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和田彩花が選ぶ2019年の展覧会ベスト4

ぴあ

20/1/5(日) 0:00

2019年もたくさんの美術展に出かけた和田さんに、今年見た中で一番心に残った展覧会ベスト4を選んで頂きました。一位はもちろんあの展覧会。でも二位以下は選べないぐらい思い出深い展覧会がたくさんあるそうで…。

第1位
コートールド美術館展 魅惑の印象派

『コートールド美術館展 魅惑の印象派』(東京展)

やっぱり第一位は、『コートールド美術館展 魅惑の印象派』(東京都美術館、2019年9月10日〜12月15日)です。個人的な思い入れがすごく強い展覧会ですね。マネが三作品も展示された上に、メインビジュアルとして、《フォリー=ベルジェールのバー》がポスターにチラシと、いろんなところに使用されていたのが、ものすごく嬉しかったです。みんながマネの作品を見てくれるのも嬉しかったですし、私自身、街中で見るたびに嬉しいなって思っていました。

マネだけでなく展覧会全体がすごく充実していましたね。コートールド美術館は、実業家サミュエル・コートールドが収集したコレクションを核に1932年に設立された美術館ですが、美術史や保存修復において世界有数の研究機関の展示施設なんです。その研究機関にも注目して、画家の言葉や制作の背景、作品そのものを読み解くような展示が数多く見られました。私も知らない作家、作品もあったのですが、すべてではありませんが、主要な作品は大型パネルなんかで説明してくれたので、とてもわかりやすかったです。

《フォリー=ベルジェールのバー》は、私も念願叶って生で見ることができた作品です。 この作品は、マネの人生最後の大作で、同時代の劇場と、そこで働く女性の姿が描かれています。謎が多く隠されていて、見なければいけない部分が多いのですが、もちろんこの作品も大型パネルで絵の解説がされていてとても勉強になりました。

それにこの劇場を描いたほかの画家たちの作品や、風刺画も展示されていたんですが、同じ劇場を描いていても、画家によって切り取る部分も違うし、描き方も違う。いろいろな角度から劇場を見ることができました。絵画作品としてだけでなく、歴史的な資料としても見ることができたのもよかったですね。

そして、私はこの展覧会でセザンヌの面白さに気付けたんです。これは一番の収穫でした。今までほとんどセザンヌについて知ろうとしていなかったのですが、この展覧会をきっかけにいろいろ調べたり、作品をじっくり見るようになりました。これからはセザンヌも勉強したいなと思っています。

※『コートールド美術館展 魅惑の印象派』は、愛知県美術館(2020年1月3日〜3月15日)、神戸市立博物館(2020年3月28日〜6月21日)に巡回。

第2位
塩田千春展:魂がふるえる

『塩田千春展:魂がふるえる』展示風景 塩田千春《不確かな旅》 2016年 鉄枠、赤毛糸

二位は、『塩田千春展:魂がふるえる』(森美術館、6月20日〜10月27日)をあげたいと思います。素直に、作品がとっても素敵でした。

この展覧会で初めて塩田さんの作品の実物を見たのですが、作品のパワーが凄まじかったですね。

作品も大きいし、その作業量もすごいと想像ができて。そういうところからも、ただただすごいなって、純粋に思いました。

現代アートって、見るこちらが考えなければいけない難しいテーマだったり、生死を考えさせられたり、社会的な側面が見えてきやすいですよね。確かに塩田さんも、作品の中で生死を表現されていますし、社会的な問題を含んだ作品も多くあります。でもそういったことばかりじゃなく、単純に心を揺さぶられて、心を震わされて、アートの持つ力というものを改めて見せつけられたような気がしました。ただ問題として提示するだけじゃなくて、自分の命とか、身体に常に密接に寄り添っているというか。そういったところからも、心をグッとわしづかみにされるような感覚を覚えたのかもしれません。

アート作品からそういう感覚をもらうことができるって、やっぱりいいですよね。

上の写真のような糸を使った作品も好きなのですが、連載でも取り上げた映像作品《魂について》(2019年)もよかったですね。これは塩田さんが、娘さんと同い年の10歳の小学生に「魂(ゼーレ)」について質問して、子どもたちがそれについて答えている様子を映したものでした。

それと舞台美術にも驚かされました。塩田さんは2003年から数多くの舞台美術を担当されているそうです。その一部が映像や写真などで紹介されていたんですが、舞台というのは、自分にも大きく関わるものなので興味深く見ましたね。こんな演出ができるんだとか、糸をこういうふうに使うんだとか、この中に自分が立ったらとか、演者としての目で見てしまう。いつか生で舞台も見てみたいです。

