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『MIU404』綾野剛×星野源の正反対バディが愛おしい! 上がりに上がった期待を超える第1話に

リアルサウンド

20/6/27(土) 6:00

 金曜ドラマ『MIU404』(TBS系)が、6月26日ついにスタートした。大ヒットドラマ『アンナチュラル』(TBS系)を生み出したプロデューサー・新井順子、監督・塚原あゆ子、そして脚本家・野木亜紀子というゴールデンチームが再集結した本作。さらに、綾野剛×星野源のW主演とくれば、面白くないはずがない。そんな上がりに上がった期待を軽々と超えてくる初回放送だった。

参考:『アンナチュラル』の成功が切り拓いた10年越しの企画 野木亜紀子が語る、『MIU404』制作の背景

■「仕事」で描く新時代の刑事ドラマ
 物語の舞台は警視庁刑事部・第4機動捜査隊。本来3つの機動捜査隊(機捜)が存在するが、働き方改革の一環として臨時の“第4機動捜査隊”が作られたという設定だ。舞台設定は入念な取材からリアルにこだわり、架空の部隊という余白を作ることで、ロマンを少々ふりかける。それが、『アンナチュラル』チームの真骨頂。勤務は24時間制、初動捜査で事件解決ができなかった場合は、別の課に引き継がれ、継続捜査は行なわれない。単純な事件であれば、そのまま逮捕までこぎつけることもあるが、そのほとんどが引き継いで「ごくろうさまでした」。

 かつての刑事ドラマは、ヒーロードラマだった。バンバン拳銃を打って、事件解決まで諦めない不屈の精神こそが美学として描かれた。だが『MIU404』で描かれる警察は、そうはいかない。日本の警察は9割が拳銃を抜かずに定年を迎える。問題を大きくしないようにルール、制度が整い、刑事があくまでも組織のパーツとして働く組織だ。まるで分業化された企業のように。確かに業務効率はよくなる。1人ひとりの生活も安定もする。だが「やりがいは?」と聞かれたら……。

 今の世の中、仕事に対して「なんだかなぁ」と思ってしまう人は少なくないのではないだろうか。刑事ドラマではありながら、働く誰もが共感せずにはいられないのが『MIU404』のにくいところだ。

■刑事ドラマらしい見ごたえも
 もちろん、刑事ドラマの王道とも言える魅力もしっかりと抑えている。それは正反対な性格の2人がバディを組むというもの。直感や感情で動く“野生のバカ“こと伊吹(綾野剛)と、「自分も他人も信じない」と理性的な志摩(星野源)。

 もちろん野生タイプの伊吹はルールや制度に縛られて動けない機捜の体制を不満に思う。どんなに初動がいい動きをしても、逮捕という醍醐味を手にすることができるのは自分ではない別の人。よくできても褒められず、できなければ責められるポジションともいえる。

 「張り合いがない」とぼやく伊吹に「そういう仕事です」と戒める志摩だが、その目には何か思うところがあるようで……。そんな相反する2人が、犯人を目の前にして絆が育まれていくのが、刑事ドラマの見どころだ。

 あれほど、かつての名作刑事ドラマのように派手なドンパチはないと視聴者に認識させた後に、ド迫力なカーチェイスを見せてくれたのは圧巻だ。さらに「日本の警察は拳銃を抜かない」という会話が、伊吹の犯人を追い詰めるシーンで効いてくる。

 強い正義感ゆえに撃ってしまうのだろうか!? と思わせて、「チェンジあーんどソウル!」と手にしていたのが拳銃ではなくおもちゃのステッキだったというオチもあっぱれ。綾野と星野による迫真の演技があればこそ緩急が際立つ見事なシーンだった。

 ちなみに、伊吹と志摩だけでなく、飲みニケーション世代のベテラン班長・陣馬(橋本じゅん)とキャリアの新人・九重(岡田健史)の凸凹コンビの今後にも注目したいところ。ジェネレーションギャップや官僚制度の問題も斬っていくのではと期待が高まる。

 ささいなやり取りもすべて痛快な結末に繋がっていく脚本力。その計算を最大限に活かすセンス抜群のカメラワーク。そして物語の中で語られているように、どこも限られた予算に苦しめられている中、視聴者が「わっ!」と目を丸くするようなアクションを見せてくれる潔さ。脚本家、監督、プロデューサーの「絶対おもしろいやつを作ってやる」という気概を感じられた第1話。

 新型コロナウイルスの影響で、ストップしてしまったエンタメ業界。本作のスタートで、改めて新しいドラマが生み出されるワクワクを思い出すことができた。「張り合いがない」と言っていた伊吹が、クライマックスでは嬉しそうに「機捜って、いいな。誰かが最悪の事態になる前に、止められるんだよ。超いい仕事じゃん」と笑顔でつぶやく。

 その言葉は、そのまま「機捜=エンタメ」に置き換えても聞こえる気がする。誰かが現実に打ちひしがれて最悪な状態になってしまう前に、ちょっとだけ違う世界を見せて止めることができる。超いい仕事じゃん、と。まだ社会は混乱が続くが、少しずつ動き出したエンタメを「張り合い」にしていこう。次週はどんなふうに私たちを驚かせ楽しませてくれるのか、ワクワクしながら待ちたい。

(文=佐藤結衣)

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