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Moment Joonが1年越しの初ワンマン開催、思い託したアルバムの物語を多彩なゲストと表現

ナタリー

Moment Joon

Moment Joonが5月28日に東京・CIRCUS Tokyoで初のワンマンライブ「Garcon vs The World」を開催した。

韓国出身、大阪在住の移民者として生きる自身の物語を多面的に描いた1stアルバム「Passport & Garcon」を昨年3月にリリースし、大きな話題を集めたMoment。ワンマンライブは同年4月に開催予定だったものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響により延期となっていた。1年越しで開催されたライブの会場には、チケットを手放さずに待ち続けていたファンが集結。当日足を運べない人に向けてはライブ配信も行われた。

開演時刻の18:00を迎えると、スクリーンには今年4月のMomentの様子が映し出される。彼はこれから入国管理局に向かい、ビザの期間更新申請の結果を確認しに行くという。もし不許可となれば、Momentに申し立ての方法はなく、出国を余儀なくされる。「在留期間が切れるまで後10日」というテロップとともに映像が終わると、タオルで顔を隠したMomentが静かに登場。DJ Jrをバックに従えたMomentはアルバム冒頭の楽曲「KIX」でライブを開始し、日本にいられなくなるかもしれないという不安を歌い始める。楽曲の途中、ビザが更新できずに日本を出なければならなかった過去を説明するMomentに向けられた「それは出国ではなく、帰国ですね」という冷笑じみた言葉が流れると、Momentは頭にかけたタオルを取り、脱色して金色になった頭髪をあらわに。これはアルバムのデラックスバージョンのジャケットを再現したもので、Momentは「Fuck 関西空港! Fuck 入管!」という言葉を皮切りに荒々しくラップしてみせた。

Momentはワンマンライブを待ち続けた観客と配信視聴者に感謝の思いを伝え、「今日は僕のライブというよりは『Passport & Garcon』のライブだと思っています。この作品の価値を信じている人々に、作品を深く感じてもらえるように準備しているので楽しんでください」と挨拶。「今の僕はこの作品しかないですけど、すべてを勝ち取ります」という宣言からハングリー精神あふれる「KACHITORU」でパフォーマンスを再開すると、広島のラッパー・ACE COOLをステージに迎え入れる。ACE COOLは10年ほど前、広島の工場で働いていた時代にMomentの楽曲「Dog Tag」を聴いて奮い立ったというエピソードを明かし、「今もこうやってラップをやってくれてありがとう」とMomentに感謝。コラボ曲「BOTTOM」でACE COOLは畳みかけるようなフロウでラップしつつ、声を張り上げて観客を圧倒し、それに呼応するようにMomentも気迫あふれるラップを繰り出した。

ACE COOL退場後に披露されたのは、Momentの代表曲の1つである「IGUCHIDOU」。Momentは「大阪池田井口堂 グリーンハウスの25号 文句あんなら会いに来い 文句あるやつらは会いに来い」と自身の住所を晒して挑発する。すると激しくドアを叩く音と「出てこいや!」という罵声が流れ、「KIMUCHI DE BINTA」へ。この曲は日本での韓国人差別を描いた楽曲で、Momentは偏見通りの韓国人の姿を狂気的に演じる。入国管理局に向かう映像を挟んで、Momentは「Home / CHON」を披露。穏やかなトラックに乗せて、日本を自分の居場所にしたいという思いを歌うが、「ちゃんと払ってんのかよ、日本の税金」という言葉でビートが切り替わると、「顔にタトゥーを入れたい 『税金払ってます』って」というパンチラインで攻撃的な姿勢を剥き出しにし、バックのスクリーンにはクルド人男性が日本の警察官に乱暴に押さえ込まれる様子を捉えた映像が投影された。

ライブの中盤には2人目のゲストとしてJinmenusagiが登場。Momentから“ヒップホップの権化”と絶賛されたJinmenusagiは「俺は彼のように自分を最大限に曝け出すことはできない。彼だから成立するし、彼のストーリーに共感する人がいるから今ここでワンマンを開けると思うんだよね」と語り、Momentを恐縮させる。Jinmenusagiとのコラボ曲「ISITTRU3?」披露後、Momentは「MIZARU KIKAZARU IWAZARU」をパフォーマンス。この曲で周囲の問題から逃げてしまいたいという気持ちを正直に吐露したMomentは、続く「DOUKUTSU」では「見えなくていい もうほっといてくれ」と絶望を歌った。すると甘いムードのトラックが流れ、Gokou Kuytが「Cinderella」で会場の空気をガラリと変える。Momentは数年前に自分から連絡を取って実家まで会いに行ったというGokou Kuytについて「ヒップホップの光。僕の中の“少年”を出してもいいんだって教えてくれた人です」と紹介。一方、当時自分のスタイルについて葛藤していたというGokou Kuytは、Momentから連絡をもらったことが自分を肯定するきっかけになったと明かし、2人でメロウな「Amethyst Drive」を歌った。

