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斎藤工、物語に大きな展開を生む 『半分、青い。』祥平役で見せたリアルな人間像

リアルサウンド

18/8/1(水) 6:00

 ついに斎藤工が大きく動き出した。好評放送中の『半分、青い。』(NHK)でのことである。永野芽郁演じるヒロイン・鈴愛と、間宮祥太朗演じる涼次が中心に立つ「人生・怒涛編」で、脇に静かに収まり、支える側に徹していた印象の斎藤であったが、ここにきて物語の大きな展開を生む働きを見せた。

【写真】『半分、青い。』に登場する斎藤工

 斎藤が演じるのは映画監督・元住吉祥平。芸術家肌の映画監督で、かつて手がけた『追憶のかたつむり』という作品が海外の映画祭で受賞するも、その後は泣かず飛ばずの状況が続いていた。涼次とともに登場してきた祥平だが、本作の“鈴愛視点”で言えば、あくまで彼は助監督である涼次の師匠に過ぎない印象であった。しかし彼は、涼次が2年もの歳月をかけて脚色した『名前のない鳥』の監督の座を奪ってしまう。涼次のため、映画化に向けて原作者にはたらきかけていたのだが、思いがけずそれを横取りしてしまうかたちを取ってしまったのだ。ここで視聴者の方の多くが、その良し悪しは別として、“他者(涼次、そして鈴愛)の人生に影響を与える”祥平の、本作における存在の大きさを認識したところだろう。

 鈴愛と涼次が物語の中心であるいま、祥平が大きな存在感を見せるということは、それだけ彼が涼次にとって大きな存在であるということでもある。演じる斎藤は、『高台家の人々』(2016)や、今年は『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)などでも共演してきた間宮について、『連続テレビ小説 半分、青い。 Part2』(NHK出版)にて「垣根を越えた仲なので、ふたりとも口数は少ないほうですが、“あうん呼吸”で演じられました」と語る。対する間宮も斎藤について、当サイト(http://realsound.jp/movie/2018/07/post-223296.html)で行ったインタビューで「斎藤さんとは今年ずっと一緒に仕事をしているので、安心して撮影に臨めました」と語っている。演者同士の関係性は、自ずと今作でも滲み出ているのだろう。息の合った掛け合いは、朝から観ていて気持ちがいい。

 ドラマ&映画『昼顔』で演じたキャラクターへのハマりっぷりから、“色気のある俳優”の代名詞的ポジシションに定着している印象も強い斎藤だが、一方、バラエティ番組などで見せるキャッチーなキャラクターはお茶の間にも広く浸透している。ジャンルレスに数多くの作品に参加するスタンスや、雑誌の誌面を飾ることも多く、彼に対して国民的俳優といった印象を持つ方も多いだろう。今年の活躍だけにしぼってみても、『MASKMEN』(テレビ東京系)や、先に挙げた『BG』、映画では『去年の冬、君と別れ』『のみとり侍』『サラバ静寂』と続く大作・話題作で、ひとクセもふたクセもある特異なキャラクターを演じ、いずれも作品に爪痕を残してきた。

 映画監督という特殊なキャラクターではあるが、今作での祥平の姿には多くの共感も生まれたのではないだろうか。『名前のない鳥』の原作者・佐野弓子(若村麻由美)が、涼次の仕上げた脚本について「この人才能あるよ」と評したときに曇る彼の表情、考えるより先に口をついて出た「俺が監督しちゃだめでしょうか」の言葉。このときの祥平を佐野は「捨てられた子犬のようで見苦しかった」と評する。このやりとりは観ていて苦しいものであった。祥平役について斎藤は、先述した『連続テレビ小説 半分、青い。 Part2』にて「芸術家の孤独や弱さ、きれいごとだけではない面など、いい意味で朝ドラっぽくないカラーが出せたと思います。役の心情を突き詰めてもがく部分をリアルに見せることで、同じようにもがく人々にエールや希望を送りたいと思って演じました」と語っている。自身も映画監督として『blank13』などを手がけていることや、すでに俳優として17年ものキャリアのある斎藤だが、やはり彼も似たような局面に立ったことがあるのだろうか。そんなことに思いを馳せてしまうほど、説得力のある姿であった。

 妊娠・出産と、新たな人生のステージに足を踏み入れた鈴愛だが、涼次ともども、一人前の大人としては頼りないし、夫婦としてもまだまだ不安なところである。鈴愛の周囲の人々の祝辞をビデオテープに収め、彼女だけでなく視聴者の涙をも誘うナイスプレーを見せたこともある祥平だが、今後彼はどういった関わり方をしてくるのだろうか。演じる斎藤と、永野、間宮の笑顔が反響し合う日を信じて、見守っていきたいところだ。

(折田侑駿)

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