『reunite』 - Unplugged Live ->中ですが、シドの活動との違いなどありますか?

明希 ソロはシドよりもっとコアな音楽の表現を求めていて。ライブはこの時代なので制約を設けないといけず、本当に心苦しいのですが、その中でもしっかり音楽を届けられるようにアコースティックに変えました。自分のオリジナル曲は割とハードな音だけど、コード・メロディすべてをアコースティックに変える作業は、忙しさも感じつつ音楽漬けの日々ですごく充実しています。1日2回ライブをやることも初めてだったので、しっかりと時間をかけて音楽に向き合えるのは楽しいですね。 また、新しいミュージシャンとお会いできて、一緒に曲を出せるのは、とても刺激的です。

ーー明希さんはツアーだけでなく、オンラインサロン『Resonants』も活発に動かしていますよね。

明希 そうですね。インスタライブ風にちょっとした演奏をしたり、自分の曲を弾き語りで歌ったり。音楽に寄せたようなサロンですね。あと、ファンの方と触れ合うために、お悩み相談もしています。ネットを通してすぐにリアクションが見れるので、どれもすごく楽しんで活動しています。

ーーお悩み相談の数は多いんですか?

明希 すごく多いですね。最初は取り上げるお悩みをランダムにしようと思っていたんですけど、気づいたらきたお悩みすべてに答えています。習慣づきましたね(笑)。

ーーカウンセラーみたいですね(笑)。Shinjiさんも先ほどオンラインサロンのお話をされていましたが、ファンの方へギターを教えているんですよね?

Shinji ギター講師的なことをしています。なるべく参加者のみなさんの顔を見ながらやりたいなとZoomを使って。いざ人にギターを教えてみると、自分の実にもなると感じています。勉強も人に教えた方が頭に入るとか言うけど、ギターも同じなんだなと実感していますね。

しかも、ギターを教えている身なので、ライブよりもプレッシャーを感じて(笑)。一人だし、先生だし、完全に生配信だし、アーカイブに残るし……いつも以上の緊張感がまた面白いです。

ーー生徒のみなさんの雰囲気はどういう感じなのでしょう。

Shinji この前、簡単な曲と難しい曲を交互に教えてほしいと言われたんですよ。簡単な曲のときは、みんなも一緒に弾いたり、僕がちょっと弾いてみてと言えば弾いてくれたりして。でも、難しい曲になった途端、みんなZoomのカメラをオフにし始めたんですよ(笑)。だから、弾いてみてとも言えなくて。そんな感じで日々教えています。

ーーShinji先生が考える、ギターを続けるコツをお聞きしたいです!

Shinji みんな初めはコードから覚えようとするけど、Fコードで辞めていくんですよね。難しいのは分かるけど、Fより難しいコードもいっぱいあるから、一つひとつ覚えていこうとするとつまらなくなってしまう。だから、自分のすごく好きな曲を頑張ってコピーしていく方がよくて。その方が身体に入ってくると思いますね。

ーー勉強になります…! ゆうやさんもオンラインサロン「シドゆうやにドラム習ってみませんか?」でドラムキッズのみなさんと交流していますよね。感じたこと、得たことはありますか?

ゆうや ドラムって置く場所がないとか、音が出せないとか、いろいろな理由でなかなか家だと練習ができない。手と足の動きがバラバラでどう動かしていいか分からないから難しそう。など負のイメージからスタートする人が多くて。僕もずっとそうだったという話を伝えつつ、不可能な中での練習法を提案しています。

ドラムって実はギターやベースと違い、手と足さえあれば楽器を持たなくてもどこでも練習できるんですよ。手足の動きも実はバラバラじゃないんですよとか。カチカチになった頭を解すようなヒントをお伝えしていますね。

ーー子どもたちの反応はいかがですか?

ゆうや すごく面白いですよ。スタジオに入ってドラムを演奏してみた動画を送ってくれて、それについてまた僕がアドバイスをするんですけど、人がやっているのを見るのが楽しくて。

ーー未来のドラマーたちが生まれていく瞬間を間近で見ているわけですね。

ゆうや そうなんです。僕自身、ドラムに関してはすごく遠回りをしてきたから、もうちょっと近道があっただろうなと思っていて。みんなにはちょっと近道を使って上手くなってもらいたいです。

「PPAP」から学んだ需要と供給

ーー2019年のインタビューで「みなさんが最近出会ったエンタメについて一つ教えてください」とお伺いしたのですが、2年ぶりに同じ質問をしたいなと思います。いかがでしょうか?

ゆうや 「PPAP(Pen Pineapple Apple Pen)」ですね。僕、YouTubeチャンネル(『ゆチャン』)をしているんですけど、YouTubeってすごく需要と供給の戦いだと思っていて。自分のやりたいことだけを動画にしても、見ている人の求めるところにいけるわけではないと、1年続けて分かってきたんですよ。その中でPPAPって再生回数1億超え。1億ってなんだよ、と思いません?

