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SixTONES、『NAVIGATOR』カップリング楽曲解説 ヒップホップの最新トレンドに真っ向から挑戦

リアルサウンド

20/8/9(日) 6:00

 SixTONESが、7月22日に2ndシングル『NAVIGATOR』を発売した。

 表題曲は下記の記事で紹介した通りだが、同作のカップリング曲もまた、プログレッシブなトラック揃いで、“あまりにも楽曲が強すぎる”と話題になっている(参考:嵐、SixTONES、Sexy Zone……『Mステ』3時間半SP出演ジャニーズ、最新シングル曲を分析)。思うに、世界的にチャートを席巻するK-POPを中心として、海外アイドルユニットと肩を並べるレベルに早くも近付きつつあるのではないだろうか。そこで本稿では、メンバーの田中樹が嗜好するヒップホップ的な視点に重きを置きながら、カップリング全5曲をそれぞれ紐解いていきたい。

「光る、兆し」(初回盤)

 ストリングスの壮麗な旋律が特徴的なミドルテンポバラード。本稿後半で紹介する楽曲は、サウンド面でかなり挑戦作に。その一方、この楽曲はまるでその足場を固めるように、ユニットのボーカル面におけるポテンシャルをストレートに表現する、メンバー同士のハーモニーを重視した内容となっている。穏やかなテンポ感だからこそ、〈諦め悪い歴戦の勇者 傷を誇り 果敢に挑め〉など、困難の先に幸福な未来を手繰り寄せようとする歌詞も一言一句を噛み締めるように向き合うことができる仕組みになっているのだろう。

「You & I」(通常盤)

 エレクトロ〜トロピカルハウスをベースに、サビのダンサブルながらもふわりと心地よい浮遊感が漂う一曲。その歌詞は、ほぼ全編を通して英語詞で綴られており、また角度の違ったボーカル力が試される作品だ。本稿後半より、今回のシングルに関わる“K-POPっぽさ”へと本格的に注視していくが、楽曲中盤にヒップホップらしい“いなたい”合いの手も交わされたり、サビではシンセの奥行きあるトラックに言葉がぴったりと絡みついて共鳴するよう、ドライブ感ある譜割りを採用したりと、多くのボーイズユニットが近年に目指してきたサウンド領域をしっかりと踏襲し、ユニットのものとしている。

「JAPONICA STYLE」(期間限定盤)

 畳み掛ける“和モノ”グルーヴ。琴の音色をハイスピードで奏で、疾走感あるトラックへと昇華する意欲作だ。こういった楽曲では三味線を使用するケースが多いが、より可憐な印象を与える琴を採用しているのが「JAPONICA STYLE」の粋なポイントといえる。ボコボコとしたベースの躍動感に、これほどマッチしているのも非常に巧みなサウンドチョイスだ。

 また、全体的に中性的ながらも、男らしさの強い歌声を押し出した、凛々しくワイルドで“アゲ感”に満ち溢れたSixTONESの一面を楽しめるのも嬉しいところ。そんな彼らの強みとして、ここでは歌声のキーを自在に操り、曲中の好きな場所を聴きどころへと変換させられる表現力の高さを挙げておこう。京本大我やジェシーが歌うこの楽曲のBメロや、ユニット作品の多くに共通するところだが、彼らは好きなポイントで大人っぽさやセクシーさ、「JAPONICA STYLE」でいえば華やかさを思うままに演出する能力に秀でている。

「Hysteria」(通常盤)

 昨今のK-POPに見られるようなヒップホップ×ダンスミュージックの融合ナンバーで、時折に三連譜の歌い回しを採用したボーカルや英語の発音方法にも、海外アイドルからの影響を感じられるだろう。実際に、同曲の作編曲に参加したKAIROSは、TWICE「SIGNAL」やSHINee「Get The Treasure」を過去に手掛けている人物(ちなみに「SIGNAL」は、いま話題のJ.Y. Parkの担当作品でもある)。この人選からすでに、楽曲の先進性を追求するSixTONESの上昇志向を汲み取れるのではないか。

 そんな同曲で特に意識されたのが、ドロップに至るまでのトラック構成。その前半部では、スネアの高音域を抑え、細かく散りばめたトラップビートを下支えにしつつ、上物にはどこか煽情的に鳴らされるアコースティックギターの生音が乗せられている。これは、今まさに新たなフェーズに移行しつつある“ネオヒップホップ”的なアプローチに通ずる部分だ。どちらも今年に発表されたばかりだが、kZm「Fuck U Tokio I Love U! feat. 5lack」や、KEIJU「Blonde」「Civility and Integrity」といった、渋谷や世田谷など、都市部での生活をリリックで歌うラッパーたちの楽曲を聴き、「Hysteria」で奏でられるサウンドと比較することで、その音像における特徴を具体的に理解してもらえるはずである。

「love u…」(通常盤)

 試聴音源の公開当初より、JP THE WAVY「Just A Lil Bit (Feat. Sik-K)」に類似したメロウなサウンドが、一部ファンの間で話題になっていたこの曲。JP THE WAVYは、「Cho Wavy De Gomenne」などを代表曲に持ち、ダンサーとしても活動する神奈川・藤沢出身の新進気鋭のラッパーだ。また「love u…」で作詞・作編曲を担当したTOMOKO IDAとTSUGUMIは、どちらもTHE RAMPAGE from EXILE TRIBEへの楽曲提供経験がある“ヒップホップ畑”の人物。最新トレンドのヒップホップに真っ向から挑戦しようとするSixTONESの気概が、クレジットを見ただけでひしひしと伝わってきて仕方がない。

 実際に同曲には「Just A Lil Bit」との様々な共通点が見られる。楽曲全体として冬をイメージさせるような、ミドルテンポのピアノのメロディを基調としており、雪の煌めきを表現したようなメロウなトラックの上で、メンバーは語尾をゆるく伸ばすスローランなフロウを披露。ほかにも、イントロのアドリブにラジオテイストのエフェクトが用いられていることも、両曲が似ていると感じられる所以なのだろう。

 しかしながら、SixTONESとJP THE WAVYのアーティストカラーの違いは、譜面の進行に伴って徐々に色濃くなっていく。「love u…」に流れるまったりとしたムードは、歌唱につれて増していくほか、複数メンバーから成るユニットの強みを活かしたコーラスなど、あくまでこの曲を“歌モノ”として成立させている。そもそも、こういったメロウなトラックは、まさにK-HIPHOPの王道といえるサウンドで、大切なのはその使い方だ。SixTONESが想いを寄せる人に対して、我々リスナーが安心しきり、思わず極上のまどろみを誘われそうになるほど、優しい愛の言葉を代わる代わるに伝える表現は、彼らだからこそ歌い上げられるものに他ならない。

 少しざっくばらんな言い方だが、SixTONESは“バランス感”に優れたユニットといえる。この場合のバランス感とは、平均台を歩くような平衡感覚ではなく、綱渡りのように攻めに攻めたトラックに乗って、絶妙かつ最高な作品に仕上げてくる高い能力を指したものだ。彼らがシングル『NAVIGATOR』を経て、どのように次のハードルを乗り越えてくるのか。今から気が早いが、3枚目となるシングルを明日にでも聴きたくてたまらない。

◼︎一条皓太
出版社に勤務する週末フリーライター。ポテンシャルと経歴だけは東京でも選ばれしシティボーイ。声優さんの楽曲とヒップホップが好きです。Twitter:@kota_ichijo

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