塩田さんの作品は、展示場所によってその表情がガラッと変わり、一つとして同じものができないと思うんです。だからこれからも、いろんな場所で作品を体感してみたいですね。

第3位
あいちトリエンナーレ2019

芸術祭ですが、やはり今年のベストの中に入れたいのが、『あいちトリエンナーレ2019』(愛知県名古屋市、豊田市の4つのエリアにて、8月1日〜10月14日)です。

いろいろと問題がありましたが、このことをきっかけに、みんなが表現であるとか、その自由がどこまでだとか、それに関わる問題とか、自分はどういう意見を持っているのかとか、本当にいろんなことを考えたと思うんです。答えは一つではないですし、一筋縄ではいかない問題です。でも、とても大きな課題や、問題を提示してくれたいい機会だったと思っています。考えることを教えてもらったというか。

私自身、表現の自由について、自分の意見をしっかり持てているわけではないのですが、でも実際に足を運んで見てみると、インスタレーション、映像、絵画など、ひとつひとつの作品がすごく素敵なものが多かったですね。

『あいちトリエンナーレ2019』展示風景 キャンディス・ブレイツ《ラヴ・ストーリー》2016、フィーチャリング アレック・ボールドウィン アンド ジュリアン・ムーア Photo: Tetsuo Ito

私が好きだったのが、《ラヴ・ストーリー》という作品です。部屋に入ると、まずは大きなスクリーンで、ハリウッドの俳優さんたちが何かをこちらに語りかけてきます。そしてその奥の部屋には、6つのモニターで、人種も年齢も性別も違う難民の人たちが、自分たちの体験を語っています。

実は俳優さんたちは、この6名の難民のストーリーを語っているんです。インタビューを抜粋して、再構成したものを彼らに代わって話しています。俳優さんが語っているからといって、ものすごく芝居じみているということはないんですが、やはり演じるプロだからか、当事者が話しているのを聞くよりもリアリティを感じるというか、感情移入をしてしまうんです。それがとても不思議な体験でしたね。また、難民問題について、世界でどのようなことが起こっているのか、知るきっかけにもなった作品でした。

『あいちトリエンナーレ2019』展示風景 津田 道子《あなたは、その後彼らに会いに向こうに行っていたでしょう。》2019 Photo: Takeshi Hirabayashi

いままで名古屋には何回も行ったことがあるんですが、ライブで行くことがほとんどで、あんまり街中を歩いていなかったことに今回気付きました(笑)。今回展示会場の一つになっていた、四間道や円頓寺は、下町の情緒が残ったとても落ち着く街で、街歩きをするにも最適な場所です。特にここにある伊藤家住宅は、300年ぐらい前の建物。こういったところも会場として使われていて面白かったですね。ここでは、住宅内の二間続く座敷に津田道子さんの《あなたは、その後彼らに会いに向こうに行っていたでしょう。》という作品が、蔵には、岩崎貴宏さんの《町蔵》という作品が展示されていました。

『あいちトリエンナーレ2019』展示風景  キュンチョメ《声枯れるまで》2019 Photo: Takeshi Hirabayashi

そしてもうひとつ好きな作品が、キュンチョメさんの《声枯れるまで》。もともとキュンチョメさんは好きだったんです。

この作品は、自ら名前と性を書き換えた人々との対話を経て、彼らとともに「声枯れるまで」新たな名前を叫び続けるアクションを撮影した、映像インスタレーションです。

その映像の中に、親子が対話して、お互いの気持ちをぶつけ合うという映像がありました。親子は話が終わったら、一緒に習字をするんです。一緒に筆を持って、まず黒で元の名前を。朱で新しい名前を。何度も何度も朱で昔の名前の上から新しい名前を書く。ただ字を書く、というだけの行為なんですが、親子はなかなかその動作で息を合わせることができないんです。一画目を書くまでにもすごく時間がかかる。一緒に筆を握って字を書くという簡単な行為のはずなのに、そこに付随する葛藤や心の揺らぎなんかによって、こんなにも難しいことなんだと気付かされました。それがわかった時に、ものすごく心を揺さぶられたんですね。

ここで描かれるテーマはLGBT。まだまだ難しい問題です。でもこの作品は、私たちにこういう世界があるということを教えてもくれ、さらに作品に吸い込まれるような力を持っているんです。

どんな世界であれ、問題であれ、知らないからと、知ろうともせずに拒否する人もいますよね。

でも知らないから拒否するのではなく、きちんと知る、そして考えるということが大事だと思わされたイベントでした。

第4位
国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅

『国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅』(東京国立博物館、2019年3月26日〜6月2日)もとてもいい展覧会でした!