その後、自身の弱い心を晒した英語詞の楽曲を披露したMoment。日本で働くことについて歌った「Hunting Season」で「今は稼ぐ時」と自らを鼓舞するようにラップするが、「ごめんなさい」と呟いて、うなだれてしまう。顔を上げた彼が「Losing My Love」で自身の周囲の人々に対して牙を向け始めるとGAGLEのHUNGERが登場。愛をテーマにしたリリックを諭すようにラップする。「Losing My Love」は、アルバムに収録されたオリジナルバージョンにおいて、「愛は求めずに与えるため」というHUNGERの言葉をMomentが「うるさいよ」と遮ってしまう展開がリスナーに衝撃を与えた楽曲だ。Momentは自分を叱ってもらうためにHUNGERをこの曲に招いたことを語りつつ、楽曲が生まれるきっかけとなった曲だというGAGLEの「屍を越えて」をHUNGERにリクエスト。リクエストに応えたHUNGERのラップに続いて、Momentはこの日のために書き上げたヴァースを披露し、最後に「愛は求めずに与えるため」というラインを自分で歌ってみせた。

そしてMomentは、自分自身の幼さと向き合った楽曲「Garcon In The Mirror」で現実逃避をやめ、大人になることを宣言。スクリーンには無事にビザを取得したMomentの姿が映し出される。「在留期間が切れるまで後1069日」というテロップで示されるように、それは期限付きの自由でしかないのだが、Momentは「3年間よろしくお願いします!」と明るく挨拶。「令和フリースタイル」を披露し、「皆さんのおかげでビザもらえたんですよ」とファンに感謝した。ここでMomentは“日本で唯一僕の気持ちがわかるかもしれないラッパー”として、あっこゴリラをステージに招き入れる。ヒップホップを愛しているのに日本語ラップシーンの中で疎外感を抱いている2人は、コラボ曲「DON'T PUSH ME」でその思いを爆発させた。

熱狂的なムードであふれる中、あっこゴリラに代わって、シークレットゲストの鎮座DOPENESSがステージへ上がり、フリーキーなラップを披露。さらに戻ってきたあっこゴリラも交えて3人で「BAKA」をパフォーマンスし、ECDのリリックを引用した「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ!」という言葉を連呼する。するとACE COOL、HUNGERまでもがステージに上がってラップし、この日一番の盛り上がりを生み出した。ゲスト退場後、Momentは「僕という人間は弱くて、利己的で、ダメな部分も多いですし……死ぬんですよね。でも、このアルバムが、この物語が残ったら、僕1人が人間としてはできないことができるんじゃないかと思ってます」とアルバムに込めた思いを改めて語る。「これから出す音楽がダメだったら叩いてください。批判的な目で僕を見てくれて、その上で愛してくれたらうれしいです」と語りつつ、「でも最後の1曲だけは愛だけ歌いましょう」とファンに呼びかけると、アルバムのラストナンバー「TENO HIRA」へ。優しく語りかけるように歌うMomentに観客は手を挙げて応え、希望に満ちた光景が生み出された。

なおZAIKOでは本公演の配信チケットを6月4日18:00まで販売しており、購入者は同日23:59までアーカイブを視聴できる。

Moment Joon「Garcon vs The World」

2021年5月28日 CIRCUS Tokyo セットリスト

01. KIX
02. Limo
03. KACHITORU
04. FUTURE / ACE COOL
05. BOTTOM / ACE COOL feat. Moment Joon
06. IGUCHIDOU
07. KIMUCHI DE BINTA
08. Home / CHON
09. GROWUP2GIVEUP / Jinmenusagi
10. ISITTRU3? / Jinmenusagi feat. Moment Joon
11. MIZARU KIKAZARU IWAZARU
12. DOUKUTSU
13. Cinderella / Gokou Kuyt
14. Amethyst Drive / Gokou Kuyt feat. Moment Joon
15. Run Away
16. Hunting Season
17. Losing My Love feat. HUNGER
18. 屍を越えて / HUNGER feat. Moment Joon
19. Garcon In The Mirror
20. 令和フリースタイル
21. 神器dig it / あっこゴリラ
22. DON'T PUSH ME / あっこゴリラ feat. Moment Joon
23. WA.KA.TA.KA / 鎮座DOPENESS
24. BAKA MEGA REMIX
25. TENO HIRA

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