ーーたしかに。

ゆうや PPAPのことは今までも普通に知っていたし見てもいましたけど、数字を意識した上で見たらすごく面白いんですよ。体のちょっとした動き、カメラの切り替わるタイミング、カツラの位置、すべてが計算されている気がして、これは1億回いくなって納得しました。

ーーカツラの位置まで計算されているんですか……。

ゆうや PPAPのほかに「BBBB(Beetle Booon But Bean in Bottle)」という動画があるんですけど、それはカツラの位置が下にあって、おでこがやたら狭いとか。動画によって細かい部分を変えているのもすごい。

だから、盗めるところがいっぱいあるんだろうなと。お笑い的にではなく、需要と供給について掴めるよい教材だと思いましたね。それこそ、<Star Forest>のドラムソロはそこをすごく模索しましたよ。「ライブに来てくれた方たちから見えるゆうや」と「自分が今見せたいゆうや」を二部構成にしてみようと思えたのは、PPAPから活かされた事例の一つです。

ーーまさかソロパートのアイデアがPPAPから来ているとは思いませんでした……! Shinjiさんはいかがですか?

Shinji 今、興味があるエンタメでもいいですか?

ーーもちろんです。

Shinji 歌舞伎や落語などの伝統芸能ですね。今まで見たことがなかったので、いつか観に行きたいなと思っていて。昔はそんなに興味がなかったのに、年齢を重ねるごとにどんどん歴史に楽しさを感じているんですよ。その中でも伝統芸能って今まで全く触れてこなかったから、時間ができたら行きたいなと思います。

ーー古き良き日本の芸能を知るのも楽しそう。明希さんが最近出会ったエンタメは?

明希 僕は映画ですね。家にいることが多くなったので、洋画邦画関係なくいろんな映画を見ています。

最近家で見てすごく面白いと思ったのは、宮沢りえさん主演の『紙の月』。すごく良くて、見終わったあともう一回見ちゃうくらいでした。あと映画館に観に行ったのは『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』ですね。

ーー『シンエヴァ』どうでしたか? いろんな考察が飛び交っていますよね。

明希 いろいろ考察するのが、みんな楽しいのかなって。僕も楽しかったですよ。何より自分が生きている間にちゃんと完結してくれたから嬉しかったです。

ーー本当にそうですね、完結してよかった……。マオさんは最近出会ったエンタメ、いかがでしょう?

マオ 少し前なんですけど、2020年10月に配信されたLINDBERGのオンラインライブはすごく感動しました。ヴォーカルの渡瀬マキさん、体調を一度崩されてから復活して歌っていらして。コロナ禍で落ち込んでいる人もファンの人たちも事情を知っているからこそ、前向きになれる部分があったのではないかと。俺も一度体調を崩しているから、そのことを重ねながら、お酒も入っていたのでちょっとだけウルっときましたね。あはは。

ーー勇気づけられる部分もあったんですね。

マオ すごく勇気づけられました。ほかにも配信ライブはいくつかチェックしていましたけど、LINDBERGのオンラインライブは気持ち的にすごく刺さったんですよね。すごくいい経験でした。

「当たり前じゃないんだ」9月開催予定の全国ツアー

ーー9 月には日本全国各地のZeppを巡るツアーが予定されています。久しぶりの地方公演だと思いますので、意気込みをぜひお聞かせください。

明希 コロナ禍前のような制約のないライブに戻っていたらいいなという思いが一番ありますね。セットリストや演出などの内容はこれから詰めていきますが、2023年にはシドも20周年なので、その可能性や未来をちゃんと提示できるツアーにしていきます。

ゆうや 5月の<Star Forest>に来たくても来れなかった人に、僕たちから出向いて会いに行ける。しかも2021年中にできるのは、すごく嬉しい気持ちです。

久しぶりの地方を巡るツアーなので、事態がどうなっているか分からないですけど、最高な1日を各地で迎えられるようなライブにしたいと思っています。

Shinji 僕、野球が好きでテレビでよく試合を見ていて。メジャーな球場ではない場所の試合に来ているお客さんたちがすごく楽しそうにしているのを見て、好きな人たちにとって来てくれるってすごく嬉しいことなんだと思いました。音楽と野球とでは畑が違うんですけどね。

ただ、考えてみたらしばらく地方に行けていなかったなと。会いに行きたい気持ち、楽しみな気持ちが募っています。

ーーありがとうございます。最後にマオさん、お願いします。

マオ 5月の<Star Forest>でライブをやることの大変さ、やっと会えた喜びをすごく感じました。ライブができることって当たり前じゃないんだって、お互いに感じていたはず。だから、9月からのライブで会うときは、さらにその思いが強くなっているんじゃないかな。シドもシドのファンも、これまで全力で一本一本のライブをしてきましたけど、それよりも全力でやれそうな気が今しています。

バンドでライブを長く続けていると、ファンとの関係性が深くなる反面、ちょっとした慣れが出てくることもあると思うんですよ。ポジティブに考えれば、コロナ禍によってその慣れが一度リセットされた。それはすごくいいことだと思うので、そのリセットを上手く活かした楽しいライブにしたいと思っています。

新曲『慈雨のくちづけ』は7月18日(日)に配信リリース

詳しくはこちら(https://kmu.lnk.to/JiuNoKuchizuke

取材・文/阿部裕華

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