Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

『正義のセ』白洲迅が罪の意識に苛まれる姿に涙 加害者と被害者遺族の心情を考える

リアルサウンド

18/5/3(木) 15:08

「大切なのはこれからです。勝村さんがどう生きていくか」。

 5月2日に放送された『正義のセ』(日本テレビ系)の第4話。物語は、2年目の駆け出し検事・竹村凜々子(吉高由里子)が、交通死亡事故案件を担当することから始まる。その事件は、被害者の老人・佐藤忠徳が妻のフネ(茅島成美)と散歩中に横断歩道を渡っていたところ、料理人見習いの若者・勝村弘(白洲迅)が運転するバイクにはねられて死亡したというもの。

(関連:大野拓朗の不可解な言動にモヤモヤ? 『正義のセ』吉高由里子との別れを考える

 交通事故は、被害者の未来を奪うだけでなく、加害者の未来をも閉ざす。そして、遺族の悲しみと加害者の苦しみ。「後から何百回後悔したって遅い。それが交通事故なんです」という事務官の相原勉(安田顕)の言葉にもあるように、「信号が見えなかったときにすぐにバイクを止めてれば……」「赤信号の横断歩道を戻らなかったら……」「いつも通り電車で通勤していれば……」「あの場所で立ち止まっていなかったら……」「寝坊してバイクに乗っていなければ……」といくらタラレバを言っても、失われた命は決して戻ってこない。

 それを最も自覚していたのが、加害者である勝村だった。凜々子に「聞きました。辞めてしまった人の分まで働いていたことや佐藤さんのお宅に何度もお詫びに行ったこと。どうして取り調べのとき、何にも言わなかったんですか?」と聞かれた際に、勝村は俯きながら「そんなの、言い訳にならないから」と呟いていた。続けて「どんな理由があっても、どれだけ謝っても、僕が佐藤さんを殺してしまったことに変わりないです」と口にする。勝村はきっと凜々子たちが想像する以上に“佐藤さんの命を奪ってしまった”ことを自覚し、その罪に苛まれていた。だからこそ、何を話しても殺した事実は変わらない、そのせいにはならないと思い、「事故のことはあまり覚えてない」と多くのことを語らなかったのだろう。

 勝村の職場であるCENTRIAL HOTELの上司や同僚は彼について「しっかりここで修行して、一人前の料理人になりたい。いつか自分の店を持つのが夢だって言ってたのに……」と話し、「どうか少しでも、勝村の罪を軽くしてやってくれませんか?」と凜々子と相原に頭を下げていた。また凜々子の妹・温子(広瀬アリス)も「その人だってわざとやったわけじゃないんでしょう? 人生これからってときに人を死なせちゃって、その罪をずっと背負っていかなきゃいけないってすっごくきついと思うよ」と加害者の立場で気持ちを推し量る。

 だが、被害者の遺族であるフネは「厳しい罰にしてほしいです。お父ちゃんを殺したんだから、許せないです」と強い怒りで体を震わせていた。そして凜々子の父・浩市(生瀬勝久)と母・芳子(宮崎美子)もまた、「人様の命を奪ったんだろ? 絶対許せん」「突然ご主人を亡くした奥さんの気持ち考えたらやりきれないわよね……」と被害者の遺族側に立って思いを汲み取る。

 交通死亡事故は、いつ起きてしまうか予想ができない。突然大切な人を奪われてしまった、被害者側が怒りと悲しみに打ちひしがれるのは当然だ。たとえ頭の片隅では信号を無視したこちら側にも落ち度があるとわかっていても、加害者が憎い。この強い感情すべてを加害者にぶつけたい。一方で、加害者もまた故意じゃないからこそ深く傷つき、罪の意識に押しつぶされそうになるのではないだろうか。誰かを殺してしまったという十字架はあまりに重すぎる。被害者も加害者もともに、事故が起きた瞬間から人生が一変してしまうのだ。

 だからこそ、今回の第4話では、加害者である勝村の絶望した表情や、ボソボソと俯いて話す姿、事故現場と被害者の家にお花を持って謝罪する日々、事故を起こしてから厨房に一人佇むす様にどうしようもなく胸が締め付けられた。そして、被害者の遺族であるフネが事故が起きてからは何もやる気が起きないとコンビニのお弁当を食す日々を送っていることや、1人だから補聴器をする必要がないと悲しく笑う姿、「お父ちゃん……」と亡くなった旦那のことを想う様に、これでもかと心が痛む。

 最後に凜々子が勝村に向かって放った「大切なのはこれからです。勝村さんがどう生きていくか。情状酌量を申し出たフネさんの気持ちを忘れないでください」という言葉が印象的だった。その言葉からは、勝村とフネ両者の気持ちを考え、ともに明るい未来を切り開いていけるように背中を押す、凜々子の優しさが感じられる。誰かの感情と人生を自分のことのように大切にできる凜々子だからこそ、これからも検事として「罪を犯した人をできるだけ早く更生させて、社会に復帰させる」に違いない。(文=戸塚安友奈)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む