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稲葉友の「話はかわるけど」

セレクト×マネー×サービス【前編】

毎週連載

第135回

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物を選ぶときは、その背景にある成り立ちや物語に惹かれるという稲葉さん。身に着けているもの・好きなものを通して、より自分の中身を知ることができるみたいです。

僕がレギュラーでやっているラジオでは今まで出会わなかった商品を紹介する機会がある。大企業から個人商店まで様々。紹介するときにはその商品が出来た背景や成り立ちも知ることになるのだが、その影響もあってかそういうバックボーンがしっかりしたものが好きになっていった。

僕はあまりハイブランドというものに興味や意欲を示せない。もちろん質がいいのは知っているしそれに応じたお値段なのもわかっているし世界でこれだけ広まっているというのはすごいことだと思う。実際、衣装でハイブランドの服を着せてもらうと、物や質の良さに感動する。ただ日常生活で自分が身に着ける物としてはあまり選択肢に入ってこない。値段的な問題も大いにあるが、そのブランドのためにお金を貯めてまずこれを買って、次はこれを買ってということはしてこなかった。

ここまで言うとハイブランドが嫌いみたいに聞こえるかもしれないがアンチなワケじゃない。ただ僕は「ハイブランドじゃなくても、こだわって作られた良い物は世の中にいっぱいある」ことをラジオを通して教えてもらえたということ。

例えば最近紹介したアクセサリー。お神輿についているきらびやかな錺金具(かざりかなぐ)を作っている職人さんたちが、「KIPPU」というブランドを立ち上げて作ったもの。僕はもともと浅草の三社祭や鳥越祭りに毎年行っていた人間なので、そういう自分のバックボーンと商品のバックボーンが重なったときにとてもグッときた。そういうものは実際身に着けてみても自分の肌にあってしっくりくる不思議。

生活する中で僕がこだわるものを考えてみたけど、消耗品にはこだわらないということがまずわかった。ティッシュなんかもはや薬局で買ってなくて、箱ティッシュじゃなくてビニールにティッシュが入っているものをネットで大量に買う。鼻炎が出たときだけは、上質の柔らかい箱ティッシュを買うこともあるけど、普段はまず問題ない。トイレットペーパーもそんな感じ。消耗品はとにかく安い物でいい。

身に着けるもの、アクセサリーに関してはもともとそんなに着ける方じゃないし、仕事柄、着けていられないというのもあって、あまり買わない。そんな状況でも良い物を厳選して持つということに関しては、ワクワクする。色んな種類のアクセサリーを買って、今日はこれにしようと選ぶより、これがあれば大丈夫というものが欲しいし、その商品をショップでデザインだけを見て買うんじゃなくて、どうやって出来たか背景が分かった上で選ぶ方が自分にとってより魅力的な物になる。

見られる仕事をしているのだからいつ見てもビッとしていた方がいいんだろうけど、そこまで僕は気は張れないし張れたことがない。圧倒的に楽で格好良いファッションが好きだ。寝巻きのような格好は流石にないにしろ情報量の過不足ない服を着ている。だらしなさ過ぎても気にされるしキメ過ぎていても「どうした?」となる世の中。どの方向性に突出していてもうるさくなるから、突出しないように生きている節があるのかもしれない。

思い返せば中学校・高校の時はファッションの主張がすごかった。僕の時代はいわゆるB系と言われるオーバーサイズの超デカいシャツを着て、パンツは極端に腰履きして、自分のサイズよりデカい靴履いてみたいなことをやっていた。あれが時代の流れでもう一度流行ってももう着れないんだろうな。

今の自分のファッションはもう、それはそれはサラッとしたもんで。夏は特に白Tと黒Tで完結しがち。でもシャツはメチャメチャ派手なのを何枚か持っている。派手な生地をそのままシャツにしましたって感じのヤツ。あくまでシンプルが好きシンプルがいいと言っているのに「この柄のシャツを着るんだ⁉️」というものを持っているところは、自分が出ている気もする。どこかで奇をてらいたい、派手さを求めている自分が見える。

そこから自分がどういう人間かをまとめると「大して主張しないけど分かってほしい人間」な気がしてきた。自分で自分を押し出すことはしないけど、気付く人には気付いてほしい、みたいな。面倒くさいなあ。身に付けているものを「これいいね」と見つけてくれる人がいたら僕は背景がどうとかという説明をしてしまうのだろう。そして普段はシンプルなのに差し込みでド派手を入れてくるのは、控えめなのか寂しがり屋なのか。物のセレクトの仕方からそんな「自分とは」について考えてしまった。

次回の更新は8月11日(水)です。お楽しみに!

プロフィール

稲葉友(いなばゆう)

1993年1月12日生まれ、神奈川県出身。
2010年、ドラマ『クローン ベイビー』(TBS)で俳優デビュー後、ドラマ、映画、舞台と幅広く活動。
主な出演作に、ドラマ『仮面ライダードライブ』(‘14~’15 EX)、『MARS~ただ、君を愛してる~』(’16 NTV)、『ひぐらしのなく頃に』(’16 BSスカパー!)、『レンタル救世主』(’16 NTV)、『将棋めし』(’17 CX)、映画『ワンダフルワールドエンド』(’15)、『HiGH&LOW』シリーズ、『N.Y.マックスマン』(’18)、『私の人生なのに』(’18)、舞台『すべての四月のために』(’17)、映画『春待つ僕ら』(’19)『この道』(’19)など。
J-WAVE『ALL GOOD FRIDAY』(毎週金曜11:30~16:00生放送)ではレギュラーパーソナリティ―を務める。

撮影/奥田耕平、取材/藤坂美樹、構成/中尾巴、ヘアメイク/速水昭仁、スタイリング/添田和宏、衣装協力/Tシャツ¥7,480/90'sハーレーダビッドソン(アルケオロジー TEL:03-6673-5342)
シューズ¥13,200(9月発売予定)/コンバース(コンバースインフォメーションセンター TEL:0120-819-217)
ブレスレット(右手)¥11,550、(左手)¥16,500/ジャムホームメイド(ジャムホームメイド 東京店 TEL:03-3478-7113)
その内他スタイリスト私物

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