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ロバート・ロドリゲス監督が語る、ジェームズ・キャメロンとの友情と『アリータ』への自信

リアルサウンド

19/2/23(土) 15:00

 1990年代に発表された木城ゆきとのSF漫画『銃夢』をハリウッドで実写映画化した『アリータ:バトル・エンジェル』が2月22日より公開中だ。『アバター』のジェームズ・キャメロンが脚本・製作を務めた本作は、“支配する者”と“支配される者”の2つの世界に分断された謎めいた遠い未来を舞台に、300年前に失われたテクノロジーで創られた“最強兵器”アリータが、与えられた自分の命の意味を見つけるために、2つの世界の秩序を揺るがす壮大な旅に出る模様を描いたSFアクションだ。

参考:『アバター』撮影時から夢中だった? ジェームズ・キャメロンによる『アリータ』への愛

 今回リアルサウンド映画部では、当初監督も兼任する予定だったキャメロンからバトンを受け継ぎ、本作を完成させたロバート・ロドリゲス監督にインタビュー。キャメロンとのやりとりや、アメリカの“コミック”と日本の“漫画”を実写化する際の違いなどについて話を聞いた。

ーー当初はジェームズ・キャメロンが監督を務める予定だった本作ですが、あなたが監督を引き受けることになった経緯を教えてください。

ロバート・ロドリゲス(以下、ロドリゲス):『アリータ』はもともと、ジム(ジェームズ・キャメロン)が2005年に自分で作るつもりだったんだ。でも、同時進行で進めていた『アバター』があれだけの成功を収めたこともあって、その続編に取り掛からなければいけなくなった。僕はかれこれ25年ぐらいジムと友達なんだけど、2015年に彼のところに遊びに行った時に、一ファンとして「『アリータ』はいつやるんだ?」と聞いたんだ。そしたら彼は、「いや、『アバター』の続編もあるし、できないかもしれない」と答えて、僕に脚本を読ませてくれた。ジムは、自分が書いた脚本が長すぎることに悩んでいたから、僕は後日、それを短くしてあげたんだ。4カ月ぐらいかかったけど、もちろんタダでね(笑)。それを読んだジムは感心して、僕に監督をやらないか打診してきた。「俺が製作で、お前が監督だ」という具合にね。

ーーなりゆきで監督をすることになったと。

ロドリゲス:その通りだよ。ジムはいつか自分で監督をするつもりでいたから、誰か他の監督を探しているわけではなかった。クエンティン・タランティーノもそうだけど、ジムは自分が監督をするための脚本しか書かないんだ。他の監督のために脚本は書いていない。自分の意図しない方向で作られるのであれば、その脚本を戸棚の中に封印するぐらいのタイプなんだ。今回はたまたまジムと長年の付き合いがあった僕が、彼の信頼を勝ち得たことで実現したと言えるね。

ーー脚本を短くする作業をしている間は、自分が監督をすることを想像していましたか?

ロドリゲス:やっている時はとりあえず短くすることだけに集中していたよ。ただ、もしも僕が書いた脚本を気に入って使ってくれるのであれば、他の誰かが監督をするのでも構わなかった。僕は勉強のつもりでやっていたんだ。僕が手直ししたものに、彼がいっぱいメモをつけて返してくるんだろうなとね。だけど、結果は「いいじゃん! 監督しない?」というものだったわけだ(笑)。

ーー答えを考える時間はあった?

ロドリゲス:いや、すぐに「やる!」と言ったよ(笑)。「こんな大作、自分にできるかな?」と思う時って、絶対にやるべきなんだ。チャレンジをすれば、やらなかった時と比べてずっと学ぶことが多いからね。

ーージェームズ・キャメロンが書いた脚本の手直し作業は具体的にどういうものだったんでしょう?