『国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅』展示風景

東寺は私が好きなお寺で、仏像を見に何度か訪れたことがあったのですが、この時は、東寺の講堂安置の21体の仏像からなる立体曼荼羅のうち、史上最多となる国宝11体、重文4体、合計15体が東京国立博物館にやってきました。現地・京都では、仏像がお堂の中でけっこう密集して配置されているので、隅々までは見ることはできません。それが東京では、一体一体を360度の角度から見られるような展示になっていて、とても有意義な時間を過ごすことができました。

特に国宝《帝釈天騎象像》は一体だけ別に展示され、写真撮影OKで大人気でした。イケメン、かっこいいと評判になりましたが、私は《帝釈天騎象像》をかっこいいって思ったことがなかったんですね(笑)。というか、私は仏像を人を形容するような美醜とかで見たことがないんです。綺麗とか、形が整ってるなって思うくらいはあったんですが、かっこいいって思ったことはありませんでした。でも今回、こうやって一体一体と対峙できたことによって、初めて帝釈天ってかっこいいんだって思いました(笑)。仏像をそんなふうに思う時が来るなんて、とそれも新しい発見でしたね。

2020年はこれが見たい!

2020年はオリンピック・イヤーということもあり、いろいろな展覧会が予定されています。特に夏のオリンピック開催期間は、外国の人を意識したような展覧会が多いイメージです。例えば東京国立博物館では、『特別展 国宝 鳥獣戯画のすべて』が開催されますが、なんと4巻の全場面を一挙公開するんだそうです。大変な人気になりそうですね…。

私がいま一番楽しみにしている展覧会は、東京国立博物館で開催される『法隆寺金堂壁画と百済観音』(2020年3月13日〜5月10日)です。特に今回は、日本古代彫刻の最高傑作の一つと言われている、国宝《百済観音》が展示されるのがとっても楽しみなんです。この仏像も簡単に見ることができないので、それを東京で見られるというのはありがたいですね。有名どころが来るってなると、嬉しくて仕方ないんです。仏像に対してはちょっとミーハーなところがあるのかもしれません(笑)。

そのほか『ロンドン・ナショナル・ギャラリー展』(国立西洋美術館、2020年3月3日~6月14日)は、作品61点すべてが初来日作品なんだそうです。ゴッホの《ひまわり》をはじめ、フェルメール、レンブラントと、スター級の作家の作品が一堂に勢揃いするのも楽しみです。

現代美術も今年は充実していると思います。例えば『古典×現代2020―時空を超える日本のアート』(国立新美術館、3月11日〜6月1日)が面白そうですね。これは、現代日本を代表する作家と、江戸時代以前の絵画や仏像、刀剣などがコラボする展覧会です。

また、森美術館では『STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ』(2020年4月23日~ 9月6日)という、これまた日本の現代美術を牽引している6人の作家を紹介する展覧会が開催されます。メンバーは草間彌生さん、李禹煥(リ・ウファン)さん、宮島達男さん、村上隆さん、奈良美智さん、杉本博司さんと、とても豪華です。

2019年もたくさんの美術展に足を運びました。特に去年は印象派に関する展覧会がとても多かったように思います。

私にとってはセザンヌやマティスなど、これまであまり興味がなかった画家が急に面白くなった年でした。2020年もどんな展覧会、そして作品に出会えるのかと、いまから楽しみですね。

構成・文:糸瀬ふみ 撮影(和田彩花):源賀津己

プロフィール

和田 彩花

1994年生まれ。群馬県出身。2004年「ハロプロエッグオーディション2004」に合格し、ハロプロエッグのメンバーに。2010年、スマイレージのメンバーとしてメジャーデビュー。同年に「第52回輝く!日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。2015年よりグループ名をアンジュルムと改め、新たにスタートし、テレビ、ライブ、舞台などで幅広く活動。ハロー!プロジェクト全体のリーダーも務めた後、2019年6月18日をもってアンジュルムおよびハロー!プロジェクトを卒業。一方で、現在大学院で美術を学ぶなどアートへの関心が高く、自身がパーソナリティを勤める「和田彩花のビジュルム」(東海ラジオ)などでアートに関する情報を発信している。

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