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Mrs. GREEN APPLE、活動休止中も衰えないバンドの存在感 「インフェルノ」MV1億回再生突破などから考察

リアルサウンド

21/1/16(土) 12:00

 Mrs. GREEN APPLE「インフェルノ」のMVが再生数1億回を突破した。Mrs. GREEN APPLEのMVが再生数1億回を突破したのはこれが初。MV公開からおよそ1年5カ月での記録樹立となる。

Mrs. GREEN APPLE – インフェルノ(Inferno)

 2019年7月18日に配信リリースされた「インフェルノ」は、同年10月2日リリースの4thアルバム『Attitude』、2020年7月8日リリースのベストアルバム『5』にも収録。アニメ『炎炎ノ消防隊』第1期第1クール(2019年7月~10月放送)のオープニングテーマとして広く認知された。MVに外国語によるコメントが多く寄せられていたり、海外ユーザーによる日本語での「歌ってみた」動画がアップされていたりするのは、アニメを通じて国外にも知られていったためだと推測できる。

 Mrs. GREEN APPLEは様々なジャンルの曲を鳴らし、ストリングスや打ち込みも躊躇なく取り入れるタイプのバンドだが、「インフェルノ」は、メンバー5人で鳴らすバンドサウンドに重きを置いたロックテイストの強い曲。2019年12月~2020年2月に行われた自身初のアリーナツアーでは1曲目に演奏され、デビューから成長したバンドの地力を打ち出した。サビ冒頭は、C#m(Ⅵm)による暗い響きから始まりつつ、Ⅱ7→Ⅴ→Ⅰという推進力の高い進行+セカンダリードミナントを使用。“ダークでありながらも疾走感がある”という雰囲気が演出されている。1曲を通じて3オクターブに及ぶ音域を豊かに歌い上げるボーカルも無二のものだ。

 MVは、バンドの演奏シーンをフィーチャーしたシンプルな映像だ。Billboard JAPAN提供のCHART Insightを参照すると、“動画再生数”指標の折れ線グラフだけが特殊な起伏の描き方をしているわけではなく、(ずっと高水準で推移している“ストリーミング数”以外の)他の指標とほぼ同じ動きをしていることが分かる。よって、曲それ自体の盛り上がりとともにMVの再生数も順当に増えた、と考えるのが妥当なところだろう。

 もっとも、「インフェルノ」の特殊な点は、アニメでのオンエア期間を過ぎてからも人気を落としていないところだ。2019年末にはSpotifyのTVCMソングに起用され、2020年7月には先述のベストアルバムがリリースされ、2020年9月6日放送の『アニソン総選挙 2020』(テレビ朝日系)でピックアップされ、2020年12月11日放送の『炎炎ノ消防隊 弐ノ章』(第2クール)最終話ではエンディングに流れて話題になり……と、考えられる要因は様々ある。また、〈学びきれずに卒業/伝えきれずに失恋/遊びきれずに決別/面倒臭いが/地獄じゃあるまいし〉というフレーズは、思いがけない断絶に見舞われたコロナ禍の生活に奇しくもリンクするものであり、歌詞に込められたメッセージを今改めて噛み締めている人もいるかもしれない。

 ところで、Mrs. GREEN APPLEは2020年7月8日に“フェーズ1”の完結と活動休止を発表し、現在も休止中だ。それにも関わらず、「インフェルノ」MVが1億回再生を突破したり、つい先日「僕のこと」がストリーミングで累計1億再生を突破したことが発表されたりと、彼らの曲が変わらず多くのリスナーに求められている現状がある。ストリーミング累計再生数で言うと、ここまで話題に上げてきた「インフェルノ」のほか、「青と夏」、「点描の唄 feat.井上苑子」と、計4曲が1億回を突破。これは、Official髭男dism(7曲)、あいみょん(6曲)に続く記録とのこと(参照:Billboard JAPAN)。

 もちろん、曲がよく聴かれる最大の理由はそのクオリティだ。Billboard JAPANによる2020年年間チャートでは、アーティストチャート10位にMrs. GREEN APPLEが、作詞家チャート7位&作曲家チャート6位に大森元貴がランクイン。Mrs. GREEN APPLEというバンド、および大森元貴という作家が生み出す曲に信頼を置き、彼らの生み出す作品を楽しみにしているリスナーが一定数いることがうかがえる(参照:Billboard JAPAN 123)。

 一方、活動休止後のバンドの動きに注目すると、ファンとの接点を絶やさないための工夫が見て取れる。MVの再生数が大台に乗ると、Instagramのストーリー機能を通してファンにそれを報告。その投稿一つひとつのデザインが非常に凝っているほか、ストーリーは24時間で消えてしまう=希少性が高いため、熱心にチェックしているファンも少なくないのではないだろうか。

 ストリーミングの再生数に応じてリリックビデオが公開されるのもファンにとっては嬉しく、“曲を聴く”という行動を心地よく促すような取り組みだ。また、インストアルバムの配信リリース、ピアノ譜の発売、人気曲5曲の公式コード譜公開など、“曲を聴く”に留まらず、演奏してみようとするリスナーを後押しする動きも目立つ。以前、「青と夏」についてインタビューした際、映画主題歌にも関わらず〈映画じゃない〉と繰り返し歌っている背景について聞いたところ、メンバーは「映画の話を他人事だと思わないでほしい」「“自分事”として持ち帰ってほしい」と答えてくれた(参照:SPICE)。映画と観客を切れない糸で結ぼうとしたあのときと同じような想いで、今はバンド自身とそのファンを繋ごうとしているのではないだろうか。

 そんななか、水面下では新たな展開も。大森がTOMORROW X TOGETHERに新曲「Force」を提供したほか、『SCHOOL OF LOCK!』(TOKYO FM)内のレギュラーコーナー「ミセスLOCKS!」(大森単独出演形式で継続)では、未発表の新曲「メメント・モリ」を(ソロ名義と前置きしたうえで)初披露した。過去には「PRESENT(English ver.)」という曲がバンド名を伏せた状態でSNSで公開されたこともあり、いつ・どこで彼らの新たな作品に出会えるかわからないワクワク感もファンの熱を高めている要因の一つでもあるのかもしれない。

 いずれにせよ、活動再開を高い熱量で待ち望んでいるリスナーが多数いることは事実だ。5人に再会できるその日が待たれる。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

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