ロドリゲス:もともとの脚本は単純に長すぎて、3時間以上の映画になってしまうぐらいだった。僕が言ったのは、せめて2時間にしないと製作費が高くなりすぎて作れないということ。この作品はどのシーンにもCGが必要だから、1分長いだけで製作費がかさんでしまう。だから最低2時間にしないといけない、とね。僕は自分がやったことは“編集”だと思っているんだ。脚本を短くするとなると、普通はスペクタクルなシーンを残して、恋愛や家族など人間関係の一部分を切ってしまう。でも僕は逆だった。キャラクターのハートの部分を残して、スペクタクルな部分を65ページ分ぐらいカットしたんだ。それにはジムも驚いていたけれど、僕は彼のお気に入りのシーンはきちんと残しておいた。スペクタクルなシーンは、脚本に残した部分だけで十分だと思ったんだ。

ーーもともとの脚本ではさらにスペクタクル要素が満載だったんですね。その部分を自信を持ってカットできるのは、2人の関係性があってこそだと思います。2人に25年もの付き合いがあったことも意外でした。

ロドリゲス:ジムとの出会いは1994年だったんだけど、これがおかしな話なんだ(笑)。僕がふらっと入ったビデオショップに、親交のあったギレルモ・デル・トロがたまたま来ていて、ばったり会ったんだ。そしたらギレルモが、「ジェームズ・キャメロンもいるんだけど、会いたい?」と聞いてきた。僕は「もちろん!」と即答したよ。それが僕とジムとの初めての出会いだった(笑)。ジムは僕が自分でステディカムを使うことや編集を自分でやることにすごく関心して、その後、彼もステディカムを使ったり自分で編集をするようになったんだ。僕らは2人とも“低予算の映画作り”がバックグラウンドにあったから、それがきっかけで仲が良くなったよ。

ーーそんな奇跡的な出会い方があるんですね(笑)。ちなみに本作はもともと2018年7月公開予定だったのが2018年12月に延期になり、さらにそこから延期になって2019年2月公開に落ち着きました。公開延期は制作に何か影響がありましたか?

ロドリゲス:公開が延期になったのはスタジオの意向で、僕らの制作が遅れて公開が延期になったわけではないことは断言しておくよ(笑)。とはいえ、公開が延期になったことで作業に余裕が生まれたことは確かだね。今回もっとも大変だったのは、モーターボールのシーンなんだ。アクション映画で起こりがちなのが、キャラクターのストーリーが見えなくなってしまうこと。でもこの作品では、アリータのストーリーにフォーカスしつつ、アクションシーンも面白く見せることをかなり意識していたんだけど、やはりそこが大変だったね。手で絵を描いていたのが2015年の終わりぐらいで、終わったのが数週間前だった。本当に長く時間がかかったよ。

ーー『シン・シティ』ではグラフィックノベルの実写映画化を経験しているわけですが、今回初めて日本の漫画を実写映画化してみて、アメリカと日本の“コミック”を実写化する違いを感じることはありましたか?

ロドリゲス:今回の原作漫画である『銃夢』の方が長いシリーズであることも大きいけれど、僕は全く違うと感じたね。『シン・シティ』はストーリーテリングの仕方が非常にエキサイティングでユニークな、他の映画とは全く違う作品だと思うんだ。だから僕は映画化を決めたし、他の映画とは全く違う独自のものを作ることができたと思っている。そういう意味では『銃夢』も同じだよ。このストーリーは、他のハリウッドの映画とは全く違う語り口なんだ。だから、アメリカの若い人たちには、この作品のストーリーを気に入ってくれている人が多いところもあるぐらいだね。ジムもその語り口をとても大事にしていて、ハリウッド的にするよりも、もともとあった漫画的な部分を重視したんだ。

ーーそんなジェームズ・キャメロンとの仕事を振り返って、どうでしたか?

ロドリゲス:ジムとの仕事はすごく良かったよ。実は1997年と2003年にも一緒に仕事をしようとはしていたんだけど実現できずで、今回は3度目の正直だったんだ。ジムは僕にとってのメンターであり、兄みたいな存在だね。ジムは「これまで何度も他のフィルムメイカーと一緒に仕事をしてきたけど、今回がベストだ」と言ってくれていたよ。僕もジムもこの『アリータ』のストーリーが大好きで、このストーリーをいい映画にしたいという強い気持ちで繋がっていたと思うよ。

(取材・文・写真=宮川翔)

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